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針ほどの月明かりー19ー

ハナミズキの赤い葉を踏みながら歩く。犬の散歩をしていたお姉さんが木の名前を教えてくれた。お姉さんの小さなふわふわの犬は僕と真白にシッポを振ってランドセルや鞄の匂いを嗅ぎ、くぅん、と鳴いた。

「僕たちドーナツを持っているから、食べたいのかなぁ。あげてもいい?」

お姉さんは少し考えて、白いバッグから小さな袋を出した。

「人間が食べる物はこの子にあげていないの。犬用のおやつをあげてみる?」

僕は頷いて手のひらに一つ乗せてもらった。小さくて茶色い骨の形のクッキーを目の前に出す。犬は僕とクッキーとお姉さんの顔を落ち着きなく見た。

「待て…よし。」

お姉さんの合図でパクッと一口で食べる。

「妹ちゃんも、あげてみる?」

真白は僕の後ろに隠れていたけれど、そっと小さな手を伸ばした。お姉さんは真白の手に骨のクッキーを乗せてくれる。犬が真白の手に近づいてくんくん匂いを嗅ぐと真白はパッと手を引っ込めた。

「くすぐったかったかな。」

クッキーを持っていない方の手で僕の服をギュッとつかんでいるから怖かったのかも知らない。僕は真白の手を持って一緒に犬の顔の前に出した。

「待て…よし。」

お姉さんの合図を待って、小さなふわふわの犬はまた一口でたべた。

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