ネマタの「裏」麻雀本レビュー第40回『麻雀強者の流儀』編その3

押しの流儀3

 22ページの手牌から1sではなく12pを切るのが良いことは、「ブロック」の概念で説明がつきます。

 ブロックと聞くと5ブロックと6ブロックの比較ばかりが取り上げられがちですが、個人的にはこの考え方はもっと拡張的に扱われて欲しいと思っています。23ページの手牌はメンツが1つもなく、ターツも悪形ばかりで役を作るのも難しい。このような場合は役牌を重ねるメリットが特に大きいので、1枚ずつでも東白発中をブロックとしてカウントします。そうすればここでもペンチャンを落とす選択肢に自ずと浮かび上がります。ブロックの概念が限定的に使われるあまり、あえて5ブロックにせずに6ブロック、あるいは4ブロックにする選択が有力なケースが見過ごされがちになっているのではないでしょうか。

 本書はこれより少し後に、「安全牌を持つのはカモ」という言葉が出て来ますが、ここでは、「麻雀強者は準安全牌をうかつに切らない」とあります。これは筆者が雀鬼会所属であった影響もありそうです。雀鬼会では全くアガリに向かわない「ベタオリ」は御法度。毎局アガリに向かわなければならないという縛りを課して打つのであれば、「アガリを目指すうえでも使える準安全牌」を抱えなければ、不用な放銃抽選を何度も受ける羽目になってしまいます。

 逆に、「アガリを目指すうえで使えない安全牌」を持つのはカモというのも説明がつきます。安全牌を切ったところで次巡以降ベタオリできないのですから、安全牌を残したところで放銃率が下がらず、ただ和了率を下げるだけの結果になりかねません。

 余談になりますが、上記サイトで、「リャンメンの二度受けを解消する」ためだけの浮き牌ですら、12巡目で共通安牌とどちらを優先するか微妙であると、『科学する麻雀』(講談社版)の内容を引用しましたが、昨今では受け入れを狭めて安牌を残すケースも有効な場合が少なくないという研究結果が出たので、この手の浮き牌はなおのこと先切りすべきというのが共通見解になっています。

 結論が変わった理由の一つが、「他家リーチが入った後、テンパイする前に危険牌を引けばベタオリ」する前提でシミュレートされたため。それまでは安牌を残していても次巡以降アガリを目指すことが前提だったので、安牌を残す恩恵をあまり受けられなかったのです。詳細は、『現代麻雀最新セオリー』を御参照下さい。

 「安牌を残したところで次巡以降降りない」は極端だとしても、『科学する麻雀』以前。データに基づく麻雀研究がなされる前の麻雀本は、安牌を持つことの重要性は説かれていても、正しいベタオリの手順が記載されたものはありませんでした。「何となく安全牌を抱えて何となく降りもするけどそもそもベタオリが下手」な打ち手と、「一切ベタオリはしないが準安全牌を残しつつ毎局アガリを目指す」打ち手。後者の方が実力者であったことは想像に難くありません。

 ではこれから麻雀を学ぶ人も、後者のような打ち手を目指すべきかと言われれば、もちろんそんなことはありません。ギリギリまで前に出る技術も、徹底してベタオリする技術も両方学べばよいだけの話。筆者は前書きで、「現在流行りの期待値に特化した頭でっかちな麻雀打ちには負ける気がしない」と答えていますが、いささか認識に食い違いがあるように思います。確かに昨今の麻雀戦術を学んだ結果、「頭でっかちな麻雀打ち」になっている人の例は見受けますが、彼らは間違っても、「期待値に特化」してなどいないのです。私は期待値に特化した麻雀が打てるならまさにそうなりたいと思っていますが、そのためにはとても「頭でっかちでは居られない」ことに嫌でも気付かされます。

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 確かに3トイツをほぐす形になっていますが、本題とは言えません。この項目にタイトルをつけるなら、「無謀に突っ張るべからず。されど安易にベタオリすべからず。」となるでしょうか。ここで8sを切るのが「無謀な突っ張り」、現物の3pを抜くのが「安易なベタオリ」です。

 前項目の「準安全牌」残しにも通じますね。今回は3枚見えの南トイツなのでほぼ安全牌ですが、準安全牌を意識的に残していると、ベタオリせずに回し打ちから押し返せる手順が残せるケースを増やすことができます。


 

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