ネマタの「裏」戦術本レビュー第20回『夜桜たま×朝倉康心に学ぶ現代麻雀』その8

第四章 守備

 ①盾

 リーチや鳴きといった「手段」を武器に喩えるなら、盾に喩えるのもベタオリや安牌残しといった手段がふさわしいでしょう。「直感」は自分自身のステータスであり、「情報」は戦況に他なりません。

 攻撃は最大の防御が正しいとしても、守備は最大の攻撃が成り立つとは限りません。逆は必ずしも真ではないのですね。必ずその捨て牌になった理由は手牌にあるは正しいとしても、その手牌になった理由は捨て牌にあるとは限りません。ツモ切りダブルリーチの捨て牌から、手牌を読み取ろうというのは無理があります。

 上記サイトでレビューした本は、実戦的な読みを扱った戦術書として決して悪くはないのですが、命題が正しいのでその逆や裏も成り立つように書かれている誤りを随所に見受けます。確かに日常会話の中では、このあたりの言い回しはあまり厳密には区別しませんし、厳密にしようとすると、多くの読者にとってとっつきにくい内容になることも考えられます。このあたりの問題をどう解決していくかは、今後の自分にとっての課題でもあります…と書いて3年以上が経ちますが、結局のところ、「読み」について語る場合はぼんやりした表現を避け、麻雀牌を用いて可能な限り具体的に示すよりない気がしますね。

 例に漏れず、「早い5切りに1469」のように、書かれてあること自体は正しいことが多い本書ですが、119ページの牌図は仮に序盤に5mが切られてなかろうが1mは切りません。東東3sと切ってほぼ手じまいする一手です。「最大限に攻め、最大限に降りる」が基本の麻雀において、必要なのは危険牌読みではなく安全牌読み。ひとまずは、「降りるなら現物から切ってきっちり降りる」を徹底できるようになりましょう。それができるようになりさえすれば、天鳳上級卓を抜けることは難しくありません。逆に言えば、それが身に付かないうちに読みについて学ぼうとすると、押し引きの基準が身に付かなくなる恐れがあります。

 降りる技術(第4回が上卓編、第15回が特上編)についてはこちらを御参照下さい。麻雀をアイドルのプロデュースに喩えてきましたが、唯一大きく違うのは、アイドルグループがデビュー(和了)した時に、売上金を払うのが何故かお客ではなく、デビューを阻止できなかった同業者であるということ。だから時にはデビューを諦めてグループを解散しなければならない場合もあります。

 その時に一番注意せねばならないのは、箱(手牌)のメンバーが独立してライバルプロダクションでアイドルデビュー…なんて真似にならないようにすること。野に放ったらトラブルを起こしそうな問題人物は、箱の中で匿っておかないといけません。問題人物の中で誰が特に危ないかなんて考えるより、相手が不要そうな安牌の人物を選ぶことに集中しましょう。

②副露への守備

 副露への守備に関する技術(第6回は上卓編、第19回は特上編)はこちらを御参照下さい。

 私は本書が発売された時点では、「筆者が天鳳で七〜八段になったことがある」という噂を聞いていたので、「初心者向けとして肝心なことが抜け落ちているのは、筆者にとっては当たり前のことだから。」だと思い込んでいました。

 実態が知れ渡ってからは、本書はただの駄作から、何年麻雀を打ち続けても強くなれない人の悪い見本となってしまいました。私が今年に入ってからnoteで、「麻雀を覚え立ての人が本当に強くなれる戦術記事を書きたい」と思い立ったのは、何を隠そう本書の影響なので、その意味では本書に感謝しないといけないかもしれませんね笑

③差し込み

 この赤5p切り。本当に安手アピールなんですかね。678の三色狙いでなければ、うっかり仕掛け方を間違って赤5pを切ってしまったように思えてなりません。オンライン麻雀だと結構やりがちですからね。

 「相手が嫌がることをする」勝負事ではもっともな言葉に聞こえます。これとは逆に、「そんなことをしても相手を喜ばせるだけだからやらない」という言葉も聞きますが、麻雀のような多人数ゲームでは必ずしも成り立ちません。誰かが嫌がることが、別の誰かの得になり、自分はただただ損するだけということもあれば、誰かが喜ぶことが自分にとっても得になり、損するのは別の誰かということもあります。相手の嫌がることをすることが目的になってはなりません…という話はわざわざ私がするまでもなく、朝倉氏のワンポイントアドバイスに書いてありますね(笑)

 

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