2022年の選抜選考を考える⑥(21世紀枠)

このシリーズは今日が最終回です。
次回からは選抜に関連する他の話をしていきたいと思います。そちらの方も見て頂けますと嬉しいです。

さて、最後の予想は21世紀枠になります。地区推薦されている9校の成績や学校の特徴を書いていきますが、21世紀枠は表に出回らない諸々の諸事情の加味が重視されていたりするので難しいところですね。

札幌国際情報(北海道ベスト4)
〇10ー2 千歳
〇10ー3 札幌山の手
〇7ー3 札幌月寒
〇13ー1 遠軽
〇15ー3 釧路江南
〇18ー0 士別翔雲
●3ー4 旭川実

ここ数年の県内成績は強豪校とも引けを取らないものの、甲子園には1歩届かず。今大会も夏に続く道大会ベスト4止まりと自力での選出が遠い中で初めての推薦となりました。札幌市にあるので、北海道特有の環境的な困難要素とは無縁なものの、進学校として道内の国公立大に多数の進学者を輩出しています。

近年に選出された帯広農は農業系の伝統校という特色がありましたね。進学校を特色とする学校の推薦は北海道では珍しく、また1995年創立と歴史も浅い点も含めどのような評価となるのか注目したいです。

只見(福島ベスト8)
●6ー7 会津学鳳
〇2ー1 白河旭
〇7ー6 相馬東
〇7ー5 会津学鳳
●0ー6 いわき光洋

新チームは支部予選で初戦敗退からスタートしたものの、本選で接戦の強さを見せ3連勝。上位常連のいわき光洋に完敗したものの、400人未満の小規模の学校にあって県ベスト8は目を見張る成績です。過疎地の学校という事もあり、野球部員はほぼ学校周辺に在住というまさに地元色の強いチームとなっています。

このような環境下/学校の為、冬季の練習環境も厳しい中で工夫を凝らした練習でカバー。これまで目立った成績はありませんが、福島といえばこれまで3回の地区推薦を全て通してきた程プレゼンが得意な県。特色を前面に押し出せるでしょうか。

丹生(福井4位)
〇18ー8 高志
〇5ー3 鯖江
〇2ー1 金津
●0ー14 福井工大福井
●3ー8 敦賀気比

広島の玉村在籍時に注目を集めた同校は、推薦常連の金津を破ってのベスト4。福井工大福井には夏に続く大敗に終わったものの、3位決定戦で北信越王者となった敦賀気比に抵抗。初回から3点を取り見せ場を作りました。学校の規模も小さく、日本海側特有の豪雪地帯という不利な環境を克服しての好成績です。

福井はこれまで21世紀枠の選出が無く、金津/敦賀は北信越大会進出ながら地区推薦止まりに終わっています。県勢初選出となるでしょうか。

太田(群馬ベスト8)
〇12ー2 館林商工
〇10ー3 富岡
〇4ー1 桐生工
●2ー7 健大高崎

2021年は飛躍の年となり、春夏連続でベスト4。特に春は前橋育英をコールドで下し話題となりました。新チームとなる秋は同じ立ち位置まで届かなかったもののベスト8。敗れた健大高崎にも中盤まで同点という展開を作りました。学校としては県内有数の進学校であり伝統校。文武両道の実践が高く評価されました。

群馬は近年にも2002年に前橋/2012年に高崎と県内有数の進学校が一般枠で選出されています。太田もその流れに続きたいところですね。

相可(三重ベスト8)
〇7ー2 飯南
●1ー4 松阪
〇3ー2 連合チーム
〇12ー2 飯南
〇8ー6 松阪
〇8ー3 木本
〇11ー4 高田
●1ー9 津田学園

予選で1度敗れたものの、そこから5連勝で本選の準々決勝へ。津田学園にコールド負けと戦績的には平凡ながら、学校としての特色で高評価を得ました。近年、高校野球で多い農業系とは少し異ななり、牧畜の管理/レストランの経営/環境保全活動など多岐に渡るカリキュラムが魅力の学校となっています。

三重は地区推薦から7連敗中とプレゼンに難アリ?の県ですが、特色において他の地区推薦校と被らない点は有利に働くのではと思います。83年を最後に甲子園出場3回がどう響くでしょうか。

