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動かないボーナス / 毎週ショートショートnote

ぽかぽかと暖かい陽の当たる縁側。
風で少しだけ揺れるライラック。
緩やかに舞う白蝶。少し上空で停滞する熊蜂。
庭の隅で白詰草を摘んでいた孫娘が振り向くと私を見て口を大きく開け、拙い足取りでやってくる。
「ズルい、お婆ちゃんばっかり。」
ぷぅと頬を膨らませて私の膝を指差す。
「猫ちゃんはお婆ちゃんのお膝にすぐに乗る。」
私の膝の上はいつも通り丸くなった猫がスヤスヤと眠っている。
「猫は動かない人が好きだからねぇ。お婆ちゃんに動かないボーナスだよ。」
もう自由の利かない私の足を孫娘が小さな指で触る。
「いいなぁ。」
「ゆうちゃんも、じっと大人しく出来たら乗ってくれるかもねぇ。」
孫娘はぶんぶん首を振った。
「ちがうの。お婆ちゃんのお膝に私も座りたいの。でもママがダメだって。」
「あらまぁ。きっと大丈夫だから乗ってみるかい?」
孫娘はじっと私の顔を見て考えると首を横に振った。
「猫ちゃんが起きてからにする。」
手の中の白詰草がペコリとお辞儀した。


いや、皆さん早過ぎません!?

#毎週ショートショートnote

#動かないボーナス

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