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会費制の粉雪 / 毎週ショートショートnote

「雪の会費をお願いします。払ってもらわないと雪が降らなくなっちゃうの。」
玄関で燕尾服を着た小さな男の子が箱を抱えて立っていた。
「雪なんて要らないよ。雪掻きしたくない。」
男の子は黒い袖で顔を覆いシクシクと泣き出した。
「どうせ詐欺だろ。子供にこんな事させるなんて。」
しゃくりあげながら男の子は首を振る。
「詐欺じゃ無いもん。雪が降らないとみんなのお家が無くなっちゃうんだもん。」
「かまくらかよ。とにかく、金なんか払わないよ。」
しっしっと手を振ったが男の子は動かない。
「お金なんかいらないよ。木の実を集めているんだから。」
なんだ子供の遊びか。
「木の実も持ってないよ。」
男の子は箱からとても小さな木を取り出した。
「じゃあこれを育てて森を作って。僕がもしまだ生きられたら、きっとまた来るから。」
僕に小さな木を渡すと、くるりと背を向けてペタペタ帰っていった。
ペタペタ?
街灯の下をよく見ると箱を抱えたペンギンが歩いていった。

#会員制の粉雪
#会費制の粉雪
#毎週ショートショートnote


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