ネマタの「裏」麻雀本レビュー第46回『麻雀強者の流儀』編その9

第二章 手順の流儀

10 打牌選択については筆者と同意見です。しかし私はここまで頭が回らないですね。単純に牌だけを見て評価したうえでの判断です。相手の打ち筋や挙動を押さえておくことで切るべき牌が変わる場合も少なからずあるとは思いますが、考え過ぎて疑問手を打ってしまうことも少なくありません。特に浮いた字牌ドラのような評価が難しい牌の場合は尚更です。

11 筆者のようなベタオリを嫌う打ち手ほど、アガリを目指すうえで使いにくい牌の価値が低くなることは以前取り上げました。他家からリーチが入ればすぐ降りるつもりなら問題ありませんが、9pが残ってしまった時点で押し返すのは難しくなってしまうので、押し返したいなら切るタイミングを測る必要が出て来ます。鳴いて高打点かつアガリやすい役牌ドラ3の目が無くなったところで9pを切る発想は参考になります。3巡目の1mを残していれば147s待ちのリーチを打てていますが、これも筆者の打ち筋からして、使わないことが多いうえに安牌にならない端牌を残したまま他家からリーチがかかることを嫌ったというところでしょうか。


 一見基本に見える問題ですら想定解と異なる打牌をする実戦巧者が少なくないのは、本人が考える牌の価値が、本人の打ち筋に噛み合ったものになっているからと考えます。この辺りは、「鳳南研究所」の内容が非常に参考になります。逆に言えば、昨今の麻雀戦術を学び、強者の打ち筋を参考にしているにも関わらず伸び悩んでいる方は、あれもこれもと取り入れているうちに、自分の打ち筋に噛み合わない打牌を無意識のうちに選んでしまっている可能性があります。自分にとって参考にしやすいのは、もしくは為になるのは誰の打ち筋なのかも考えてみるのも面白いですね。

 もっとも私自身は、自分の打ち筋に牌の価値を合わせるのではなく、牌の価値に自分の打ち筋を合わせたいと考えます。実力が伸び悩んでいるうえに実戦が捗らないのもその悪癖のせいなのは否めませんが、日本だけで麻雀人口が何百万人も居るにも関わらず、本書の考察記事を長々と書き連ねているのは世界で私一人だけ。こんな麻雀人生もありじゃないかと思っているのであります。

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 筆者の所属する雀鬼会ではツモアガリを尊ぶ故にチートイツ以外の単騎待ち禁止、チートイツも字牌の地獄単騎(残り1枚)で待つことが禁止されています。このあたりに筆者がチートイツを嫌いな理由があるのではとも思ったのですが、元雀鬼会の土田浩翔氏と言えば、「トイツ王子」として知られるほどのチートイツ好きと実に対照的です。

 筆者がなるべくメンツ手とチートイツの両天秤にかけるのに対して、土田氏はチートイツを狙うときはあえて両天秤に取らずに決め打つタイプ。これもまた対照的。更には、筆者が山読みを重視するのに対して、土田氏はチートイツを狙う際に山を読まないとも公言されています。

 チートイツのアガリ率自体は、両天秤にかけるより決め打つ方が高くなります。両天秤にかければそれだけ、トイツで重なりやすい牌を残しづらくなるからです。

 山を読んでアガリやすい待ちを残すとなると、いかにもツモアガリ率が高くなるような気もしますが、ツモりやすい牌というのは、相手がツモって出すことも多いということ。一般論としては、アガリにくい待ちほどツモアガリ率は高くなります。ツモアガリ率ではなく、「アガリ時ツモ割合」であれば、なおのことアガリにくい待ちほど高くなります。

 すなわち、チートイツでアガリたければ両天秤に取るより決め打つ方がよいですが、アガれた時の「ツモアガリ」を増やしたいのであれば、山を読まずに、「決め事(対子システム)」に従い、テンパイしたら数牌タンキでも手変わりを待たずにリーチを打った方がよいことになります。山を読みたがる人ほど、手変わりを待ってダマにしている最中に他家から出アガリする頻度が高い分、ツモアガリ率が減るということも言えます。

 麻雀打ってて成功したと感じるのは、やはりツモアガリの時。鈴木氏の打ち方だとチートイツで失敗したと感じやすく、土田氏の打ち方だと成功したと感じやすい。こうした失敗、成功体験が好き嫌いに繋がり、自分が好きなように打つからこそ、ますます自分の好きな戦略が「成功」すると感じることが増えるのではないでしょうか。前項目で申した通り、両氏とも、「本人が考える牌の価値が、本人の打ち筋に噛み合ったものになっている 」のです。

 好き嫌いの多い人の方がグルメに興味を持ち詳しくなるように、麻雀も好き嫌いがあった方が、そもそも麻雀にあまり興味を持たない人よりはずっと強くなれるでしょう。自分がどんな打ち筋で何を好むのかもよく分かっていないというのも、麻雀で伸び悩む人によく見られます。

 しかし繰り返しになりますが、私はやはり自分の打ち筋に牌の価値を合わせるのではなく、牌の価値に自分の打ち筋を合わせたい。麻雀くらいは好き嫌いのないグルメ通になりたいものです。

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 「頭の中に136牌を整列させる。」言うのは簡単ですが行うのは難しい。私は打牌のために必要な情報を把握できているなら、そうでないものはノイズとしてなるべく切り捨てる(というより、能力不足で取り入れられないに近い)ようにしています。

 とはいえ、切り捨ててばかりでは必要な情報まで見落としてしまいかねないので、「もし打牌判断が変わるとすれば、どんな情報が有り得るか」を考え、「実際にそのような情報を見て取ることができるか」については意識的に確認するようにしているつもりです。「判断を変える情報」に気付けたうえで打牌を変え、実際に上手くいった時ほど楽しいものはないですね。

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