雀魂キャラと学ぶ馬将(令和麻雀)入門その6

杏樹「前回は手番の進め方と鳴き方を解説しました。今回は和り方の解説です。正確には和了と言いますが、『了』は教育漢字外。『和』だけでも意味は通じるので馬将では『和(アガリ)』表記で統一します。国際麻将では『和(フー)』と言いますね。」

陽菜「ロンでもツモでもフーなんだね」

杏樹「完全手番制の馬将では発声不要なので、ロンでもツモでも手札を全て公開することで和宣言とみなします。ちなみに漢字で書くとロンは『栄(攏)』、ツモは『模(摸)』となります。『攏』は揃える。『摸』は持って来るの意味です。漢字の意味が通りにくいという難点はありますが、他に代わる漢字を探すのも難しいので、馬将では教育漢字の『栄』『模』表記といたします。」

陽菜「ロンに『栄』という漢字が使われるようになった理由はこの前軽庫お姉ちゃんが教えてくれたよ!」

杏樹「ツモに『模』という漢字が使われるのは『摸』が常用漢字外である為でしょう。持って来るの意味ですから手偏の摸が正確ですが、摸索を模索とも書くように、『摸』の代わりに『模』が当てられる例は他にも見受けられます。本題に戻ります。五十嵐さん。日本麻雀で和る時の注意点と言えば何がありますでしょうか?」

陽菜「アガリの形が出来ていても役が無いとアガれなかったね。後はフリテンだとロン出来ないよ!」

杏樹「そうですね。①和了形が完成している②役がある(一飜縛り)③振聴はツモ和了のみ これが日本麻雀における和了の条件でした。」

陽菜「馬将は七対子や国士はないから全部『1アタマ4メンツ』だね。」

杏樹「そうですね。馬将には字牌が無いので国士無双は不可能ですが、そもそも字牌を採用しないことにした理由は配牌の格差を緩和させるためでした。麻雀で最高の配牌13枚と言えば、19m19p19s東南西北白発中の国士十三門待ちです。」

陽菜「陽菜も一生に一度でいいから天和国士とかアガってみたいな」

杏樹「では似たような配牌ですがこれならどうでしょうか? 47m25p36s東南西北白発中」

陽菜「わわ!最悪だ! でも雛桃ちゃんならここから国士十三門待ちとかアガったりするかも?」

杏樹「KR-976は人によってツモが変わるのようなオカルトは認めませんが、ルールによって配牌の価値は変わります。この手は国際麻将でしたら、七星不靠聴牌(1m8p9s待ち)。第一ツモ限定になりますが、十三不搭を採用するなら十三不搭の十三門張(47m25p36s東南西北白発中)、十三無靠まで採用するなら1m8p9sを含めて十六門張になりますね。」

陽菜「国士みたいなバラバラでもアガれる役が他にもあるんだね。」

杏樹「九種九牌もそうですが、配牌の格差を解消するためのルールと言えます。しかし根本的な解決になっているとは言い難いですね。例外規定が増えてしまうのも難点です。」

陽菜「佳奈お姉ちゃんやかぐや姫さんが陽菜の知らない役でいきなりアガった時はびっくりしちゃったな〜」

杏樹「七対子は麻雀初めての人にもわかりやすい役ですが、七対子には門子手のような部分役が複合しません。馬将の得点体系に合わせるのが困難でしたので採用を見送りました。日本麻雀で七対子になりそうな手は馬将では対々の和形を目指すことになります。対々形なら高い手も狙いやすいので、ある程度格差を是正出来ているとは思います。」

陽菜「カンできたら更に高い手が狙えるよ!」

杏樹「麻雀の最高難度役の一つ、四槓子は馬将では四門同刻の69点以上が確定します。色が合えば79〜99点になりますね。①和形の話はこれくらいにして次は②点数縛り。日本麻雀では1飜縛り、国際麻将では8点縛りがありますが、馬将にはこの縛りはありません。役無しでも0点として和が成立します。」

陽菜「役無しでもアガれると言ったら雀魂の赤血の戦だね!カンしただけで得点貰えるから陽菜が大好きなルールだよ!」

杏樹「赤血の戦は四川ルールがベースになっています。四川ルールも字牌を用いませんが、和形は絶一門(三色のうち二色しか使えない)縛り。役無しは1点で1飜につき得点2倍でドラはありません。また四人中三人が和るまで対局が続きます。ですので日本麻雀ほど安手の早い和了が強くありません。点数縛りは麻雀を初めて覚える人の障壁になりやすいですが、ただ縛りを外すだけでは和了を目指すだけのゲームになって面白くありません。誰がどのような経緯でこのルールを作成したのかはKR-976のデータベースにありませんが、縛りを外すなら別のところで縛りを作る必要があるとのヒントがありました。」

