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ネマタの「裏」麻雀本レビュー第23回『令和版神速の麻雀』その1

第1章 手順のシステム

「麻雀ウォッチ」でレビュー掲載を予定していましたが、連載終了ということでこちらで書くことにしました。

麻雀のスタイル

 本書は2015年に発売された、『神速の麻雀 堀内システム51』のリメイク版、それから5年が立ち、その間に様々な戦術書が出版されました。

 その中で優良とされる戦術書には、本書で推奨されているような、「先制攻撃とベタオリの2極化」「システムで打つ麻雀」について、どちらかと言えば否定的な見解を示すものも少なくありませんでした。

 しかし本書の内容が既に時代遅れになっているかと言えば、決してそんなことはありません。麻雀というゲームを俯瞰的に見れば、先制攻撃とベタオリの精度を高めることこそが、麻雀で強くなるうえで極めて重要であることは間違いないでしょう。

 注意すべきなのは、必要なのは「精度を高める」ことであって、「頻度を高める」ことではないということです。毎回ひたすら先制攻撃を目指し、それが無理ならベタオリすればよいと言っているのでありません。そうした方がよい時が多いからこそ、先制攻撃、ベタオリに関する技術をシステム化させるまで体に身につけ、実戦で徹底できるようになれと言われているのです。筆者のような麻雀スタイルに否定的、いえ、肯定的な人ですら、そのことを誤解している人が少なくないように思います。

 「自分の手牌を中心に打つ」。ここでも重要なのは、「手牌を見る頻度を増やす」ではなく、「手牌評価の精度を高める」こと。相手の手牌を読もうとして読みの精度を高めようとしても、麻雀が不完全情報である以上たかが知れています。

 筆者のつぶやきに、自分がリーチすることしか考えてなくて、「早くここ入んないかなー」とかそんなんばかり考えているとあります。私も似たようなものですが、自分の手牌ばかり見て場や対戦相手を見ていないというのは、決して褒められたものではありません。

 それでも筆者が極めて優秀な成績を残せた理由は、世の中の麻雀打ちの大半が、「場や対戦相手を見ることもそこそこには出来ているが、最も重要な自分の手牌もそこそこにしか見ておらず、手牌評価の精度が低い。」ということに他なりません。

 前書きで福地氏が、昨今は「高打点打法」がトレンドになりつつあり、どちらの打ち方が強いのかは永遠のテーマかもしれないという話をされていますが、別にどちらかの打ち方に決める必要はありません。手牌と局面に応じて強い方を選べばよいだけです。

 しかし、「良いとこ取り」が出来るようになるためには、まずは本書で取り上げられているような内容を頭に押さえておく必要がありましょう。何故なら、高打点を追ううえで必要な手役やドラに対する知識は、麻雀のルールを覚える段階で誰もが身につけることですが、「どんな手牌がどの程度アガリやすいか」については、本書でも登場するようなデータを知らずしては身につけることは難しいためです。

 昨今は「高打点打法」がトレンドになりつつあるというのも、それまではぼんやりとした概念の中でしかされていなかった手組の話がデータの登場により、「どんな手牌がどの程度アガリやすいか」が徐々に明確になっていったからではないかと考えます。少なくとも私においては、アガリ率の目安が分かったからこそ、多少アガリ率を落としてでも打点を追った方がよいケースも少なくないということに気付けました。

 本書は決して、夢や希望を否定するものでもなければ、ましてや自分をAI化するものでもありません。前書きにあるようなAI観が誤ったものであることは、『Suphxの衝撃』をご覧になればお分かりいただけると思います。

 むしろ本書は、今後麻雀AIが進化し、AIから学ぶことで人類もより高みに登り詰めることが出来るようになる時代に向けて基礎能力を身につけるための本として重宝するものになると考えます。『Suphxの衝撃』だけでも、本書で登場するようなセオリーに反する、まさに「衝撃」な打牌が多々見受けられますが、単に衝撃で終わらず、何故AIがその打牌を選んだのかについてある程度でも想像を巡らすことができるのは、本書で幾度となく登場する、データに基づく麻雀研究があるからに他なりません。麻雀研究および麻雀AIの進化については、巻末レポ『麻雀研究の変遷と未来』をご覧下さい。

 次回からは本書で取り上げられている牌姿について個別に検証していくことにいたします。

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