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大増殖天使のキス / 毎週ショートショートnote

「やっぱりおかしい。」
娘の髪を結ぶ妻が振り向いた。
「何が?」
「その子だよ。まるで天使だ。」
ふふふ。妻が笑う。
「笑い事じゃない。ありえないよ。」
「ありえないって言われても、ねぇ?」
妻が金髪巻き毛で青い瞳の娘を撫でた。可愛い。だが明らかに人種が違う。
「やっぱり君、新婚旅行で買い物するって別行動した日に…」
キッと睨まれる。
「酷い。私のこと信じてないのね。」
「いや、だって、この見た目はー」
「容姿をどうこう言うのは良くないわ。」
そういう問題では無いんだ。
「僕の子がこんな天使のはず無いしー」
妻が僕の腕に娘を抱かせて耳元に顔を近づけた。可愛い。
「…黙っていてごめんなさい。本当は私が天使なの。私も小さい頃は金髪巻き毛だったのよ。」
妻が僕の右頬にキスをすると、娘も左頬にキスをした。どちらも可愛い。
「それなら君の昔の写真が見たいな。」
「ふふ。天使が写真なんて持ってないわ。」
僕は次も天使が出てくるだろうかと妻のお腹をそっと撫でた。


#毎週ショートショートnote
#大増殖天使のキス


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