陽菜「縛りがあって分かりにくくて面白くないルールから、縛りがあっても分かりやすくて、縛りがあるからこそ面白いルールに作り替えていくんだね!」

杏樹「しかし『面白い』にも様々な価値観があります。確かに四川血戦はなかなか楽しいうえにルールも覚えやすく、世界で最もプレイ人口の多い麻雀ルールであるのも頷けます。ですが、四川ルールで日本麻雀のような段位戦が流行するということはないでしょう。」

陽菜「確かに雀魂でも限定イベントでしか取り上げられないね。一体どうしてなの〜?」

杏樹「簡単に言えば、対局の結果が運によって変動し過ぎるとでも言うのでしょうか。赤血の戦になりますが、和了の最低点は1000点、最高点は99000点。これだけなら日本麻雀も馬将もあまり変わらないように見えますが、赤血の戦の場合は最高点の出現頻度が他のルールより遥かに高く、しかも出すまでの過程で技術介入要素があまりありません。」

陽菜「陽菜もこの前最高点でアガれたけど、ポンできる牌をポンしてカンできる牌をカンして最後にアガリ牌をツモっただけだったな〜」

杏樹「日本麻雀は満貫で倍々計算が打ち切られるので、トップを取れてもそこまで大きな点数にはなりません。しかも和了点よりずっと大きい順位点がつくのが普通なので、特大のトップを一回取るよりは小さくても二回トップを取った方が多くの場合有利になります。」

陽菜「陽菜この前四暗刻アガってトップ取れたんだけど、その次は2回ともラスだったからトータルでマイナスになっちゃった。」

杏樹「地道な積み重ねが戦績に反映されやすいルールだからこそ、段位戦のような競技的な環境が成立するのですね。『現金を賭けなくてもゲームとしての面白さが損なわれにくい』ルールと言ってもいいかもしれません。KR-976は賭博としての麻雀を否定しません。むしろ麻雀のゲーム性と歴史的背景を考えれば、賭博としての麻雀をただ否定するだけでは麻雀界の発展は望めないでしょう。ですがそれとは別に、現金を賭けなくても面白いと言えるルール整備が必要とも考えます。麻雀界の100年後の未来を見据えて、KR−976は新しい麻雀ゲームの制作に全力で取り組みます。」

陽菜「陽菜は麻雀の世界統一チャンピオンを目指すよ!」

杏樹「最後に③振聴。日本麻雀に振聴がある理由についてはこちらをご覧下さい。麻雀という運要素の高いゲームを競技化するためにはまだまだ課題が多いですが、それでも日本麻雀が世界中で最も競技的であるとみなされているのは、『放銃一家包』と、それに伴う『振聴』が採用されていることにあるのではないでしょうか。」

陽菜「赤血の戦も振り込み一人払いだけどフリテンが無くてツモは三倍。ツモアガリが強いからロンアガリを制限する必要がないけど、さっきの理由で競技にはあまり向いてないんだね」

杏樹「そのため馬将も放銃一家包。ロンは役毎に決められた点数の三倍を一人から、ツモは点数の一倍を対局者全員から貰えるものとしてツモとロンの格差を無くし、日本麻雀同様振聴も採用することにしました。」

陽菜「でもフリテンって初めて遊ぶ人には分かりにくい制限だよね。」

杏樹「そうです。ですから振聴を採用しないルールにすることも考慮しました。『振』『聴』ともに教育漢字外で、振聴の言い換えを考えるのが難しいというのもあります。馬将規範では自摸のみ和可能な形で待っていることから『模待』と名付けましたがあまりしっくりとはしませんね。」

陽菜「雀魂ならアガれないだけで済むけど、牌を積む麻雀でフリテンでアガったらチョンボを取られちゃうよ!」

杏樹「馬将は沖和(チョンボ)に相当する罰点を極力取らない方針でルールを開発しました。そこで振聴に限らず、鳴、和が成立していないにも関わらず意図的に手札を公開した場合は栄和の権利を失うものとしました。」

