ネマタの「裏」戦術本レビュー第5回『夜桜たまがマンガで教える麻雀入門』編その5

5日目 和了率は初心者も上級者も案外差がつかないものですが、放銃率は如実に差がつきます。楽しめればよいといっても、勝てなければなかなか楽しむのは難しいことですから、入門書の段階で守備について詳しく取り上げられているのはかなり好評価です。

 ただ、入門書であることを踏まえると、そもそもスジ、壁以前に「現物を切れば振り込むことはない」ということにも、頁を割いて説明した方がよかったかもしれません。スジや壁の知識が無い打ち手は、そもそも降りるという概念を知りませんし、降りるという概念がある初心の打ち手は、今度はなまじスジや壁の知識があるが故に現物を切らずに振り込んでしまうというミスを結構やりがちです。

 「現物は通る」ということも「振聴」の概念を知っておく必要がありますが、振聴については1日目の麻雀用語で紹介されたきりなので、個人的にはスジ、壁に比べれば実用性が薄い「裏スジ、跨ぎスジ、間四軒」を単に「無スジ」に統一して、その分を「スジや壁の中でも通りやすいものは何か」についてもう少し詳しい説明があってもよかったように思います。

 麻雀入門書を銘打っている以上、現状広く使われている麻雀用語に沿って説明されるのはやむを得ないことかもしれませんが、正しい打ち方だけでなく、楽しい打ち方のためにも、従来使われて来たような麻雀用語を見直す必要性があると個人的には感じております。

追記:

 十四代目天鳳位お知らせ氏のブロマガより。「筋とワンチャンスは忘れろ」と強めの言葉が使われてありますが、結局のところ筋というのは安全というよりは、「リャンメンには当たらない牌」であり、ワンチャンスは「最後の1枚を持たれていなければリャンメンには当たらない牌」に過ぎません。

 お知らせ氏著作の『鬼打ち天鳳位の麻雀メカニズム』では、筋や壁という概念にとらわれていると間違いやすい問題がベタオリの基本として出題されています。私も初見では完答できませんでした。基本と銘打ってありますが、間違いなく難問の部類です。

 しかし難問といっても、「知識が無いと解けない」タイプの問題ではなく、むしろ「下手に知識があると間違いやすい」タイプの問題。麻雀のルールさえ知っていれば、解説自体は初心者が読んでも理解できる類のものです。私自身初心の頃に、宣言牌のスジかつドラという、牌が当たりになるメカニズムを意識さえしていればわざわざ切らない牌を「スジだから」という理由で切ってしばしば振り込んでいた経験があるので、もっと早い段階で本書のような解説が書かれている文献に出会えていればと思わされました。

 「難しいけど初心者に理解し難いような複雑さが無い」という点で、ベタオリの手順も多メンチャンの待ち探しに共通しています。「お知らせ本」はこの手のベタオリ問題を多数収録する予定だったが、容量の都合でカットされたと聞きます。実力関係なく、練習次第で精度を上げられるのがベタ降り手順。しかも多メンチャンの待ち探しよりずっと使用頻度が高いのですから、ベタ降りの手順だけを扱う問題集があってもいいのではと思いました。もしくは多メンチャンの待ち探しのように、実戦譜から先制テンパイを取られた局面をランダムに取り上げて、ベタ降りの精度を競うアプリがあっても面白いですね。

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