2022年の選抜選考を考える②(近畿編)

前回の続きになりますので、もし良かったらそちらの方も見て頂けますと嬉しいです。

今回は近畿。大阪桐蔭が神宮大会を制し神宮枠を獲得。2017年以来となる一般枠7の大所帯となりますが、毎年の事ながらネームバリューのある高校同士での枠争いが多いですね。それでは各校の成績を確認しましょう。

近畿(近畿7/神宮枠にて1枠増)


大阪桐蔭(近畿大会優勝)1枠目
〇15ー0 千里
〇23ー0 摂津
〇10ー0 浪速
〇5ー4 東大阪大柏原
〇8ー1 大阪商大堺
〇8ー1 関大一
〇5ー3 履正社
〇7ー0 金光大阪
ーー
〇7ー0 塔南
〇5ー0 東洋大姫路
〇9ー1 天理
〇10ー1 和歌山東
ーー
〇8ー4 敦賀気比
〇9ー2 九州国際大附
〇11ー7 広陵

大阪桐蔭はこれまでの全国大会の中で神宮大会だけ優勝が無かったのですが見事に勝ち切りましたね。前世代が春夏と同じ近畿勢に2敗した事もあり心配された近畿大会も危なげなく優勝。もちろん選抜の優勝候補筆頭でしょう。但し、前世代での課題でもあった投手陣は1年エース前田の台頭があったとはいえ、経験豊富な川原/別所などの上級生が支えられるかどうかが大切になってきますね。

選抜優勝はこれまで3回。4回目の優勝となると中京大中京と並び全国2位。2012年が初優勝だった事を踏まえますと驚異的なペースです。

和歌山東(近畿大会準優勝)2枠目
〇15ー0 新宮
●0ー11 智辯和歌山
〇4ー3 粉河
〇18ー0 串本古座・有田中央
〇9ー7 近大新宮
〇7ー0 神島
〇5ー4 智辯和歌山
●2ー4 市立和歌山
ーー
〇3ー1 八幡商
〇3ー2 京都国際
〇8ー1 金光大阪
●1ー10 大阪桐蔭

これまでも県内では強豪で後一歩甲子園に届かなかった高校が大躍進。新人戦では智辯和歌山に大敗したものの二次予選でリベンジ。決勝で市立和歌山に敗れたものの近畿大会で3勝と、敗戦を機に成長し悲願の甲子園初出場となりました。

投手陣も麻田を軸に近畿大会での3勝は計4失点。どちらかといえば継投型で接戦を制すタイプの高校かなと見てます。県勢の選抜初出場初勝利は82年の大成以来となりますが果たして。

天理(近畿大会ベスト4)3~5枠目
〇21ー0 高取国際
〇11ー0 奈良高専
〇11ー1 奈良
●9ー13 高田商
〇7ー3 奈良北
ーー
〇3ー2 滋賀学園
〇5ー1 市立和歌山
●1ー8 大阪桐蔭

昨夏敗れた高田商に連敗。3位決定戦では智辯学園に善戦した奈良北に攻められるも何とか勝利。失点の多さが懸念材料でしたが、エース南澤の奮闘で2試合を完投勝利。準々決勝では好投手米田を攻略するなど、大舞台での勝負強さは健在ですね。

大阪桐蔭に2年連続コールド負けと課題はまだまだあるにせよ、昨年の選抜ベスト4からも分かるように天理は前評判を良い意味で裏切る事が多いんですよね。97年の選抜優勝も近畿大会ベスト4からの成長によるもの。四半世紀ぶりの優勝に向けてどのようなチームに仕上がるでしょうか。

金光大阪(近畿大会ベスト4)3~5枠目
〇4ー1 大阪電通大高
〇3ー1 高槻北
〇2ー1 箕面学園
〇9ー0 阪南大高
〇2ー1 大阪産大附
〇12ー4 星翔
●0ー7 大阪桐蔭
ーー
〇2ー0 高田商
〇7ー6 近江
●1ー8 和歌山東

府大会序盤から接戦続きの苦しい展開を勝ち抜き13年ぶりの秋の近畿大会進出。近畿大会準々決勝では近江から6点差を大逆転してのベスト4。大阪桐蔭/履正社以外の府内の高校の選抜出場は13年ぶりとなります(09年は金光大阪/PL学園が出場)。枠順的には地域性もあり天理より下、もしかすると京都国際も下回るかもしれません。

エース古川は近畿大会で2試合完投。高田商を完封し、近江に序盤の大量失点を許すも立ち直るなど能力の高さを見せましたね。反面、2番手以降の投手の出番がほぼ無く良くも悪くも古川の状態次第の選抜となりそうです。

ベスト8の面々(ここから3校選出)

京都国際(近畿大会ベスト8)4or5枠目
〇16ー0 東宇治
〇13ー4 西城陽
〇4ー2 京都共栄
〇12ー5 立命館宇治
〇4ー3 福知山成美
〇6ー5 塔南
ーー
〇3ー0 履正社
●2ー3 和歌山東