伊吹(滋賀ベスト8)
〇11ー0 国際情報
〇11ー1 大津
〇11ー0 石部
●2ー3 近江

県3勝はいずれもコールド勝ち。準々決勝で近江に敗れたものの、近畿大会2試合17得点の強力打線を3失点に抑えるなど投手力にも長けています。学校は琵琶湖の東に位置し、小規模/豪雪のハンデを抱えながらの好成績となりました。選抜は3年連続選出0校の滋賀勢ですが、近江の一般枠選出の可能性も含めて記録ストップとなるか注目です。

滋賀の21世紀枠といえば膳所/彦根東といった大学球界の貢献著しい進学校のイメージですが、伊吹はタイプの異なる学校なので果たしてプレゼンは上手くいくでしょうか。

倉吉総合産(鳥取2位/中国初戦敗退)
〇4ー0 岩美
〇3ー2 鳥取城北
〇8ー0 鳥取東
●5ー16 鳥取商
ーー
●0ー6 広陵

同じ山陰では島根の寡占状態が続いていた中国推薦で、鳥取の有力候補が登場。2003年に統合して出来た同校は2007年夏準優勝と早々に結果を残し、ここ数年は停滞気味ながら昨秋準優勝と久々の上位進出となりました。特に鳥取城北への勝利が目を引きますね。鳥取商の16失点で心配された中国大会も、神宮準優勝の広陵にギリギリコールド阻止。地区出場は他候補で大分舞鶴しかないので成績は上位にきますね。

学校としては、統合前の倉吉工/倉吉産業を流れを汲み商工系の学科を配置。専門のカリキュラムも多く、学びの幅の広さが魅力の学校となっています。

高松一(香川ベスト8)
〇3ー1 丸亀城西
〇3ー1 小豆島中央
●3ー13 大手前高松

全候補で勝数は最小の2。四国の他候補もベスト8が上限なため、学校の内容面で勝り選出されましたが準々決勝のコールド負けを含め試合内容は少し劣りますね。同校は過去にも四国推薦の経験があり、その時は四国大会進出。当時は同じく県内随一の進学校である高松が近年に選出された事もあり落選しましたが、今回はどうなるでしょうか。

学校としては太田に近く伝統のある進学校。甲子園出場経験も4度ありいずれも初戦勝利。51年の選手権ベスト4を含む春夏8勝と、今回の候補の中で実績は抜けています。

大分舞鶴(大分2位/九州初戦敗退)
〇10ー1 別府翔青
〇3ー1 柳ヶ浦
〇6ー5 大分商
〇16ー3 大分西
●9ー10 明豊
ーー
●2ー3 大島

昨夏に続き秋も準優勝。決勝では明豊に2回の時点で8失点という状況から1点差まで詰め寄るなど打力で肉薄。九州大会では大島との雨天再試合に敗れたものの今度は投手力で九州準優勝校に肉薄。一過性の成績ではなく、安定して成績を残してきているのも大きいですね。実力面ではNo.1候補でしょうか。

学校は進学校ですが、太田/高松一と成績で差をつけており文武両道の面で頭1つ抜けています。他のスポーツでも有名な同校は学校の知名度も高いですね。

以上9校の紹介でした。今年の候補の特徴としましては、まず戦績の伸び悩みを感じますね。去年が豊作過ぎたのもあるかと思います(四国/東海推薦以外は地区出場校)。それを踏まえても地区出場校が倉吉総合産/大分舞鶴の2校のみというのは過去の推薦から見ても少ないですね。

そうなるとより一層学校内容や当日のプレゼンが問われてくると思うのですが、コロナ禍で校外活動もままならない状況なだけに判断材料が難しいです。そこで過去の選出の観点から予想してみたいと思います。

①過去の9県の地区推薦校の最終選出率
北海道(4/21)…鵡川 女満別 遠軽 帯広農
福島(3/4)…安積 いわき海星 磐城
群馬(0/3)※高崎は一般枠選出
福井(0/4)
三重(0/7)※名張桔梗丘は推薦辞退
滋賀(2/5)…彦根東 膳所
鳥取(0/4)
香川(2/5)…高松 小豆島
大分(1/1)…大分上野丘

