活版印刷を紹介した絵本

デザインのアトリエ 活版印刷
ギャビー・バザン/著 みつじまちこ/訳
グラフィック社 2022年刊

新しい本を手に取ると、インクの香りをかぎたくなるが、活版印刷の古い本を手に取ると、息をとめる。それから、文字の凹凸にそっと触れたくなる。文字が並んだ枠を思い浮かべる。でも、そんな機会は減ってしまった。今となっては貴重な、活版印刷についての絵本。

まず、仕事用のエプロンを抱えたフランスの印刷工房の主人が現れる。この方が、活版印刷について解説してくれるというスタイルをとっている。

表紙は、活字の入った棚から活字を選ぶ様子が描かれている。裏表紙は実際に刷っている様子。バーコード部分にだけ黒いインクが使われている。

前見返しは青。液体の入った瓶。
裏見返しは赤。工具類。


 LE
 TYPOGRAPHE

文字が反対を向いている。

簡潔なデザインで、グーテンベルク以前/以降のむずかしい歴史も子どもにもわかりやすく説明している。活版印刷の父といわれるグーテンベルクは、ぶどうの圧搾機からヒントを得て、活版印刷機を発明したという。

工房には、アルファベットの活字が入った大きな棚がある。そこから1つづつ活字を取り出して、文字を配置していく。活字を組む職人のことをフランスではサンジュといい、ここで彼がサンジュであることがわかる。日本語の場合は、さらに多くの活字が必要だろうということに触れる。
ゲラという専用のケースに収めると文章になる。

印刷で使う活字も、機械の絵も、こんな風に使うのかな? 動くのかな? と想像力をかきたててくれる角度で描かれている。

赤、青、黄、そして灰色。数を絞って組み合わせた版画が洗練されている。この配色がすてきだ。

ところで、翻訳された文章を配置するのには細心の注意を払う必要があるけれども、この絵本は、改行や、文字数、文字のサイズがイラストに合わせて細かく調整されていることがわかる。
まるで、最初から日本語のためにイラストが描かれたように文字がきれいに並んでいるのが見事だと思う。


 

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