株式会社のおと② / 毎週ショートショートnote
株式会社のおとが発売した眼鏡が爆発的に売れた。言葉や音を色つきで表現して聴力の助けになるようにと開発された眼鏡だ。
「恋人の気持ちが分かると若い女性が購入しているようです。」
社員の報告にふむ、と社長は腕組みした。
「心無い言葉は表示されないからな。意図は違うが利益になるならいいだろう。」
と社長は満足そうだ。
だがすぐに国から生産中止するよう求められた。相手の冷めた気持ちが分かってしまい離婚率が上がり、勘違いの恋も無くなって少子化に拍車がかかったからだ。
「眼鏡のせいで冷めた訳でも無いだろうに。」
がっかりする社長だったが、生産中止を発表すると世界各国から問い合わせがきた。
「政治家が他国の本音を知るために秘密裏に自分にだけ売って欲しいそうです。どうします?」
ふむ、と考えるとまだレンズの無い眼鏡を手に取った。
「これでも適当に送っておけ。親身になったり本音で話す政治家などいやしないんだからバレやしないさ。」
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