前世代では甲子園4勝(春夏初勝利)とブレイクしましたね。新チームも始動の遅れに対応しながらの戦いながら京都を制し、2021年は春夏秋と府内を無敗で駆け抜けました。岡田監督のラストゲームとなった履正社戦は森下が完封。和歌山東の継投に打線が力を出せず惜敗となりましたが、地域性/京都1位/経験面からも5枠目までには声がかかるでしょう。

やはり森下&平野の両輪の存在は大きく、点が取れない試合でも踏ん張り切れたのは大きいですね。大阪桐蔭に善戦した履正社を完封勝ちした点からも力量的には今世代も全国上位にあると思います。

東洋大姫路(近畿大会ベスト8)5~7枠目
〇10ー0 網干
〇3ー2 飾磨工
〇5ー3 夢野台
〇1ー0 報徳学園
〇2ー0 加古川西
●1ー4 社
〇3ー2 明石商
ーー
〇2ー0 智辯学園
●0ー5 大阪桐蔭

久々にして藤田監督の最後の采配を甲子園で見ることが出来そうです。県大会では得点力に欠けるもエース森がフル回転。報徳学園/明石商の打者に仕事をさせず、近畿大会でも智辯学園を完封するなど兵庫らしくディフェンス面に長けるチームとなりました。タイプ的には金光大阪と似ていますね。

しかし、準々決勝のスコアは5点差完封負けと完敗に近く兵庫3位なのも合わさって評価がどうなるかというのは難しいところです。実際、準々決勝時点で東洋大姫路の評価はベスト8で1番下でもおかしくないのですが、大阪桐蔭が圧勝で神宮大会まで制した事により状況が好転。「5点差に留めた」試合内容が逆にプラスされ、地域性の観点からも7枠までにはほぼ確実に入るのではないでしょうか(筆者は6枠目予想)。

市立和歌山(近畿大会ベスト8)6or7枠目
〇7ー0 笠田
〇6ー2 和歌山高専
〇4ー3 日高中津
〇7ー0 田辺
●2ー3 県立和歌山
〇3ー0 桐蔭
〇12ー2 県立和歌山
〇4ー2 和歌山東
ーー
〇2ー1 神戸学院大附
●1ー5 天理

ドラ1バッテリーの抜けた新チームでも、経験十分のエース米田を軸に高い投手力。県大会では全試合3失点以内に留め、近畿大会でも同様の戦いでベスト8。前世代から課題の打線は試行錯誤が続いていますね。天理戦も危うく完封されかけましたが意地の1点で風向きが変わるでしょうか。

ベスト8勢の中では京都国際と同じく府県1位。更にその京都国際を破り近畿大会準優勝を果たした和歌山東に県大会で勝利している点は市立和歌山の強みです。その反面、ベスト8勢の中では唯一地域性で不利(ベスト4の4校の中で兵庫/京都/滋賀の高校が無い)。つまり和歌山東の健闘で「和歌山勢のレベルが高いから和歌山から2校出したい」と考えるか、地域性の観点から「2府4県から満遍なく選出したい」と考えるか。この点は高野連のさじ加減ですね。詳しくは後ほど記載します。

近江(近畿大会ベスト8)6or7枠目
〇8ー2 彦根総合
〇5ー3 近江兄弟社
〇3ー2 伊吹
●5ー6 滋賀学園
〇9ー2 立命館守山
ーー
〇11ー10 社
●6ー7 金光大阪

前世代では大阪桐蔭に勝利し、県勢としては20年ぶりの選手権ベスト4。その中心選手で投打の要、山田が新チームに残るも怪我により打者専念となりました。その影響もあり、近畿大会ベスト8の8校の中で唯一の完封勝ち無し。反面、社戦の9回2アウトからの逆転劇/金光大阪のエース古川から序盤で6点を先取するなど打力のアピールが目立ちましたね。

エース山田の復調が現時点でどの程度なのか。選抜の出場可否に関わらず、この点は新チームにおける重要事項なので少しでも早い回復を待ちたいところです。

以上が8校の紹介です。

次に近畿7枠もあれば初戦敗退校から選出される可能性は?という点についても触れておきます。

初戦敗退校の選出可能性


結論としては「府県1位」かつ「地域性」で有利な高校は僅かながら可能性は残されていると考えていいと思います。2000年以降の選考では智辯和歌山、近大附、県立和歌山が上記の条件で選出されています。逆に言えばどちらかの要素が欠けている高校は厳しいと考えるべきですね。

まず府県1位の初戦敗退校は智辯学園、社、八幡商の3校になります。智辯学園は実績十分とはいえ、天理が選抜確実視される中で奈良2校目の選択肢は無いでしょう。社は県大会で東洋大姫路を破っているため、地域性の観点でも東洋大姫路が落選すればという前提なら…と考えることもできます。しかし近江に11失点は明らかなマイナス。その近江も次の試合で敗れており、試合内容で可能性が潰えたように思います。

