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#創作大賞2023 審査員特別賞をいただいたので、はじめて語ってみます。

はじめまして、ネコ山です。
この度 #創作大賞2023 のコミックエッセイ部門にチャレンジ。
そして…審査員特別賞をいただきました!!!

特別審査員をされた北森サイ先生(左)とネコ山(右)

中間選考通過の連絡をいただいた時は、
「おーーすげーーー!やったーーーー!」と普通に大喜びしましたが、
審査員特別賞受賞の連絡にはうれしさを通り越し「なぜ?」の気持ちが大きかったです。

授賞式当日まで1ヶ月ほどありました。
ずっと「なぜ?何が良くて?どうして??」と評価していただいた理由がわからず、ポカン顔で会場に向かうところでした。
しかし、note公式の最終結果記事にある北森先生の選評を読み、腑に落ちるというか、自分の「コミックエッセイに臨む姿勢が認められたのかもしれない」と感じることができました。

まだまだ受賞に対するお気持ち表明や受賞についてを書き連ねたいのですが、それは後半にまわして、まずは創作大賞に応募する経緯などから順に書きたいと思います。


普段Instagramで活動している私ですが…

なぜnoteに来たかと言いますと、作画やタイアップなどのお仕事をいただくようになり「そろそろポートフォリオページがほしいな」と思ったからです。

ブログを持っているのでそちらに作っても良いのですが、私のブログに訪れる方はほぼ漫画の先読みが目的。やはり、販促宣伝効果を高めるためにはSNS的なところがいい…!というわけで、さまざまなクリエイターがポートフォリオページを作っているnoteにたどり着きました。

そこで目にしたのがこの #創作大賞2023

まだ完結してないけど…と思いながらも、以前から温めていて絶対に世に出したいと思っていた作品を応募しました。
それが『母の宗教に困っています』です。

漫画を書きはじめたのは4年前

辛かったです。消えたくなるほど辛い時期でした。
2人目出産後、子どもの病気や配偶者と心の通わない日々で自分が何者なのかもわからなくなっていました。
そんなときに「昔、絵が得意だったよな〜」と思い出して、すぐそこにあった裏紙にボールペンで夫の似顔絵を描いてみました。

上手かったんですよ、それが。

調子に乗ってスケッチブックとコピックを買い込みました。
次に描いたのは子どもたち。
でも上手く描けなかった……

コピックで描いた子どもたち

顔はある程度描けても体が描けない、典型的なやつです。
悔しい、もっと上手くなりたい。

子どもが寝たあと、何かに取り憑かれたように毎晩描きました。

それがどんどんエスカレートしていき、消しゴムかけるのが面倒になり、ついにiPad proとapple pencilを購入。Instagramの育児漫画界に鳴物入りで参入!!!

……とはならず、その後3年間フォロワーは300台でした。


何を描いても鳴かず飛ばず

インスタ上で育児漫画が盛り上がってきたのは2016~17年ごろ。まだ複数ページ投稿できない時代です。
ほぼ日手帳などに、なんともほっこりするような子どもエピソードをイラストと共に綴り、写真を撮って、インスタに投稿するのが流行っていました。
また、育児漫画ブロガーさんたちがこぞってインスタに参入。デジ絵の発色の良さが目を引き、また大体そういう方々は絵が上手いので瞬時にバズ。各WEBメディアが取り上げるようになり、書籍も次々と出版されていました。

そして私がインスタに育児漫画を投稿しはじめたのは2019年末のこと……。
そう。
子どもほっこりエピソードは結局のところ似たり寄ったり。
ネタが擦られまくった後だったのでした。

インスタ育児漫画界でのブーム

しかもその頃育児漫画界では、空前の『夫との馴れ初めエピソード』ブーム。
夫との馴れ初めにそこまで面白い出来事がない私は撃沈。むしろ結婚式に母が来ない悲惨なエピソードの持ち主ですから。

母不参加の神前式 /『母の宗教に困っています』より


その次のブームは『仲良し家族エピソード』
この頃育児漫画界では家族総出で漫画内に登場し、家庭内の面白エピソードや旦那に感謝するエピソードや旦那にツッコミを入れるエピソードで大・渋・滞!

