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恋愛・結婚

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恋愛や結婚、男と女について書いたテキストをこちらにまとめています。
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記事一覧

同窓会と大人の分別

夜勤で一緒になった同僚がインスタントのスープはるさめを食べていた。夕食はそれだけだという。 「お弁当忘れたん?私、非常食持ってるよ」 「ちゃうねん、いま節制中やねん」 今月中に二キロ落としたいのだが、同居している親にバレないよう職場での食事を減らしているらしい。 あら、どうして内緒なの。 「ゴールデンウィークに大学の同窓会があるねんよ。それでダイエットなんか始めたら、わかりやすすぎて恥ずかしいやん」 あはは、なるほど。……と相槌を打ってから、ん?看護大学の同窓会だったら女ば

青春ソングと遠い日のあの場所

大学時代の友人と焼き肉を食べに行ったら、懐かしい歌が流れていた。思わず顔を見合わせ、同時に「恋心!」と叫んだ。 店のBGMは九十年代のヒット曲メドレーだったらしく、そのあとも「決戦は金曜日」「裸足の女神」「ロマンスの神様」「EZ DO DANCE」とつづいた。二年ぶりの再会だったが、こうなると近況報告どころではない。「ラブ・ストーリーは突然に」「SAY YES」で往年の月9ドラマについて語ったり、イントロクイズをしたりして盛り上がった。 ……のだけれど。急に彼女の口数が減った

「結婚は○○だ」の○○に言葉を入れるとしたら。

ばたばたしていて、昼休みに入るのが三十分遅れた……のはいいのだが、休憩室のドアを開けて、しまったと思った。先輩のA子さんがまた「オッサン、オッサン」と連呼している。 オッサンとは彼女の夫のこと。彼がいかに不快でストレスを与えてくる存在であるかを、A子さんはお弁当を食べながらしょっちゅうみなに話して聞かせるのだ。 ひそかに「ジャイアンリサイタル」と呼ばれているそれが始まると、私は「歯磨きしてこようっと」「記録ができてないからお先に」などと言って仕事に戻ることにしている。でも、今

三十年目の気づき

しゃくりあげる自分の声で目が覚めた。枕の冷たい感触で現実に戻ったあとも、涙はしばらく止まらなかった。 夢の中でも置いて行かれるのは私なのね。 なぜ唐突に彼の夢を見たのか、理由はわかっている。 フェイスブックでつながっている共通の知人から新年のあいさつが届き、否応なしにあの頃のことを思い出したところに、貴乃花さんの「独占告白 初恋の人と奇跡の再会を果たすまで」というネット記事を読んだからだ。 貴乃花さんが十代の頃に付き合っていた人と再婚したことはこのあいだニュースになっていた

捨てられない理由

伊集院光さんがパーソナリティを務めるラジオ番組で「捨てたもの」というテーマで投稿を募集したところ、「卒業アルバムを捨てた」という便りが一番多かったという。伊集院さんは、 「捨てないものだと思い込んでるみたいなところがあって……」 と驚いたそうだ。 これを聞いて、少し前にテレビで菊川怜さんが「場所を取るから卒業アルバムを処分した」と言って、MCやほかの出演者に“非難”されていたことを思い出した。 「それは引きますよ」「最悪や、ひどいですって」と口々に言われていたが、幼稚園から

「人生の失敗」と離婚観

めずらしく定時上がりできた夜勤明け、バスを降りて時計を見たら十時二十分。「あら、まだこんな時間」とうれしくなり、マクドナルドで朝マックをすることにした。 若い女性三人組の隣に座ったら、先日再婚を発表したタレントの新山千春さんの話で盛り上がっていた。 「芸能人もマチアプで恋活するのか」「四十二歳であの浮かれっぷりはイタい」から始まり、お相手の人物分析を経て、「浮気されて終わる」というところに着地した。 いまはよくても十年後はどうか。五十を過ぎても一般人の同世代と比べたらはるかに

熟年再婚

同僚のA子さんは車通勤であるが、夜勤のときは夫が送り迎えをしている。 「自分で行くからいいって言っても、帰りに眠くなったらどうするんだってきかないんだよね」 と彼女が言うと、「愛されてるなあ!」「だんなさん、なんでそんなに優しいの」と声があがった。A子さんは五十代後半。結婚して何十年経ってもそこまでしてくれる夫がいることにみなが驚いたのだ。 すると、 「いや、うちは結婚してまだ五年なんだよね」 と彼女。えっ、そうなの? 「籍を入れるつもりはなかったんだけど、息子が『老後ひとり