残るは八幡商。こちらも地域性で近江が落選すればという前提にはなるものの、初戦の試合内容は和歌山東に善戦。その和歌山東が準優勝した上に近江と比較して投手力の高さを示せたのは大きいと思います。よって、初戦敗退校からの選出が仮にあるとするならば筆者は八幡商を推します。伝統校という付加価値もありますね。

近畿の5~7枠目について

先程、初戦敗退校について書きましたがそこからの選出は無い事を前提にお話していきます。

まず筆者は近畿大会ベスト8の中で京都国際と東洋大姫路は選出確実とみています。

・京都国際
前チームの左右エースが健在
敗れた試合内容は惜敗/地域性&県順位◎
大阪桐蔭に惜敗した履正社に完封勝ち

・東洋大姫路
県大会で報徳学園/明石商など実力校に勝利
大阪桐蔭にコールド回避した数少ない高校
地域性+久々の甲子園というのは大きい

理由はこんな感じですね。特に京都国際は選出されるにあたり、相当な理由が揃っていますので大丈夫でしょう。東洋大姫路は人によって意見の分かれる所だと思います。準々決勝の試合内容が1番悪いのもそうですが、エース森に頼りがち/打力の無さもマイナスとなりますね。なので地域性と敗れた相手が大阪桐蔭である事の考慮がどこまでプラスとなるのかが焦点です。

その為、東洋大姫路はどちらかといえば外的要因のプラスが多く実力の物差しで計ると微妙…という感じですね。ただ、近畿の選考は常に地域性が重んじられ特に大阪兵庫から数多く選出されてきた事を考えると外れる事はないと思います。

そうなると、近江か市立和歌山か。
最後にこの2校の比較をしてみましょう。

・市立和歌山
エース米田は前年の選抜経験があり万全
県決勝で勝利した和歌山東は近畿準優勝
近畿は公立校に甘い?
前世代からの打力不足が露呈
地域性のマイナスがあまりにも重い

・近江
近畿大会2試合17得点の打棒は魅力
反面、2試合17失点は明らかなマイナス
3年連続滋賀勢は選抜未出場で今年こそ?
エース山田の未登板をどう評価するか
選抜は投手力重視で打力のみでは不利か

まずは両校のエースの差について。市立和歌山はエース米田が2年前の近畿大会から選抜へと小園と強力二枚看板を形成。新チームでも安定した投球で援護の少ない試合をカバーしてきました。敗れた試合では天理に5失点しましたが、終盤持ち直した事でギリギリ一方的な試合にしなかった点は大きいですね。

対する近江のエース山田も岩佐との強力二枚看板で選手権ベスト4。こちらは打力にも長け二刀流の活躍が見込めるこの世代のスター候補だと思います。秋以降は外野専念で怪我の影響を感じさせる守備もあり、不安の残る中でどこまで怪我から回復し投球を戻せるのか。それとは別に近畿大会で結果を残せなかった他投手の成長にも期待ですね。

両投手とも経験十分ですが「秋に確たる結果を残したのは米田」であり、山田に関しては「復調すれば選抜で選手権同様の結果を残せるだろう」という期待値で評価を下すしかないという状態にあります。

もちろん選考基準は秋の県大会・近畿大会であり、期待値で評価を下すのはアンフェアであると私は考えています。せめて山田以外の投手に安定感があれば山田頼りでなくても大丈夫という考慮もあったと思いますが、近畿大会2試合での17失点があまりにも重いですね。

では、近江有利になる要素があるのかというと地域性になります。去年みたく、ベスト8の4校が地域性で同等の関係にあれば純粋な実力比較になると思います。しかし今年のベスト8は市立和歌山のみ地域性において不利な状況で、更に滋賀勢の選抜出場が3年連続でない事も重なり近江になるのではという声も多いと思います。また近畿の選出候補を見ると打力不足のチームがやや多い傾向にあるので、差別化を図る意味でも近江の打力は魅力的では無いでしょうか。

更に準々決勝の点差で比較するなら、近江が1点差なのに対して市立和歌山は4点差。大逆転負けとはいえ、ほぼ無抵抗に終わった市立和歌山と序盤の猛攻で魅せた近江。ただ「どちらが良い負け方か」というのは人によって変わってくると思います。

色々と書いてきましたが、私は市立和歌山が有利かなと見ています。「山田投手」としての評価がなされないと考え、確実に結果の見込めるエース米田が健在であるという点の違い。県大会を優勝した事で県順位のアドバンテージも大きいですね。後は近畿大会での滋賀勢/和歌山勢の比較で和歌山の方がレベルが高いと見込まれ、地域性を加味しても近江を上回るのではという予想です。

以上になります。どちらが選出されても楽しみな2校ですね。今年の近畿勢も手強いですが優勝校は出るでしょうか。

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