現代麻雀技術論註第17回「ブロックという考え方」

 私は5歳の時に麻雀を知り、小3の時に入門書を購入したのですが、その次に麻雀の本を購入したのは大学に入ってからでした。とはいえ中高時代も麻雀から離れていたわけではなく、書店に立ち寄った時は麻雀本を立ち読みすることがよくありました。本を買わなかったのは、「将棋世界」「ゲームぎゃざ」あたりを毎月購読していると他に本を買うお金がほとんど残らなかったため。当時大半の書店に置かれていた麻雀本と言えば、井出洋介氏の「東大式」シリーズ。池田書店より1984年から刊行され、累計で100万部を超えるロングセラー本です。

 当時の私と言えば、学校の教科書の内容も授業を聞いて何となく分かった気になるレベル。試験で何とか点数を取れたのも、試験範囲の用語を暗記できるまで勉強していたというだけで、内容を理解していたかと言えば正直怪しいものがありました。そのような有様でしたから、本屋で立ち読みしただけでは、何が書いてあるのかさっぱり分かりませんでした。

 辛うじて覚えていることと言えば、「マンズで1メンツ、ピンズで2メンツ作るので…」のような表現が多用されていたということ。最近の「東大式」シリーズと照らし合わせると、この言い回しが、「5ブロック打法」の走りであったことに気付かされました。

 2枚ないし3枚の組み合わせを「ブロック」と呼ぶのがいつ頃始まったのかは存じませんが、「麻雀本 5ブロック」でヒットした記事で比較的古いものが2009年3月に掲載されたこちら。私が「現代麻雀技術論」を更新していた時期とかぶりますが、当時この記事を読んで、「5ブロック」という表現に真新しさを覚えたということはありません。むしろ、「よくある言い回し」と認識していた記憶があるので、実際はもっと前から「ブロック」と使われていたことは間違いないでしょう。

 ただし、当時は今ほど「ブロック」という表現は主流ではありませんでした。記事内にも「いわゆるメンツオーバー」と書かれてあるように、「6ブロック」のことは主にメンツオーバーと呼ばれていました。

 メンツオーバーは、メンツ多々とも言われますが、メンツ多々という言い回しは昭和時代の麻雀本にも見受けられます。概念自体はだいぶ昔からあって、時代を経るにつれ言い回しが少しずつ変化していきました。一応昭和生まれの私ですが、「メンツ多々」は何とも古い言い回しに聞こえます。少なくとも私が大学に在学していた頃は、「多々」より、「オーバー」の方が主流でした。

 当時、私はこの言い回しに違和感を覚えていました。「メンツオーバー」と言っても、オーバーしているのはメンツではなく、メンツを作るターツ。それなら「ターツオーバー」と言うべきではないかと思ったのです。ネットの何切る掲示板でも「ターツオーバー」と表現する人が多数居たので、サイト版「現代麻雀技術論」でもそれに合わせて、「ターツオーバー」と表現することにしました。似たような言い回しとして「くっつきテンパイ」があります。くっつきでテンパイする形自体は1シャンテンですから、私は「くっつき1シャンテン」と表現しています。(今思えば、「お湯が沸く」「ご飯が炊ける」と同じで、現象の変化ではなく、変化の結果に着目している言い回しでありますから、「メンツオーバー」「くっつきテンパイ」も間違った表現ではありませんでした。)

 ターツオーバーという呼び方にも問題がありました。ターツは「リャンメンターツ、カンチャンターツ、ペンチャンターツ」のいずれか。トイツはターツに含まれず、カンチャン+フォロー牌のリャンカンも、それ自身はターツではありません。ターツは「塔子」ではなく、「搭子」と書きます。理由はこちらにも書いた通りです。

 小林プロのツイートは『勝つための現代麻雀技術論』出版(2014年4月)後のものですが、以前から同様の主張をされていたこともあり、書籍では、「メンツ候補オーバー」と表現するようにしました。

 しかし、「メンツ候補」となると更に意味合いが広くなり、単なる浮き牌であっても言ってしまえばメンツ候補。それなら2枚ないし3枚の組み合わせ、メンツ、ターツ、トイツの総称を何と呼ぶのかと言えば、最初に登場した「ブロック」です。ブロックには「かたまり」という意味がありますから、ターツ+フォロー牌は合わせて1ブロック、浮き牌はブロックに含まないということを字面からも認識できます。

 ここ数年、「ブロック」という表現が主流になったのは、福地本シリーズ『麻雀の基本形80』(2014年7月出版)の影響と思われます。「5ブロック理論」自体はずっと前からありましたが、理論の内容を初心者にも分かりやすく掘り下げたのは本書が初めてと言ってもよいでしょう。『勝つための現代麻雀技術論』は「メンツ候補」なのでブロックという言葉は出て来ませんが、「基本形80」以降に出版された麻雀本の多くがこの言葉を採用するようになりました。

 ブロック表記がスタンダードになってからは、私も「麻雀ウォッチ」記事内で度々用いていますが、手組を表す用語としてブロックという言葉だけが英語出拠なのが少し違和感があります。一つだけ異質な言葉が混じっていると言葉そのものに囚われやすく、本質を見失う恐れもあるので、「2枚ないし3枚の組み合わせ」を単語で表現するなら、単に「かたまり」と呼んだ方がよいかもしれませんね。

宜しければサポートお願いします。サポートは全てラーメンのトッピングに使わせていただきます。ラーメンと麻雀は世界を救う!