デートでのお会計作法と割り勘がつらい場面

セクシー女優・深田えいみさんのツイートに端を発した、「デート代は男が出すべきか」論争。 人気ユーチューバーや有名実業家、タレントらが持論を述べてネット上は大盛り上がりだが、その「おごる」「おごらない」を読みながら思い出したことがある。若い頃、恋人未満の男性と食事をするとお会計タイムが苦痛だったなあ……ということだ。 私はデート代を男性が持つべき理由はひとつもないと思っているが、「そろそろ行こうか」となったときにテーブルの上の伝票を自分が掴むことはない。 後で自分の分を出すつ

LINEが既読にならなくて

お昼のマクドナルドに入ったら、近くの大学の学生と思しき女の子たちの会話が聞こえてきた。 「既読無視のほうがまだましだよ、『返事がないのが返事なんだな』ってあきらめがつくもん」 「わかる。未読のままだと『忙しいのかな』とか『スマホが壊れたのかも』とか期待が残っちゃうから、余計きついよね」 一方の女の子が彼氏だか好きな人だかに送ったLINEが一向に既読にならないらしい。 それはもやもやするよねえと思いながら、私だったら既読スルーと未読スルー、どちらのほうがイヤかを想像してみた。

箱パカプロポーズ!

カンファレンスから戻ると、待ってましたとばかりに一年生看護師から声がかかった。 「○号室のAさん、明日オペなんですけど、指輪が抜けないんです。石鹸でもぜんぜんダメで」 手術中は体がむくみやすい状態にあるため、指輪がきつくなって指先の血行障害が長時間つづくと指が壊死する恐れがある。また、電気メスを使用するときに指輪に通電し、火傷をする危険もある。そのため、指輪は外しておかなくてはならないのだ。 Aさんに指を見せてもらうと、なるほど、指輪ががっつり食い込んでいる。四十年間つけっ

定年退職したら、したいこと

四、五十代となると、定年退職後の生活を想像することがあるという人は少なくない。昼の休憩室で、同年代の同僚と「定年になったら、なにがしたいか」というテーマで盛り上がった。 「老後は好きなだけゲームをする。認知症予防にもなるし」と誰かが言ったら、「その頃にはいまみたいに指の自由は利かないけどね」「動体視力が衰えて、画面を目で追えないんじゃない」とすかさずツッコミが入る。 老年看護学の授業で高齢者体験スーツを着たことがある。両親学級でパパがやる妊婦体験の高齢者版だ。厚手のグローブ

大食いと恋のチャレンジ

ひさしぶりに御座候を買って帰ったら、包みの中に紙が一枚入っていた。 公募した御座候にまつわるエッセイの中から選ばれた一編が掲載されており、年配の男性が大学生だった頃の思い出をつづったものだった。 御座候によく似た大判焼の店があり、十個食べるとタダになるというので柔道部の仲間五人で出かけた。全員完食し、数日後新たなメンバーも連れて再び店に行ったところ、「十五個食べたら無料」というルールに変わっていた------という内容である。 あれだけ餡がずっしりの大判焼を十個というのはな

男性の前開き事情

年下の同僚が「最近、だんなが怪しいんですよね」と言う。彼女のシフトをやたらと気にし、夜勤の日にはきまって飲みに行くらしい。 「でもそれだけじゃあなんとも。“鬼の居ぬ間に洗濯”かもしれないし」 「誰が鬼ですか」 相手の“匂わせ”では?と思うようなこともあったのだという。 「え、ワイシャツに口紅がついてたとか?」 「違いますよ、ひと昔前のドラマじゃないんだから」 「助手席にイヤリングが落ちてたとか?」 「発想が古いなあ」 「こっちが身動きとれない夜勤を狙うなんてサイテーですよ。

キラキラの記憶

先日、作家の林真理子さんが日本大学の次期理事長に決まったというニュースが流れた。 前理事長による脱税事件などの不祥事を受け、七月から新体制を発足するにあたっての人事であるが、林さんは二〇一八年に日大アメフト部の悪質タックル問題が起きたときから「日大のオレ様体質を変えなければ」と言っていた。 「日大というところはとことん根が腐っている。理事会を解体しなくては根本的解決にならない。こうなったら私が立候補する。もちろん無給でやる。母校のためにひと肌もふた肌も脱ごうではないか」 と書