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昨日寝れなかったので、駅に置いてあるピアノを弾く人々の動画を見ていた。いわゆるストリートピアノってやつ。ストピ動画は以前から趣味で見ていたのだけど、ちょっと見ないうちに新鋭……、というか、アイドルみたいな人が何人か現れていた。熱心に追いかける女性ファンが多くついていて、動画にも結構ファンらしき同じ人物が写り込んでいる。
ピアノとか、クラシックが趣味の男性は品があってお育ちも良さそうで、そのへんのグラビアアイドルとかには手を出さなそうな感じがある(あくまでも感じであり、実際どうかは知らないし、別に出してもいいと思う)。そういう高尚な雰囲気が、日本の芸能界のオラついた、場末のホストかよみたいな荒廃ぶりに疲弊した女性の心を多くつかんでいそうな気がする。気がするだけ。

その話は置いてといて、女性歌手で歌の上手い人の歌声を聴いていると、なぜか問答無用で泣いてしまうことがある。リア・ミシェルの”Don't Rain On My Parade"とか。別にリア・ミシェルのこと好きじゃないしどちらかと言えば嫌いな方なんだけど。でも何回聴いても泣くので電車の中では聴けない。それで、ストリートピアノに飛び入りして歌う、ものすごく歌の上手い女性歌手がいるんだけど、それ見てなんかめちゃくちゃ泣いてしまった。
話が飛ぶが、「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」でエヴリンが別ユニバースで盲目の歌手になっていて、そこでも泣いてしまった。あんなちょっとのシーンなのに。「パチンコ」というドラマの中で、日本人のお偉いさんの愛人であるオペラ歌手が、禁じられている韓国の歌を歌って死ぬ場面があるんだけど、そこはまあ、はっきり泣いた。

山田五郎さんのオトナの教養講座で知ったけど、ドガが描いた踊り子たちは、権力者たちの愛人候補だった。今でこそオペラ歌手やバレリーナは地位が高いけど、当時は要するに「しっかり踊って上客をつかめ」という、まあ、娼婦同然だった(これは「ラストナイト・イン・ソーホー」の台詞)。
ダンスとか歌は、求愛行動でもあり、一人で生きられなかった時代の女性たちが、男に媚びて代価をもらうために、磨いて武器にしたものでもある。芸妓さんだってそうだろう。でも、媚ではなく美の追求というか、「上手くなろう」と血がにじむほど努力して、芸術の域にまで達した歌声を聴いていると、ほんとその努力に泣けてきちゃうんだよな。

ところで動画で見た女性歌手は、色白で細くて小鳥のようなのに、歌声は力強くて、アンデルセン童話の「ナイチンゲール」を思い出したのだが、ナイチンゲールもまた、娼婦の暗喩だったのではないか…とか思っている。王様には妻がいなかったしね。

あ、「ナイチンゲール」はオスでしたね…なら男娼か。
山口椿のエロ小説で「薔薇と夜鳥(ナイチンゲール)」ってのがあるんだけど、少女嗜好のにじみ出たとても気持ち悪い作品でお勧めです。「ロベルトは今夜」(トレヴィル)に収録。

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