ケア日記ー一杯のビール 8月1日
向こうっ気の強い母との二人暮らしのなかで、ケアについて考えるヒマもなかったこの数年 母の強い「ケア」拒否にあい、ケアフリーズしてからは、ゆっくり考えるヒマもなくただ脱ケアしてきただけの日々 それでもさすがに疲れてしまったと気づいた今日この頃
猛暑のせいだけでなく、一休みさせてほしいと母に話し、今日は母が他所に出かけて、何年振りかの自宅一人時間を過ごしています 締切が近い原稿の校正も、端折らないでゆっくり眺めていられます いままで原稿に手抜きしてきたつもりはないけれど、やはり母の用事を優先して、原稿に割く時間はギリギリ最小限でやってきたなあとしみじみします
お腹すいても台所に立って料理するでもなく、好きなイタリアンコーヒーをいれ、お菓子をつまむくらいでじゅうぶん 読みさしていた漱石の吾輩は猫であるの最後のあたりをゆっくり読んだり、知人に借りている郷土史の本をめくってみたり あてもなくぶらぶら散歩しているような感じ 締切が脳裏をかすめても、この感じはとってもとっても貴重で贅沢 あー久しぶりにやってきた幸せ
そうそう、母が帰ってくる前にケアについても考えておきたいと思っているのです
ケアの自分史を振り返ってみると、この夏、4回目の命日を迎えた父の在宅ケアから始まったのでした
父のケアをしなくてはならなくなるまで、ケアの知識と経験はほぼ皆無でした どうしていいかわからないわたしに、看護師さんたちが親切に手取り足取り教えてくれました 父が亡くなるころにはベテラン看護師さんからあなた看護師三年目くらいよ、度胸いいわねと妙な褒め方でいわれたものでした
そう、わたしの在宅ケアは家事の延長ではなく、バキバキのベテラン看護師さん仕込み、父のためにと日々必死に学んだ結果、ほとんど看護に近いものになっていたのでした だからこそ、父のケアはなんとかうまくいった(と自分では思っている)ものの、母との関係では、母がもうイヤ!とうざったくなるようなことがいろいろあったのだと思い至りました
そうですよね こういうケアの場合、ケアされる側とケアする側が交代することはまずないのですから、ケアする側はどこまでいってもケアする側で、ケアされる側はどこまでいってもケアされる側で、この関係は固定してしまうのです 喩えていえば、病院でベッドに寝てる人とベッドサイドに立つ人は入れ替わることはない、という話ですものね
元気になって体力も気力も充実した母にしてみれば、こんな固まった関係は御免被りたい、ケアなんてまっぴら御免という気持ちがいつからかずっとあったのでしょう ケアのひとつひとつのサポートが不要で返上したいというよりも、ケアし、ケアされる、一方向に固定した関係が邪魔で返上したい、ということだったのでしょう
細々と気づいて母のためになにかやればやるほど母の不満顔をみるばかりになる、母が食事をいやがりため息をついて食卓につく、好きそうな旬のものをつくってもいやだいやだといいながら食事をとりはじめる、全部そういう気持ちだったのかとはたと気づきました
三度三度の食事だっておやつだって、それがケアの一部でしかないなら、母はそんなものもういりません願い下げよとなりますよね
そういえば、ときおり夕食の前に、スモークチーズとかピーナツとか炙ったスルメイカとか、ちょっとおつまみを出してビールでも一杯注ぐと、あらおいしいわねっとたちまちニコニコしてご機嫌でした こんなときは、わたしも知らず知らずのうちに「せねばならない」「こうすべき」「ああすべき」に満ち満ちてしまったケアの世界から解放されたひとときを過ごしていたのです 実は単純でわかりやすい母娘なんです
そうですよね だからいまの母とわたしのあいだでは、ケアはフリーズしたままで、脱ケアのままでいいのです
とりあえずの答えがほしくて脱ケアの話ばかり続けて3度もnoteに書いてみました 脱ケア三部作、ちっともおもしろくないけれど、書いて吐き出すことで言葉にならない呻きから解き放たれ、拙くもとりあえずの答えがみつかっただけで上出来としましょう
凹むことを知らない勝ち気な母のこと、わたしはだいたい母親に完敗し続けですからまた途方に暮れてたたずむ日がやってくるでしょう でもいまはこの処方箋できっとしばらくはなんとかなると自分に言い聞かせています
グッドアイデアではないけれど、いまは勘でコレなんだと思います ケアから解放されたいのは母だけでなく、わたしの奥底の気持ちかもしれません 書くうちに気づいてしまいました 自分を失いかねないケアをフリーズしたいそれでどこに向かうのかはわかりません ただ脱ケアの先で息をし、なにか見つけたいのです
相変わらずおもしろくないわたしのnoteにお付き合いくださり、ありがとうございました☆
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