現代麻雀技術論註第18回「距離、傾斜、速度」

 「速度重視で◯切り」。麻雀で何を切るかを解説する際によく使われる言葉ですが、正確には速度ではなく和了率重視と言うべきでしょう。選択はなるべく結果に結びつけて考えるようにします。

 では、何をもって「和了率が高い」とするのでしょうか。和了までの過程を道に喩えるのであれば、和了に近づく有効牌の枚数が「速度」になります。

 しかし、有効牌の枚数が多いからといって和了率が高いとは限りません。極端な例ですが、配牌が489m147p126s東南西北であれば、メンツ手、チートイツ、国士無双ともに6シャンテン(アガリまで7手)で、何を引いても5シャンテン(6手)になります。しかし和了率が最低クラスなのは火を見るより明らか。和了率を考えるうえで最も重要な指標は和了までの「距離」、シャンテン数であり、シャンテン数が小さい手牌ほど、有効牌の枚数は少なくなります。和了までの過程を道に喩えるなら、和了というゴールに近づくにつれ、だんだん坂の「傾斜」が急になっていくのです。シャンテン数については次の方法で求められます。

 元々平坦な道なら多少坂が急になってもさほど速度は落ちませんが、傾斜が急過ぎると速度が急速に落ちてしまいます。よって、受け入れ枚数が少ないほど、受け入れ1種の価値が大きく、和了率が上がりやすいです。また、和了に近づくにつれて傾斜が急になるのですから、距離が同じでも和了に近い段階で傾斜が緩やか、つまり受け入れ枚数が多い手牌ほど和了率が高くなると考えられます。数理的な説明についてはこちらをご覧下さい。

 つまり、「速度重視」の打牌というとどうしても「シャンテンが進む受け入れ枚数が多い選択」と考えがちですが、単純な「速度」よりも「傾斜」の方が大事です。ただし「距離」が長ければ「傾斜」が緩やかになるのは当然なので、基本的には「傾斜」より「距離」優先。手変わりを待つなら元々傾斜が緩やかなアガリに遠い段階で待つようにします。

 それを踏まえたうえでこちらの問題を考えます。打牌候補は5m2s6s。いずれも2シャンテンなので「距離」は同じ。動画では3トイツを崩した方が有効牌が多いという理由で6sか5m。6sと5mであれば3枚を1ブロックとして残すことで1シャンテン時の受け入れで勝ることから打6sとしています。有効牌の多さが「速度」なら、1シャンテン時の受け入れ重視が「傾斜」です。

 しかし、単純な「速度」より「傾斜」優先の観点からすれば、受け入れこそ2枚少なくなるも、テンパイ時に569m、あるいは69m6sのエントツ待ちが残りやすい打2sの方が和了率で勝るのではないでしょうか。これが78999mではなく789m99sであれば、テンパイ時の受け入れに差がつかないので打6sです。

 和了率を評価するためには「距離、傾斜、速度」の3要素を考慮する必要があります。「6ブロックより5ブロック」とされるのは、「速度」より「傾斜」が重要であるためですが、それは5ブロック同士の比較でも同じこと。「AかBか」と考えると、第3の選択Cを見落としがちなので注意したいですね。

 しかし、一度に複数の要素を考慮するのは、初心者でなくても難しいこと。それなら実戦ではどのように処理すればよいかということになりますが、私がお勧めするのは、「共通の有効牌を引いた1手先の手牌を考える」「最初から複数の要素を踏まえたうえでの、手牌の優劣を覚えてしまう」ことです。今回はマンズでメンツが完成したケースに着目してみましょう。

A 34578999m45p466s

B 34578999m45p246s

 手牌Aは打2sツモ4m打5mとしたもの。手牌Bは打6sツモ4m打5mとしたもの。手牌Bが良形テンパイになるのはツモ35sのみですが、手牌Aは69m36p56s。テンパイする全てのツモでリャンメンもしくはエントツ形の良形テンパイになります。

 私自身は「ブロック」の考え方は必要と考えますが、言葉に囚われて本質を見失ってしまうのはありがちな話。ルールレベルの用語を除き麻雀用語は定義が統一されていないものが多いのですから尚更です。言葉を尽くすより前に、一手先の形を考えるようにしたいですね。

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