仲良し家族に憧れる私は、同じように素敵な私の家族、面白い私の家族を描こうとして描きました。が……

頑張って『仲良し家族漫画』を描いていた


描けば描くほど、どんどん辛くなってくる。

だって実際はそんな家庭内の状況じゃなかったから。

虚構を描くことに耐えられず、1年ほどインスタから離れ、ただのツイ廃になっていた時期もあります。

そして2022年夏、インスタ更新を再開。
なぜなら向こう数年間は外に働きに出るのをやめることにしたから。

特技をなんとかお金に変える人生

ざっくりいうと経済的な理由で大学を中退しました。その後地元でフリーターを1年したあとこの本に出会いました。
『ワーキングプア 日本を蝕む病/ ポプラ社』

高卒で運転免許証しか資格もない私、将来の自分が描かれているような内容でした。大学中退者は当時、一度レールから外れたら這い上がるのはかなり難しい時代でした。(今も難しいかもしれないけど……)

何とかして若くて挽回できるうちに動かなければ……!ということで熟考し、1つ目の特技:ピアノと絶対音感を武器に這い上がることにしました。
学費を貯めるためバイトづくしの1年後、調律師になれる専門学校に入学。その後、新卒採用で正社員になり、なんとか這い上がることができました。

そんなこんなで苦労してなった職業でしたが、息子妊娠と同時に会社から離れることに。自信持って職歴に書ける年数は勤めたし、やり切ったので悔いはありません。
子どもができてからは数年間専業主婦をしてから、息子を幼稚園の延長保育に、娘を保育園の一時保育に預け、飲食店などにパートで働いていました。

発達グレーの息子、延長保育が苦痛

私の息子は発達障害のグレーゾーン。そして『自分は何をやりたいか』がいつもある子なので、集団生活が長時間になる延長保育を利用すると、とっても荒れました。

荒れ狂っていました。

集団行動に疲れて荒れる息子の1コマ

パートよりも息子の対応の方が疲れました。

パートも色々と大変なんですよ?女性関係とか、人手不足とか、あるじゃないですか。それでも荒れ狂った息子の対応の方が大変でした。

息子が家で落ち着いて好きなことに没頭できるように、私が家でできる仕事をしようと考えたわけです。

2つ目の特技

iPadも買って持っていたわけだし、家でできる仕事として漫画を選ぶのは自然でした。何と言っても何時間も描いていても飽きないし、毎日続けられる。そして没頭する時間が何より癒しの時間。

漫画は在宅でできる仕事として、私にとって最良でした。

ですが実はもう、私には後がないのです。
私の特技はピアノと絵

もしもこの2つ目の特技をお金に変えられなかったら、次の手は無いんです。

もう独りよがりに漫画を描いてる場合じゃありません。
可及的速やかにバズらなければなりません。

バズった。ていうか炎上した。

インスタ育児漫画界で『学校もの』はほぼ確実に炎上します。
炎上コメントに耐えきれず、コメント欄を閉鎖したり更新が途絶えるクリエイターが多いことから、狙った炎上ではなく、意図せずに炎上してしまった人が多いのだろうと推測されます。

たぶん炎上してた作品

この話はざっくりいうと発達傾向がある息子について、母である主人公と幼稚園の担任の先生がバトる話です。
コメント欄は、母を超絶批判するコメントと母の気持ちがわかると同調するコメントがほぼ同量書き込まれ、最終話付近ではどっちの味方になれば良いのかわからないとのコメントも散見し、賛否両論で終幕した連載でした。

この漫画を投稿して5話目で、私のフォロワー数は1週間で400台から1.3万まで激増、最終話投稿時には1.6万まで到達しました。

やっとバズった……!と、夢中で描いた連載でしたが、これはたぶん炎上でしたね。
ですがその後、やっと日の目を見た私のアカウントを見つけた企業・WEBメディアの方々からお仕事をいただけるようになりました。

