ネマタの「裏」麻雀本レビュー第29回『令和版神速の麻雀』その7

対リーチ追いかけ判断(セクション12〜15)

「楽しく勝つ」麻雀講座のパイオニアとでもいうべき麻雀漫画『打姫オバカミーコ』。第1回のテーマは「リャンメンで待て」でしたが、第2回のテーマは「押し引き」。「先手良形高得点このうち2条件がそろったら押せ。後手悪形安手このうち2条件がそろったら引け。」という言葉は、分かりやすい基準で押し引きの名言と言われることもあります。
 しかし当講座では、「先手なら悪形安手でもリーチ」「後手でも良形または高打点テンパイなら押し」。つまり1条件で押してよいと基準を押し寄りにしています。
 「先手で悪形安手の手をリーチせず、後手なら良形高打点両方揃ってないとすぐ降りてしまうので、手数が足りない負け組。」これもまさに昔の私のこと。だからこそ本書の台詞に皮肉を言いたくもなるのですが、師匠に会う前のミーコに限らず、先手を取るのが上手くないうえに、「後手で降りるべき時に降りきれていない」打ち手は多いもの。そのような打ち手にとっては、若干引き寄りの基準を示した方が効果的なアドバイスと言えるかもしれません。

  本書の基準もまさに「1条件で押し」。切る牌が安牌、自分が親番といった要素があれば0条件でさえ押し有利になる場合もあります。堀内氏が競技の場でも結果を残せた理由は、「2条件で押し」派を手数の差で押し切ることが出来たからと言ってもよいかもしれません。

 『打姫オバカミーコ』の中でも、「堀内システム」を思わせるような打ち筋のネット麻雀のトップが「デジタル派」として、従来の麻雀プロ「アナログ派」と対決するシーンが出てきます。対立構造を描く物語の構成上やむを得ないことかもしれませんが、「精度ではなくとにかく頻度を上げればよい」という、「デジタル派」への誤ったイメージが少なからず見受けられました。私に言わせれば本作品で登場する「アナログ派」が手数が足りない負け組なら、「デジタル派」は、打点が足りない負け組です。(それでも本作品は、「デジタル派」が登場する他の作品よりはだいぶマシではありますが。)

 本書の押し引き基準に懐疑的な方、あるいはそのように打っているつもりだけど勝てないとお悩みの方はこちらもご覧下さい。麻雀は総合力勝負ですから、多少基準がズレていてもミスが少なければ、ミスが多い人には勝ててしまうもの。これから麻雀を学ばれる方には、「アナログ」「デジタル」「手数」「打点」といった対立構造は最早不要でありましょう。別にどちらかの打ち方に決める必要はなく、手牌と局面に応じて強い方を選べばよいだけ。遠回りせずに「麻雀を知る人になる」ための道標を、皆様に示すことができればと思うばかりです。

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