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猫・ペット

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猫を飼っています。猫(保護猫)との暮らしやペットの飼育について書いたテキストをこちらにまとめています。
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ペットの「もしも」に備えていますか?

「夏のボーナスが飛んで行っちゃった」 と同僚が言う。 なにを買ったのと訊いたら、飼っているビーグルが椎間板ヘルニアの手術をしたのだという。 「だってMRIが九万なんだよ。検査だけで十五万、それに手術と入院でしょ……。明細見てめまいがしたわ」 すると、 「うちのトイプーが骨折したときもやっぱりそのくらいかかったなあ」 と声があがった。 それを聞いて、「動物の治療費ってそんなに高いんですか!」と若い同僚。彼女は生まれてこのかたペットを飼ったことがないそうだ。 そうか、あなたは知ら

「野良猫に餌をやらないで」にもやもやする理由

植え込みの中で倒れている子猫を見つけ、病院に連れて行ったという話を同僚から一週間ほど前に聞いていた。彼女とシフトがすれ違い、その後どうなったんだろうと気になっていたのだが、昨日ようやく続報が届いた。 低血糖症との診断で入院となったのであるが、ブドウ糖の静脈注射で意識が回復。いまは同僚の家で療養しているそうだ。 病院に迎えに行ったとき、ショックなことがいくつもあったと彼女が言う。 まず、生後三か月くらいかなと思っていたら一歳を過ぎた成猫だったこと。 「栄養失調で大きくなれんか

カバンの中の「そんなもの」

以前から不思議に思っていた。彼女とは夜勤入りのときにロッカールームでよく会うのだが、いつも「いったい何泊するの?」と訊きたくなるくらい大荷物なのだ。 その日も私のトートバッグの三倍はあるスポーツバッグをかついで病棟に上がろうとしていたので、思わず「すごい量だね……」と声をかけたら、「よく言われるの」と彼女。 そしてその中身を教えてくれたのだけれど、耳栓、アイマッサージャー、むくみを解消する足裏シート、ブランケット、スウェットの上下、ペットボトル加湿器……と休憩時間のためのアイ

ペットの幸せってなんだろう。

同僚のスマホの待ち受け画像は家で飼っているトイプードルだ。 ペットショップのショーケースに、でかでかと「SALE!」と書かれた紙が貼られている犬がいた。ほかの子よりひと回り体が大きい。元の値段の半分にまでなっているのを見て、彼女は「これでも買い手がつかなかったらどうなるんだろう」ととても気になり、セール最終日にもう一度店に行ってみた。「売約済」の札がついていることを願いながら……。 それから八年。その犬は「あんたの留守中、誰が面倒をみるの」と渋っていた彼女の母親に溺愛されてい

金魚すくいの哀れ

仕事の行き帰りに通りがかるマンションには小さな池がある。直径五、六メートルの人工の水場だ。 昨日もいつものようにその横を通り過ぎようとしたら、年配の男性が柵から身を乗り出すようにして水面を眺めているのに気がついた。なにを見ているんだろうと目をやると、小さな赤い魚がいっぱい。 「あら、金魚がいるんですね」 思わず話しかけたら、男性は「そうなんですよ……」と困った顔をした。私はスイスイと泳ぐ姿がかわいいなと思ったのだが、男性はその状況を好ましく思っていないようだった。 「もともと

定年退職したら、したいこと

四、五十代となると、定年退職後の生活を想像することがあるという人は少なくない。昼の休憩室で、同年代の同僚と「定年になったら、なにがしたいか」というテーマで盛り上がった。 「老後は好きなだけゲームをする。認知症予防にもなるし」と誰かが言ったら、「その頃にはいまみたいに指の自由は利かないけどね」「動体視力が衰えて、画面を目で追えないんじゃない」とすかさずツッコミが入る。 老年看護学の授業で高齢者体験スーツを着たことがある。両親学級でパパがやる妊婦体験の高齢者版だ。厚手のグローブ

