〝履く〟というニュアンス

書かさる、押ささらない、ザンギ、うるかす・・・

全国共通だと思っていた言い回しが、実は方言だったということを知ったのは、社会人になってしばらく経ってからのことだ。
中でも「手袋を履く」という言い方に驚かれたことは強く印象に残っている。

「脚じゃなくて手なんだから“履く”は変でしょ」

・・・確かに。

物心ついた頃から、ずっと当たり前に使っていたから、日本語としての不自然さに全く気がついていなかった。

・・・じゃあ、何ていうの?

「手袋を“付ける”とか“はめる”かなぁ」

付ける・・・?
“付ける”ものの代表といえば、飾りとか、顔につけるクリームとか。
なんとなく、止まっているものに付けるイメージ。
付けられる方は、ただただ受身な感じがして、手袋の場合とはちょっと違う。

“はめる”のイメージはパズルのピース。
凹んだ部分にはめ込むイメージで、これもまた手袋の場合とはちょっと違う。
そして、やっぱり一方的な感じがして、しっくりこない。

それに比べて靴下を履く時って、足に靴下を被せているようでもあるし、靴下に足を入れているようでもあって、双方の共同作業のような感じがする。

手袋を身に付ける時の感覚もまさに同じ。
だから、“履く”がいちばん、しっくりとくるのかなぁ・・・

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