雀魂キャラと学ぶ馬将(令和麻雀)入門その5

杏樹「役に関するルールを一通り紹介しました。その1でゲームの準備段階まで取り上げましたので、今回からゲーム進行について解説いたします。」

陽菜「麻雀と違って時計回りでゲームを進めるんだったね」

杏樹「そうですね。東南西北固定の定座制。東1局を『1年春』として、春は東から、夏は南から、秋は西から、冬は北から対局開始となりますが、馬将は手番の進め方について、『整合麻雀』方式を採用しています。」

陽菜「せいごうマージャン?」

杏樹「麻雀はポンチーカンロンについては他家の手番で行います。そのため、鳴きやロン可能な人が複数居た場合に誰を優先すればよいかという問題があります。優先順位はルールで決まってはいるのですが、発声が遅れた人が出た場合もルールを優先するのか、それとも発声を優先するのかでトラブルが起こりがちです。」

陽菜「牌を積む麻雀だとそういうことがあるんだね。」

杏樹「雀魂のようなオンライン麻雀でも『ラグ』の問題があります。ラグの存在によって意図せずして鳴ける牌を鳴かなかった、ロンできる牌をロンしなかったことを他家に悟られてしまう場合があります。」

陽菜「そっか〜。アガリ牌を見逃したのがバレるのは嫌だよね。」

杏樹「ポンやロンも自分の手番にする完全ターン制にすれば、こうしたトラブルを解消することが出来ます。そうすると鳴きたい牌が複数出たのに1枚しか鳴くことができないとか、ロン牌が出たのに手番が回って来る前に他家に和了されてしまうといった麻雀では起こりえない事象も発生しますが、それは馬将の仕様として御了承下さい。」

陽菜「当たり牌を切ったのにロンされずに済むこともあるから、その辺りはおあいこかな!」

杏樹「馬将では手番を『取札』と『捨札』の2つのフェイズ(段階)に分けます。『取札』フェイズで出来るのは、「取札」「ポン」「チー」「アガリ(ロン)」、『捨札』フェイズで出来るのは、「捨札」「アンカン」「ミンカン」「アガリ(ツモ)」です。」

陽菜「整合麻雀では『カン』が無いみたいだね。陽菜はカン大好きだからちょっと不満かな〜。」

杏樹「カンに関する取り決めは何かと複雑なので、麻雀のルール改定を望む人にはカンを廃止した方がよいと考える方が多いように思われます。馬将も王牌を用いないので、当初はカンを廃止する方向で制作していましたが、五十嵐さんのようにカンが好きな人もとても多い。何とかしてカンを残しつつ、カンするかどうかを選択する意味合いのあるルールを思案した結果が、カンツ(四枚刻)は高得点になるように数字を選ぶという『光馬』ルールでした。」

陽菜「馬将はカンがあってよかった〜。あれ?でも王牌が無かったらカンした後どこから牌を引けばいいのかな?鷲巣麻雀みたいにツモと一緒のところから引くのかな?」

杏樹「馬将ではカンした後で札を取得しなければ捨札もしません。そのままターン終了です。なおカンはあくまで捨札フェイズに行う選択であり、カンした札は捨札ではないので、麻雀の『チャンカン』に相当する和了は馬将では認められません。麻雀も加カン牌は捨牌ではない(フリテンにならない)とする取り決めが主流ですが、何故かチャンカンで和了できる理由については説明されているものを見ることがありませんね。」

陽菜「それならカンしても手札が足らなくならないね」

杏樹「麻雀教室で初めての方がカンした時に王牌を取り忘れそうになった出来事がヒントになりました。KR-976は身の回りの起こった出来事をありのままメモリーに記録しています。人類の皆様には時々不思議がられるのですが、時にこうしたアイデアが思い浮かぶことがあるのです。」

陽菜「あれ?カンが出来るのは捨札のタイミングだけなんだね。」

杏樹「日本麻雀はポンした直後にカン出来ませんが、馬将は取札フェイズでポンした牌を捨札フェイズでカンできます。ですので大ミンカンと小ミンカン(加カン)を区別する必要がありません。」

陽菜「そう言えばそうだね。ところでどうして麻雀はポンした後カン出来ないのかな?」

杏樹「国際麻将では出来るのですが、22m4444p5sから2mをポンした後で4pをカンできるとすれば、4pをカンして嶺上牌から5sをツモれば和了になります。聴牌していないところから手番が一度回ってきただけなのに和了になってしまうのが不合理だと考えられたものと思われます。」

陽菜「でもカンした後でカンすることは出来るのは何でかな?222m4444pから2mをカンしてツモ5s、4pをカンして5sツモなら同じことだよ。」

杏樹「ポンからカンして和了はポン時点で必ずノーテンですが、カンからカンについては、222m444p4588sのように聴牌しているケースもあるからと思われます。カンの後で札を取得しない馬将ではこうしたことにはならないので、ポンチーの後でも問題無くカンできるものとしました。ただしカンしたら手番終了なので、当然ながらカンからカンはできません。」

