選抜選考感想①聖隷クリストファーと大垣日大の差について

選抜32校が決定しましたね。
選ばれた高校の皆さんおめでとうございます。

色々書きたいことはあるのですが、小分けにして気になった事から順にお話していきます。最初は誰しもが「サプライズ」ではなく「理不尽」だと思ったであろう選考について。

東海大会優勝の日大三島、東海大会準優勝の聖隷クリストファーの静岡勢W当選が基本路線かと思われた東海の選考。しかし聖隷クリストファーより1勝少ない大垣日大の逆転選考となりました。事前に記した予想記事では「日大三島に2敗している事」「地域性」「東海大会の失点がやや多い」点を聖隷クリストファーのマイナスとしていましたが、それでも東海準優勝を覆すには至らないと考えていただけに理解が難しいですね。

ここで2校の成績を振り返ります。

・大垣日大

〇6ー1 海津明誠
〇9ー2 大垣南
〇4ー1 大垣商
〇10ー0 郡上
〇9ー1 岐阜工
〇9ー2 各務原
〇1ー0 帝京可児
〇8ー2 県岐阜商
●0ー2 中京(岐阜1位)
ーー
〇7ー2 静岡(静岡3位)
〇3ー2 享栄(愛知1位)
●5ー10 日大三島(静岡1位)

・聖隷クリストファー

〇5ー1 小笠
〇10ー5 掛川東
〇12ー1 桐陽
〇2ー0 浜松工
〇4ー3 静岡市立
〇2ー1 浜松西
●2ー7 日大三島(静岡1位)
ーー
〇11ー4 津田学園(三重3位)
〇4ー3 中京(岐阜1位)
〇9ー8 至学館(愛知3位)
●3ー6 日大三島(静岡1位)

打力に関しては県大会/東海大会を通して同等ぐらいでしょうか。しかし投手力における評価の差が今回の逆転選考のポイントとなったようです。細かく数字を見ていくと、大垣日大は日大三島戦まで県大会から2失点以下に抑えており安定感が際立ちます。聖隷クリストファーは県大会で安定していた投手陣が東海大会4試合でやや安定感を欠いたという感じでしょうか。

東海高野連の選考経過の説明によると

「聖隷クリストファーは頭とハートを使う高校生らしい野球で、2回戦、準決勝で9回に見事な逆転劇を見せた。立派な戦いぶりでした。個人の力量に勝る大垣日大か、粘り強さの聖隷クリストファーかで賛否が分かれましたが、投打に勝る大垣日大を推薦校とします」

この時点でまず聖隷クリストファーの力量があまり評価されていない事が読み取れますね。相次ぐ逆転勝利をハートの強さ&冷静さと言葉を置き換えていますが、あくまでも精神的な事であって実力で大垣日大が勝るという言い分で締めくくっています。

「特に前評判の高かった静岡高校の吉田投手を打ち崩した連打は見事だった。また、2回戦で優勝候補の一角だった愛知1位・享栄高との戦いぶりはレベルが高く見応えがあった」

続きの説明は、大垣日大の評価を高めた試合についてですね。岐阜2位の組み合わせでは静岡/享栄とネームバリューのある高校との連戦となりましたが両試合を2失点に抑え込み、五島→山田の継投が上手く機能した点が高評価となりました。聖隷クリストファーも継投で東海3勝をあげたものの、やや失点が嵩んでしまった点との対比になりますね。

ここまでの説明で主に「投手力」と「対戦相手」に重きを置いた選考のように感じました。この2点で比較検討を重ねるならば大垣日大に分があるという言い分も分からなくは無いです。次にネットで声の大きい疑問を整理してみます。

①地域性不利で落とされたのでは?

この疑問が一番多いですね。ただ、東海地区は同県決勝で大差がついても比較的落とさないとされてきた地区です。その理由は過去の選考にあります。

1949年 静岡一(優勝)
1951年 静岡商(準優勝)
1952年 静岡城内(準優勝)
1955年 津(準優勝)
1967年 名古屋電工(準優勝)
2022年 聖隷クリストファー(準優勝)

以上の6校は東海大会決勝進出ながら落選した高校になります。今回は55年ぶりとかなり久々の事例であるだけに違和感を持つ人が多いと思います。同じく2枠である東北/北信越が2000年以降に準優勝校を落選させたケース(一関学院/福井商)を踏まえると、東海はそういった波乱が長らくないまま選考されてきました。なので今回は決勝3点差なら大丈夫と考えるのが自然です。

現代において準優勝校の評価を覆す根拠の1つでもある地域性。しかし、東海高野連は日大三島との地域性について否定しており純粋に実力比較で選出したと明言しています。聖隷クリストファーは初選出もかかっており、情も映りそうな選考でもありましたが実力以外の一切の要素を排除したといえますね。

②聖隷は岐阜1位の中京に勝利した

そもそも、聖隷クリストファーだって岐阜1位の中京に勝利しているではないか!という論調も多く聞かれます。確かに大垣日大は静岡/享栄の試合評価が高かった訳ですが、聖隷クリストファーは津田学園をコールド勝ち。大垣日大を県大会で下している中京に勝利している試合はもっと評価されていいと思います。この2試合と至学館戦の評価の言及が精神面のみだったのは個人的には残念ですね。

単純に失点数を比較するにしても聖隷クリストファーは1試合多く、その分の投手陣の疲弊を踏まえるとアンフェアな比較になってしまうと思うんですよね。更に聖隷クリストファーはエースの怪我という困難もあり選考でその点の加味も考えられましたが、先述したように「試合結果」以外の考慮が一切無かったですね。

つまり、ネームバリューのある高校に締まった試合で勝てた。同じく勝てたけど大味な試合が重なってしまった。相手の県順位とかは関係ないという感じで大垣日大と聖隷クリストファーの試合内容に差が生まれ、それが決定打になったという事になりますね。

③初出場がかかっていたのに…

これは東海に限った話では無いですが、伝統校であったり公立校/進学校だと学校要素も加味され選ばれやすくなるという事があります。初出場がかかっている高校も同様に甘くなるケースが過去に存在していました。普通の落選ならともかく「選抜安全圏」とされていた東海準優勝からの落選は心情的に重く感じます。しかし、先述したようにそういった心情を切り捨てて実力比較に注力したのが東海高野連のやり方だった為、それを否定するのも違うのかなと思います。

・結論

今回の選考は悪くいえばドライ。良くいえば実力主義の選考といえそうです。もちろん静岡2校をそのまま選出していたら…という考えも、そもそも聖隷クリストファーの方が実力があるという考えも分かります。しかし、全てにおいて大垣日大を上回っているという訳でなく「この相手にこういう試合ができる/できない」の差で大垣日大に分があった。という事だと解釈しています。

もちろん、選ばれた大垣日大には頑張って欲しいです。これまでの選抜の成績も良いですし、神宮優勝/選抜準優勝へ導いた阪口監督の手腕も期待大ですね。

一方で、聖隷クリストファーは選手権出場に向けて頑張って欲しいと思います。選抜出場の大垣日大、常連の静岡が再び壁となりますが、エースの復帰を機にまた一段と強いチームとなる事でしょう。

次回は他地区の選考について書きます。

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