インスタ育児漫画界、2022年頃からのブーム

2016~17年頃から盛り上がってきたインスタ育児漫画界ですが、5年も経てば各々子どもも大きくなり、ネタがなくなってきたようです。
ここで私に大きな追い風が…

なんと、不倫・サレ妻・モラ夫・ヤバい元彼・ママ友バトル、などブラックなエピソードが流行りまくったのです。

もうキラキラ仲良し家族を無理して描かなくてもいい、ただありのままに私の悲惨な実体験を描くだけで反応がもらえるようになりました。

『母の宗教』の話はずっと描きたかった

ここで冒頭の、受賞した作品の話に戻ります。
『母の宗教に困っています』はカルト宗教にハマった母の話ではないですし、カルト宗教および世界3大宗教を批判する内容ではありません。
私は、信教は自由だと思っています。

が、、、

母はとても偏った宗教観を持っていました。
それが私と家族を傷付けることになりました。

『母の宗教に困っています』より

「この恨み、はらさでおくべきか…」とクラウザーさまが言っていたように、私が4年前漫画を描きはじめた頃から、ずっと描きたいと思ってきました。
しかし当時は「ネームってなに?」な超初心者な状態で、伝えたいことを正しく伝える自信もなく、さらに宗教というセンシティブなものを扱うので描いては消し…を繰り返していました。

そんな折に、某宗教団体が話題になりました。これをきっかけに宗教について興味を持つようになった人が増えた気がします。そして私も漫画を描き始めてから3年が経ち、伝えたいことを正しく伝えられるように、少しはなったと思えた時期でした。

「描くなら、今かな…」

選評

いただいたトロフィーなど

こちらは特別審査員の北森サイ先生からいただいた選評です。

選評:北森サイ(漫画家)

宗教二世のお母さんを持つ作者さんの経験を元にしたエッセイ漫画。まず冒頭が上手いと感じました。

自分の結婚式に、母が来ない。

その理由が「宗教上」ということでたった6コマの中に、宗教二世の母親に対する娘と父の辛さ、お母さんの苦しさまでにじみ出ていますし、宗教がどれだけ家族を奪っていってしまうものなのか端的に表現されています。そこから過去に戻って、母がどのように一度は棄教したはずの宗教に戻っていったか、作者ネコ山さんのシビアな目線で淡々と、丁寧に描かれており、とても読みやすく、経緯の無駄も無く、分かりやすいです。

作品としてはまだ途中ながら確かな筆致と目線で、最後までしっかりとした構成の作品を描いてくださるだろうと思い、この作品を選びました。エッセイ漫画の面白さは残酷なほど「いかに自分自身をさらけ出し、読ませる形に作りなおせるか。」にかかっていると思います。ネコ山さんはその点において本当に素晴らしいです。ぜひ最後まで描き切ってください。続きを楽しみにしております。


冒頭について褒めていただきました…!

冒頭はかなり考えました。私は冒頭8コマの中に『誰が、何についての話か、フラグ』などを明示し続きを読んでもらえるようにしているのですが、褒めていただけて本当に嬉しいです///

また、“エッセイ漫画の面白さは残酷なほどに「いかに自分をさらけ出し、読ませる形につくりなおせるか。」にかかっていると思います。ネコ山さんはその点において本当に素晴らしいです。“のお言葉に、絵柄や宗教を扱った話題性だけでなく、私の苦しみやそれで形成された自分というものを肯定していただけた気がしました。

ただいま作品の続編を描くべく準備中です。
コミックエッセイは作品と自分の距離が非常に近く、エッセイ漫画家の業〔ごう〕を感じるこの頃ですが、創作を止めず、一人でも多くの人に読んでもらえるような作品を産み落としたいと思います。

ここまで長々と書きましたが、読んでくださった方はありがとうございました!


こちらが受賞作です↓


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