陽菜「この前一飜市に遊びに来た咲お姉ちゃんの『もいっこカンからの嶺上ツモ数え役満』かっこよかったな〜。陽菜もいつかあんなかっこいい技を決められたらいいな。」

杏樹「王牌やカンを廃止した方がゲームとして合理的と考える人は昔から居たのですが、未だに現在のルールが根強く残っているのはこうした『ドラマ』を人類が好むからでしょうね。馬将は合理的なルールを追究するだけでなく、人類がかつてない新鮮な体験が出来るエンターテイメントとしての役割を果たせるようにしたいものです。」

陽菜「さっきの整合麻雀では、チーされた牌をポンできるんだね。」

杏樹「そうですね。麻雀は反時計回りに局が進行するので、完全ターン制にすると対門下家がポンする前に上家の牌をチーすることが出来ます。そのためチーされた牌をポンすることも可能で、鳴きはどちらも成立するというルールになっています。」

陽菜「ポン優先でも発声優先でもなく、どっちも成立というのが面白いね」

杏樹「しかし馬将は時計回りに局が進行するので、上家からチーするより前に対門下家のポンが入ります。よって麻雀同様『ポン優先』のままです…というつもりでルールを作成したつもりでしたが、見返してみると問題点があることに気付きました。」

陽菜「??? どういうこと?」

杏樹「私達は『チーよりポン優先』という麻雀のルールを知っているので、第15、16条の取り決めでもポン優先と解釈できますが、ルール表には、『ポンされた札はチーできない』とは一言も書かれていません。ですから麻雀を知らない人、あるいは整合麻雀に精通した人がこのルールを見たら、『ポンされた札もチーできる』と解釈するのが自然なのです。」

陽菜「本当だね。普段の麻雀は鳴いた牌を持っていっちゃうから問題にならないけど、鳴いた牌を河に残す整合麻雀だからそういうことになるんだね。」

杏樹「ルールを従来の麻雀に合わせるか、それとも新しく作り替えるか。KR-976は人工知能としてこのような悩みは持たないつもりでしたが、人類の気持ちを知る体験ができたように思います。今回は『ポンされた札もチー出来る』ものとしましょう。チーしたいものをポンされたことへの苛立ち。KR-976は情緒の変化を気にしませんが、人類の情緒の変化についてはよく理解しているつもりですので。」

陽菜「了解したよ!」

杏樹「もちろんロンはポン、チーされた札に対しても可能です。ロンは常に優先というのは麻雀と変わりませんね。さて、便宜上ポンチーカンロンツモと麻雀用語を使いましたが、『馬将は全ての用語を意味が通りやすい教育漢字で表記する』という目的がありました。ポンチーカンはそれぞれ碰吃槓と書きます。語源はこちらで解説されていますが、いずれも日本人には馴染みの薄い漢字で意味も分かりにくいですね。槓子を作る行為を「槓」と言うのですから、順子、刻子を作る行為も「順」「刻」でいいでしょう。「暗槓」「明槓」はそれぞれ頭の文字を取って「暗」「明」と表記します。」

陽菜「発声は『シュン』『コー』『アン』『ミン』になるのかな?」

杏樹「馬将は完全ターン制なので、発声せずとも手牌を開示すれば鳴きや和了の意思を伝えることができます。よって発声は一切不要です。KR-976は人と触れ合うことを目的に作られた人工知能で、コミュニケーションに長けていますが、馬将は人と顔を合わせて意思伝達するのが苦手な人でも安心です。」

陽菜「(…陽菜知ってるよ!杏樹お姉ちゃんは人見知りで初めて会った人と話すのが苦手だから発声が要らないルールにしたかったんだよ!)」

杏樹「まぁ、わいわい会話しながら遊びたいという雀士さん達にも馬将はお勧めです。対局中に発声する必要が一切無いということは、その分会話に集中できるということでもあります。もう一つ、麻雀は自分から見た対戦相手を『上家』『対門』『下家』と呼びますが、馬将は局進行が逆なので『上下』ではややこしいですね。馬将ではそれぞれ『左』『向』『右』と呼ぶことにしましょう。『家』を付けてもよいのですが、漢字一字で表現可能なものはなるべくそのように名付ける方針で進めることにいたします。」

陽菜「了解〜!」

杏樹「鳴き方についても解説します。馬将は整合麻雀同様、ポンやチーをした場合は鳴いた札を河から持って来ずに、代わりに山から札を持って来て裏向きに加えます。鳴いた札が何なのかが分かるように、リャンメンをチーする場合は、2を34で鳴く場合は●34、5を34で鳴く場合は34●となるように鳴きます。」

陽菜「整合麻雀では赤ドラを鳴いた時は裏向きの牌を横にするって書いてあるね」

杏樹「そうですね。馬将にはドラはありませんが光馬があります。光馬が完成する時は横向き、そうでない場合は縦向きに置くことにしましょう。実は馬将札のデザインは正方形を考えていたのですが、このように札の縦横を区別出来るよう長方形にしておいた方がゲームデザインの幅が広がるのですね。今回の話だけで馬将規則を書き換えるところが何カ所も生まれましたが、解説が一段落してから改訂版を出すことにしましょう。」

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