陽菜「フリテンでロンアガリしてもチョンボにならずゲーム続行でツモアガリは出来るんだね」

杏樹「はい。取った札を手に加えて他の札を捨てることも可能です。もちろん手変わりして振聴の形が解消されたとしても栄和の権利は失ったままですが。」

陽菜「役満テンパイしているのにフリテンチョンボで流されたりしたら嫌だもんね。」

杏樹「こうして振聴を残しつつ、振聴にまつわるトラブルが緩和されるようにルール作りを進めていたわけですが、前回取り上げたこちらの整合麻雀では振聴が無いのですね。振聴無しと完全手番制をどのように両立しているのか気になりましたが、同巡に捨てられた牌を全員からロンできるのですね。麻雀で『ダブロン』『トリロン』と言えばロンされることですが、こちらは一人で複数の相手に『ダブロン』『トリロン』が出来ます。正確には、全員から見逃すのでなければ全員からロンしなければならないですね。何らかの理由で一人からは和って一人からは和らない方が都合がよいとしてもそういうのは認められていないものと思われます。」

陽菜「これ面白そう!陽菜も一度くらいトリプルロン決めてみたいな!」

杏樹「単にツモアガリを三倍にしてしまうと競技性が薄れてしまいますが、このルールのロンアガリ三倍はそう簡単には起こらないので悪くないですね。何より初めて遊ぶ人にとって複雑なルールを解消しつつ、他のルールでは起こりえない『ドラマ』を生み出す要素になっているという点で好評価です。これを踏まえてもう一つルールを考えてみました。それは、フリテン無し、同巡内に和札が複数出た場合は最初に出た札のみを和の対象とするというものです、このルールならフリテン無しでも『現物の合わせ打ち』は100%通ります。フリテンを廃止しつつ、「ダブル」「トリプル」採用時のように得点が大きく跳ね上がることが無いので競技制を保つ折衷案として悪くないと思います。そうですね。次回の改訂版ではこのルールを採用することにしましょう。」

陽菜「これで馬将のアガリ方について分かったけど、誰もアガれなかった時はどうするのかな?」

杏樹「馬将は日本麻雀の王牌に相当するものがありません。取札が無くなった時点で局が終わります。日本麻雀のような聴牌料もありません。」

陽菜「整合麻雀では最後のツモ以降にアガリ牌が出た場合は流局後にロン出来るって書いてあるね。」

杏樹「整合麻雀は聴牌料を採用しているので、聴牌料のために手番が無いところから危険牌を打つことも少なくありませんが、馬将にはこれがありません。単に安全なものを捨てればよいだけの話ではありますが、馬将では全員とも最後の取札では『取』『刻』『順』『栄』のうち取か栄のみ。取札の時点で和が成立しなければ捨札せずに手番終了ということにしましょう。」

陽菜「最後はツモるかアガリを宣言するだけなんだね。」

杏樹「麻雀が日本に伝来する前に中国で遊ばれていたルールでは、海底牌を自摸った人はその牌で和ってなければ打牌せずに流局していたそうです。聴牌料がないので、和っていない時点で加点の可能性が無くなり、打牌すればその牌で和られて失点する可能性だけ残ります。もしその牌で誰かが和ればどうでしょう。全く得することがないのに何故和了牌を切ったのか、その打ち手が力量に劣るのか、あるいは和った人とコンビを組んでいるのか。いずれにせよ快いものではありません。『海底牌自摸で和ってなければ打牌せずに流局』というルールはその為に作られたものと思われます。ただし一番最後だけ適用すると不平等になるので、全員の最後の取牌にこのルールを適用することとしました。最後の取札の代わりに鳴く場合も和了できないことが確定するので、最後の取札フェーズでは「順」「刻」も出来ないものとします。」

陽菜「陽菜は流局後にアガれることにしてもいいと思うな」

杏樹「このルールを採用したのはもう1つ理由があります。馬将札は144枚、4人で遊ぶので1人36枚、配札が13枚で残り23枚。取札と捨札をセットで1手とするなら、最後は捨札をしないので1人あたり22.5手ということになります。4人で遊ぶので合計90手、そして1戦4局なので全部で360手です。春夏秋冬合わせて360。旧暦の1年になります。」

陽菜「だから東1局が1年春なんだね!」

杏樹「春夏秋冬、そして一番最後に着順を決めて点数を精算しますから、これらを1手と数えれば365手。新暦の1年になるとも言えます。勿論これはこじつけですが、馬将は宇宙を象徴するゲーム。1戦辺りの最大手数が『360』になれば、ゲームデザインとしても美しいのではないでしょうか。KR-976は人類により近づくために、特定の事象に美しさを見出す審美眼も持ち合わせております。」

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