今回の地区推薦された9県は、あまり21世紀枠との縁がない県が多いですね。群馬/福井/三重/鳥取は未選出で、1回選出されている大分も地区推薦はその1回のみとなっています。特に三重は東海の中で唯一当選が無い中での7連敗ですね。

こういった選出の偏りは、高野連が選出校を選ぶ上手さ/候補となる校の県内での勝ち進みやすさ/プレゼンの巧みさに反映されていると個人的には感じます。例えば都道府県によっては私立校を推薦し続けたり、前回の甲子園出場からそこまで年数が経っていない校を推薦してみたり。そもそもこの枠に頼らない高野連も存在していますので、そういった県では地区推薦の数さえも少ないです。

また、都道府県の激戦区の度合いによって必然的に勝ち進みにくい都道府県は成績面で不利になりがちです。大阪や愛知/神奈川や東京など5勝しないとベスト8に進めない高校数だったり、それ以前に予選がある事により勝ち進む毎に投手陣の疲弊でやり繰りが難しくなる都道府県もあります。こういった格差を完全に埋め切るのは難しいですし、実際に東北地区の選出が多いのは歴代の東北推薦校が軒並み東北大会に進出している事がプラスとなっています。

更に激戦区で好成績だったとしてもプレゼンの壁があります。去年の候補校の中で栃木の石橋は2回目の関東推薦でしたが、どちらも21世紀枠の補欠にもかからず落選となりました。戦前の伝統校かつ進学校。県内で2校しか枠の無い関東大会に出場するなど好成績と、外部から見ると一見当選しそうな要素が揃っており世間の予想でも当選の声が大きかっただけに落選は驚きを呼びました。

つまり、例え21世紀枠「らしい」学校であったとしても当日のプレゼン次第では思わぬ低評価となるケースもあればその逆もあります。そしてそういったプレゼンの上手さは、先述した①過去選出率からもある程度見えてきます。福島や滋賀はその点に長けているのではないでしょうか。

②伝統校や進学校はやはり有利か

21世紀枠といえば、やはり大昔に輝かしい成績を残した学校。全国でも有数の進学校などが目立ちますよね。過去には桐蔭や洲本、松山東や向陽など甲子園優勝校の選出例もあります。この4校に関しては進学校としての側面もありますし、選出に相応しい学校ですね。

今回の候補の中では、伝統校&進学校の太田がこの点に近い存在です。甲子園出場は無いものの、昨年の3大会はいずれもベスト8以上。強豪私学が集う県内で高位安定となりました。大分舞鶴は戦後の学校の為、伝統面はやや薄いですが秋成績は候補の中でNo.1。また、太田同様に進学校とこの2校は過去の選出校と比較しても「それらしい」学校といえそうです。

③地域的な環境不利も大切

②と並んで過去の選出で多いのが、環境不利を工夫して乗り越え好成績というパターンです。そもそも今はコロナ禍でどの都道府県も環境不利という感じはしますが、基本的には豪雪地帯/過疎地などに位置する小規模校が当てはまることが多いです。今回の候補の中では只見が最たる例ですね。地元密着型の高校は高評価を得られやすいです。

一方で、そういった点で有利だった北海道の候補の中では珍しく、札幌国際情報は札幌市にあり比較的恵まれた環境。進学校で好成績のプラス要素があるにせよ、環境不利な点に欠けるのでどういった評価となるのか興味深いです。

④他校にあまりない学校の特色は武器

①~③で述べてきた「進学校」であったり「環境不利」という要素は他校と被る事も多く、その校の絶対的な強みとは言い難いです。そうなると「学科」の違いがプレゼンで推しやすくなってきます。

相可は地元に根付いたレストランの経営が学校としての顔の一つ。そういった活動がテレビでも取り上げられるなど、多岐に渡る活動が評価されています。大なり小なり地域活動はどこもやっているとは思いますが、相可は学校が一体となり長らく地域に貢献してきたという点が強みですね。

ここまで色々と21世紀枠に関連する事を述べてきましたが、当日のプレゼンもあるため現時点で確実に当選する!という学校はもちろんありません。なので総合的に勘案して、私は只見/倉吉総合産/太田で予想したいと思います。

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