2023年刊ベスト絵本、更新中

 絵本を売るのがますます難しくなっていると思う。そんな時代に、比較的小さな規模であろう出版社が、翻訳絵本の出版に挑戦をしているのが目立った2023年だった(偉そうですみません)。2年目となった今回も、あくまでも個人的に自分のために選んだ絵本を紹介する。

第8位 ニコラ・テスラものがたり:”電気の魔術師とよばれた男”

アサデー・ウエスターガード/作 大山泉/訳 評論社/刊 2023/04/24

クロアチアで生まれたテスラは、アメリカにわたり、エジソンの会社で働くようになる。発明家としての伝記の要素も興味深かったけれども、私がいいなと思ったのは、テスラが鳩が大好きだったこと。いたるところに鳩が飛んでいて、絵本ならではの構図が素敵だった。


第7位 ちらかしさんとおかたしさん


ふしみみさを ポール・コックス/作 教育画劇/刊
2023/03/01

ちらかしさん、おかたしさん。自分のなかにはどちらも存在していると思う。どちらかの気持ちに少しづつ寄り添ってみたり、ちょっと離れてみたり。偏りすぎたらしんどいだろうけれど、ふたりは楽しく暮らしている。
いろんなふたりに届くといいなと思いながら、気持ちをゆらゆらしてリラックスして楽しんだ。


第6位 ティーカップ


レベッカ・ヤング/作 さくまゆみこ/訳
化学同人/刊 2023/09/01

あるところに、ふるさとでくらせなくなった男の子がいました。 

『ティーカップ』

ひんやりとした水面が広がる、ブルー系の表紙の絵本。
主人公は追われるように小舟に乗る。

・陸で何が起き、どうして舟に乗らなければならなかったか?
・イルカや、アホウドリが出てくるけれども、どのあたりの海か? どこの国か?
・髪の毛が少し伸びているのと、ティーカップの中身の”あるもの”の変化で、時間が経過していることがわかるけれども、どのくらい時間がかかっている?

具体的な情報は描かれていないが、今も続くあの戦争のことを思わずにいられない。

第5位 あおをはっけんした ちいさな ヤン
みならい えかきの おはなし


ジャン・リュック・アングルベール/作 はしづめちよこ/訳
イマジネイション・プラス 2023/09/30

私は青が多く使われている絵本の表紙を手に取ることが多い。今回も、表紙の色で本を手に取った。
偶然発見された、プルシャンブルーの物語。 
海の色、空の色。描きたくても、昔は青い絵の具が貴重だった、なかなか手に入らなかったということをたびたび耳にする。経年劣化で色あせてしまうこともあっただろう。
青い絵の具について、もっと知りたくなる絵本。

第4位 お日さま おそい みんなも おそい


フィリップ・C・ステッド 金原瑞人訳 ぷねうま舎 2023/06/23

大好きなステッドさんの新刊。
表紙のタイトル文字のサイズがとても大きく、字がこんなに大きくていいの? と思ったが、本を閉じると、おひさまが大事な存在なのが伝わり、これでいいのだ! と思う。ちなみにオリジナルの文字はどれくらいの大きさなのだろう?
今回は動物たちが主人公のお話で、登場する人間はたったの一人。ちょい役で、牧場主であろう、みつあみの女性(中年?)が出てくる。なかなか賑やかな仲間たちと、共にいい距離を保って素敵な時間を過ごしているのが伝わる。彼女がうらやましい。

第3位 その絵ときたら! 新しい絵本の時代をつくったコールデコット 


ミシェル・マーケル/文 バーバラ・マクリントック/絵 福本友美子訳 ほるぷ出版 2023/09/21

絵本の賞で有名な、コールデコットさんの物語。
見返しは、動いている瞬間を切り取るようないきいきとした絵。扉をめくると主人公と、コールデコットの絵本作品に出てくる動物たちがはみ出している。見開き2頁を使って、そのまま掲載されているのも効果的だ。
イラストは、『ないしょのおともだち』のバーバラ・マクリントックさん。今の絵本の中で、コールデコット本人のスケッチがたくさん登場し、昔の絵本とコラボしているのだ!
歴代の名作絵本を手掛けた”いたずらっ子たち”が出てくる頁も感動。

原題は、TOMFOOLERY! 大人になっても、子どものようにお茶目な人だったのだろう。 

第2位 デザインのアトリエ 石版印刷 


ギャビー・バザン みつじまちこ訳
グラフィック社 2023/09/08

すでに紹介済み。


第1位 ママたちが言った

アリシア・Ⅾ・ウィリアムズ/作 落合恵子/訳 
クレヨンハウス/刊 2023/12/9

我が子に『外に出るとき、フードを被らないように』と言わなければならないとしたら? パーカーのフードなんて、好きな時に被ればいいはずなのに。
それは、大きくなりつつある大切な子どもを、周りの偏見から守るための大切な話だった。子どもが成長するのを喜ぶと同時に、この世界に人種差別があるという事実を伝えなければならない家族の気持ちが描かれている。
原題をみると、The talk だった。The talk about なんとか、じゃなくて。
日本語の題名を考えるのも難しかったと思う。改めてため息が出る。



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