針ほどの月明かりー28ー
とにかく遠くへ。
適当に走って、少し歩いて、走って。夕陽は落ちてもうすっかり暗くなっていた。お店も家も無い道に時々ぼわっとした電灯が浮かび僕たちの足元を照らしてくれる。電灯を頼りに歩いていると何かを蹴飛ばしてしまった。何かは暗闇でガサガサと枯れ葉の上を転がって止まる。石ほど硬くはない何か丸いもの。近づいて拾い上げる。大きな松ぼっくりだ。
「真白、松ぼっくりだよ。」
手に持たせると真白はじっと見て、ほかにも落ちていないかと道路を探し始めた。僕も暗い道路を見つめる。アスファルト、大きな葉、小さな石。暗闇には慣れていた。少し明るい黒から真っ黒までの形でそれが何なのか想像する。ギザギザした丸いもの…あった。最初のよりは小さな松ぼっくりを見つけた。松ぼっくりは一つ見つけると、点々と細い道の方に落ちているのが見えた。立ち止まって見比べる。時々だけど電灯のあるアスファルトの道。松ぼっくりが落ちている土の道。土の道は細く、電灯が無いから真っ暗だ。僕も真白もどっちの道を行くのかは少しも悩まなかった。絵本も冒険の本の主人公もアスファルトの道を歩いたりしない。僕たちは松ぼっくりを拾いながら土の道を歩き出した。
え!?サポートですか?いただけたなら家を建てたいです。