ペットの不幸と喪中はがき

同僚の話である。 毎年かならず元日に年賀状をくれる知人から今年は届かず、体調でも悪いんだろうかと気にしていたら、しばらくしてはがきが届いた。 十二月に長く飼っていた犬を亡くし、新年のあいさつを控えていたことを知らせる内容だった。会ったこともない犬だったが、はがきの写真を見たら知人の犬への愛情が偲ばれ、うるっときたそうだ。 ところで、同僚は「虹の橋へ旅立つ」という表現を今回初めて知ったという。 「○月○日、愛犬△△が虹の橋へ旅立ちました」 という文面を見て、虹の橋ってなんだろ

クラウドファンディングと違和感

同僚の話である。 彼女は一年ほど前に、クラウドファンディングで「訪問看護ステーションを開設したい」というプロジェクトに出資した。しかし、お礼のメッセージが届いてから活動報告があったのは数回で、春以降はなしのつぶてだという。 計画では六月開設となっていた。遅れているにしても、連絡がないのはどういうことなんだろう。 「準備からオープンまで逐一ブログで報告していくっていう話だったの。私も将来的に訪看を立ち上げたいと思ってるから、勉強になると思って支援したんだけど……」 すると、 「

ペットを理由に仕事を休めるか

夜勤明け、ナースステーションで朝の点滴準備をしていたら電話が鳴った。 この時間にかかってくる外線はたいていスタッフからの急な欠勤の連絡だ。私が手を離せないのを見て、早めに出勤していた日勤の看護師が電話を取ってくれたのであるが、途中から相槌のトーンが変わったので、ちょっと気になった。 それはほかの同僚も同じだったとみえ、彼女が電話を切ると「誰から?なんだって?」と声が飛んだ。 「Aさんが、今日休むって」 「どうしたの、体調不良?」 「そう。……猫がね」 飼い猫を病院に連れて行

うちの子になってね③

※ 「うちの子になってね①・②」のつづきです。 ちょこんは二日二晩、三段ケージの中で鳴きつづけた。それも、一段目に置かれたトイレの砂の上に座り込んで。 猫は緊張や不安が強いとき、狭くて暗いところに隠れようとする。四角い小さなトイレは、ちょこんにとって与えられた環境の中ではもっとも安全を感じられる空間だったのだろう。 外では鳴いたことのないちょこんが、二日間飲まず食わずで外に出してと訴えた。それはそれは哀しい声で。 「ノミは駆除した。一回だけどワクチンも打った。最低限のことは

うちの子になってね②

※ 「うちの子になってね①」のつづきです。 むしむしと気温の高い朝だった。リビングの掃き出し窓の雨戸を開けると、ちょこんはいつものように庭にいた。 「おはよう。今日も暑くなりそうだね」 と声をかけ……ん? 数メートル離れたところにいるちょこんの背中に白いものが見える。なんだろう。 やがて定位置の沓脱石の上にやってきたちょこんを見て、びっくり。腰からしっぽにかけ、ごっそり毛が抜け落ちていたのだ。まるでバリカンで刈ったように幅五センチ、長さ十五センチほどの帯状に剥げており、白

うちの子になってね①

その猫が初めてわが家の庭にやって来たのは、一昨年末のことだった。 外が薄暗くなり、雨戸を閉めようとリビングの掃き出し窓を開けたところ、ツバキの木の根元に黒っぽいかたまりが見えた。なんだろうと目を凝らしたら、黒と茶が入り混じった毛色の猫が一匹うずくまっていた。 この辺りにも野良猫がいたんだと驚く。長く住んでいるが、野良猫を見かけたことは一度もなかった。 わが家に保護猫を迎えたのがつい一週間前のこと、その鳴き声や匂いにつられて寄ってきたのかもしれない。 「あらあら、どうしたん。

命の衝動買い

知人の話である。 出張から帰宅すると、見知らぬ犬が家の中を走り回っていた。驚いて立ち尽くしていると、「ねえ、かわいいでしょう!」と妻の声。 なんでも、遊びに来ていた孫を連れ、ペットショップに金魚の餌を買いに出かけたところ、ショーケースの中に一頭の子犬がいた。孫と一緒に見ていたら、店員が「抱っこしてみませんか」と声をかけてきた。 マンション暮らしでペットを飼ったことのない孫はクリーム色の毛に顔をうずめて大喜び。「おばあちゃん、この子飼いたい!」という展開になったのは言うまでもな