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記憶冷凍 / 毎週ショートショートnote

『更新月ですので延長される場合はご連絡下さい。』
姉が持ってきた記憶冷凍倉庫からのハガキに、もう三年も経つのかと驚いた。
「なんだ、そのハガキ。」
父がひょいと顔を出した。
「お母さんの四十九日に思い出を冷凍保存したでしょ?」
父はきょとんとした顔をしていたが、少しして笑った。
「じゃあ3回忌に見て、また冷凍するか。」
「でも結構高いんだし、まだ冷凍しなくてもいいんじゃないかってー」
話している途中の姉に背を向け父は庭へ出て行った。
「ちょっと、お父さん。」
追いかける姉の手を引いて止める。
父が振り向いた。
「おや、お客さんか?」
「姉さんだよ。」
姉がぽかんと口を開けたまま固まった。
「今?昨日から泊まりに来てるのに?」
「父さん、最近ぼんやりしてること多いんだ。」
父は庭で花を摘みながら姉を見た。
「あぁ、お前か。すっぴんだからわからんな。」
姉が眉間に皺を寄せた。
「一言多いよ。けど、更新の連絡しておくね。」
庭は今年も母の好きな花が満開だ。


#毎週ショートショートnote
#記憶冷凍

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