株式会社のおと / 毎週ショートショートnote

『パパ、これなあに？』
娘が開発中の眼鏡を見つけて聞いた。
「これをかけると言葉や音に色がついて見えるんだ。」
娘には大きいので手で支えてやる。
「窓の外を見てごらん。」
『灰色の新聞とか本が飛んでるよ。』
廃品回収のトラックだ。
『あと音符とオレンジ色の文字。帰宅しましょう、だって』
「帰る時間を教える放送だよ。夕焼け色だね。」
音楽をどう表現すべきか迷ったが色つきの音符にしてみた。
『パパの言葉も見えるよ。黄色！』
娘といるのが楽しい気持ちは黄色だ。
「もう！またポケットに名刺入れたまま洗濯機にワイシャツ入れたでしょ！」
妻が粉々の紙切れを持ってやってきた。
「ごめんごめん。昨日遅かったから。」
娘が私にそっと教えてくれる。
『ママの言葉、ピンク色だから怒ってないよ。』
テーブルに紙屑を置く妻の後ろ姿を眺める。
娘の口が『あ』の形で停止した。
「どうした？」
『ママから黒い煙が出てきた。』
…そういえば、昨夜の店で女の子から名刺を貰ったような…

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