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今ならわかる話

ずいぶん前に、ある絵画展を見に行った時のこと。
家族そろって芸術鑑賞をするような家庭では無かったのになぜそこに行くことになったのか全く思い出せないけれど、ひとつだけはっきりと覚えていることがある。

美術館で壁にかけられている絵を見ていると、その場所でお仕事をしていた中年の女性が近づいてきて言った。
「どれか好きな絵があったら、それは自分とその絵を描いた人が似ている、ということなんですよ。」

子供だった私は、その言葉を「性格が似ている」という意味に受け取った気もするが、ふぅん、そうなのかな、と思った程度で、特にピンときたわけでもなかった。
なのに、なぜか私はこの話をずっと忘れずにいて、折に触れて思い出すのだった。

世の中には、絵だけではなく、小説や、映画や、音楽など、いろいろな〝作品〟があるけれど、いくつかの作品にふれるうちに、その作品そのものを通り越して「この人の作品、好きだなぁ」と思うことがある。
そんな時、美術館で聞いたあの話が頭をよぎっても、それについて深く考えることはしてこなかった。

けれど最近になって、自分の好きな音楽と、その音楽を作った人について考えていた時、そうか!似ているって、こういう意味だったのか!と、わかった。

それはつまり、どういう景色が好きだとか、どういう色合いやタッチが好きだとか、どういうストーリーや人物に魅力を感じるかとか、どんな音の響きや曲調が好きかというような、「感性が似ている」っていうことなんだと。

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