ネマタの「裏」麻雀本レビュー第14回『夜桜たま×朝倉康心に学ぶ現代麻雀』その2

第1章 手組

①序盤の手組

 序盤と一口に言っても、①巡目が早い②手牌が和了に遠い 二つの意味で使われる場合があります。本書に限らず、巡目ごとに手組を解説しようとするものが実に多いのですが、手組を考えるうえで最も重要なのは、手牌そのものに他なりません。手牌のパターンごとに手組を考えるようにしなければ、手組の技術が頭打ちになっています。頭打ちになっている人の解説を、別の頭打ちになっている人が分かりやすいと賞賛している。麻雀界でよく見られる光景です。

 配牌が悪いときは安牌として字牌を抱えるというのも、この段階で話すことではないでしょう。良い悪いの定義をしなければ、「良い」「普通」「悪い」が1/3ずつと思いがちになるというのは誰しも持ち合わせている感覚。しかし麻雀において、「守備を意識するという理由で配牌から字牌を抱えないのが明確に損」になる手牌の割合は1/3もありません。配牌の良し悪しの定義もせずに、「配牌が悪いときは守備意識」と教えれば、必要以上に安牌を抱えてしまいがちになります。

  安牌を1枚抱えながら打つ「12枚麻雀」が紹介された『魔神の読み』(先に断っておきますが、本書は2012年当時の戦術書としては極めて良書。安牌を抱える基準も書籍内で説明されています。)が発売された頃の話。ターツが足りておらず、それほど悪いとも言えない配牌からでも安牌を残そうとする人が結構出て困惑させられたことを思い出しました。

 「麻雀は配牌から手牌を良くしていくゲームだから、配牌は『悪い』と感じてしまいがち」「本に書いてあったことをすぐにでも実行したい」「筆者にとって当然のことであったためか、『ターツが足りている』手牌であることが本書で言及されてない」。理由としてはいくつか考えられますが、「安牌を残すかどうかも手牌のパターン主体で判断」「イレギュラーな選択はあくまでイレギュラーと断ったうえで、具体的なケースを例示する」ことの必要性を実感させられました。

②浮き牌の切り順

 先に申し上げておきましょう。自分が運が悪いと思っている人は麻雀が下手なだけです。しかもそう思っているうちは麻雀が上手くなることはありません。

 筆者は筆者が敬愛する土田氏が語るような「運を育てる」という類のオカルトを信じていないようですが、「自分が運が悪い」と思い込むのも、言ってしまえば別のオカルト。勝負に勝ちやすい状態を「運が良い」、負けやすい状態を「運が悪い」と定義するなら、「運の良し悪しは常に変動する、ただし変動を予測したり、良い方向に変えることができないからこその運」「運を育てることは出来ないからこそ、運ではない『腕』を磨くのみ」。麻雀が上手くなるために必要な心得と言えましょう。

 「運を育てる」タイプのオカルトなら、たまたま「腕を磨く」ために必要な努力と合致することもありましょうが、「運が悪い」と思い込んでそれを前提に打ち方を組み立てるような真似をすれば(ペンチャンが引けないからとやたらペンチャンを落とすのはその典型例)、正着から外れていってますます勝てなくなります。しかも勝てないから「やっぱり運が悪い」となる悪循環。運の良し悪しは常に変動するけれど、強くなる人は概ね自分は運が良いと思っている。これは別にオカルトではないんですね。

 これは本書に限ったことではないのですが、麻雀講座を序盤の浮き牌の切り順から取り上げるのはそろそろ止めにしましょう。「和了に近い段階に比べて戦績に与える影響が薄い」「初心者でも特別教わらずとも直感的に理解できる」「字牌を残すケースが結局よく分からないまま」理由はこの辺りです。「戦績に影響を与えやすいうえに、教わらないとなかなか選べない打牌」を身につけさせてこそ、麻雀講座としてふさわしいのではないでしょうか。

 折角「5」の牌をアイドルグループのセンターに喩えているのですから、1アタマ4メンツを作る麻雀を、「五人組のアイドルグループ」をプロデュースするゲームに喩えてみるのも面白いかもしれません。真ん中の牌は王道の清純派。3456mや3445pのような並びは実にキュートです。

 それに対して字牌は裏社会のセクシー派。王道の清純派を売り出そうと呼び込みをかけている時であれば、訳ありな人材は入れたくないものですが、うまくブレイクさせることができればまさに一獲千金。麻雀打ちなら誰しも、白白発発中中とあったらセクシー過ぎて興奮してしまいます(笑)

 セクシーなのキュートなのどっちが好きなのと聞かれたら、どっちもと答えたくなるのが人情ですが、プロデュース業は人情だけでは務まりません。新人を呼び込むのが浮き牌選択。五人組を決めるのがターツ選択。五人組を育てるのがフォロー牌残し…うまく繋がりそうなので、次回からもこの路線でいきたいと思います。

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