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エコと病院どっちが大事

アースシップハウスってものを初めて知った。
70年代にマイケルレイノルズという建築家が作った家で、世界に50軒ある。日本にもある。エネルギーや水、食料など、人間の生活に必要なものがほとんど自給自足できる謂わばエコのユートピア的な建築物で、発想は面白い。意地悪なので、何か逆に環境を圧迫するような問題点がないのか軽く調べたけど、そういうアンチ記事や論文も特に見当たらなかったので、50年近く問題なく運営されてきたのだと思う。

この特殊な建築物を売りたい、というご夫妻がいる。Netflixの不動産を売るリアリティ番組で見た。ニューメキシコ州のタオス、という周囲を砂漠に囲まれた土地で生活してきたが、家を売りたいという。理由は「新しい冒険に出たいから」とのこと。
タオスはアースシップハウス発祥の地で、一種のコミュニティになっていたらしい。それがこのご夫妻しか残っていないということは、他の人達は既に去ったのであろう。単純に飽きただけかもしれない。私にはこの「環境にいいが、孤立した単調な生活」を数年も続けられないと思う。機能的には持続可能でも、人間の気持ち的にというか、生理学的に、こういう生活は長く続けられないのではないかと何となく思う。
まあ、だから次やりたい人がいるなら譲る、というのは筋が通っているとも言える。
しかしこのご夫妻は「あてもなく旅に出たい」と言った後に、不動産屋の提示額の低さに「それではタオスで普通の家も買えない」と難色を示していたので、恐らくもう少し便利な都市部に定住したいのだと思う。「アースシップは公共インフラに依存しないのが自慢」と自慢していたけど、この手の人は何故公共インフラを下に見るのかねぇ。年取ってくると、一番気にしなきゃならないのは病院へのアクセスで、それにはどうあがいても公共インフラに頼らざるを得ない。あんな砂漠のど真ん中では救急車だって8時間くらいかかるだろう。
なんかそういうヤバい出来事があって、懲りたから売りたいんでしょうね…。
エコな隔離生活をする人は(これは完全に偏見ですが)西洋医学を否定し、普段は見よう見真似の民間療法で乗り切ってるけど、乗り切れなくなると病院に来る。ほとんど手遅れの場合もある。いざとなったら頼る癖に文句ばかり言って、医療従事者の身にもなれや、と私は思う。私は別に医療従事者じゃないので、科学や西洋医学を否定し文明を否定し、退化したがる人がいても自分には関係ねーやと思ってるけど、お医者さんはそうはいかない。どんな人でも助けないといけないヒポクラテスの誓いがある。ほんと大変な職業だと思う。

不動産エージェントの中に中年の女性がいるのだけど、彼女は最初から手厳しく、「この物件、私は興味ないので買いません」とバッサリ。お世辞もおためごかしも言わなかった。不動産業はシビアだろうけど、こんなハッキリ言う人も少ないのでは?タイヤの廃材でできた家を「夢のエコハウス!」と売りつけておいて、自分達は便利な土地に移住するなんてほぼ詐欺にも思えるし、エコ生活に飽きたから他人に押し付けたいなんて、まあまあ傲慢だよなー、と私は思った。


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