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クルマオニ

私が所属しているHEARシナリオ部で書いた作品です。
月に一度テーマを決めて、部員で作品を書き合います。
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語り ほかに誰もいない小さな駅のホームだった。
 
アヤ 各停来るまで、まだ時間あんなー 月がきれえ……うっ えろえろえろ……飲み過ぎ― うー
 
語り 背後から、そいつは、忽然と現れた。
 
クルマオニ ……こんな人気の無い所は危ないですよ……
 
語り あたしは、振り向く。「そいつ」が、いた。何かぬめっとしたものを感じたけど、普通のスーツ姿の男だった。
 
アヤ あんた誰?
 
クルマオニ 新月の夜、一人だけで乗り物を待っていると、クルマオニという妖怪に憑かれて、飛び込まされてしまうそうですよ(くすくす)。
 
アヤ 何言ってんのさ! 頭おかしいの?
 
クルマオニ シンセツニイッテアゲタノニナァ……
 
語り そいつが言っている間に、視界に変なものが現れた。大きな蜘蛛が尻から大量の糸を吐き出し、絡ませてくる。自分が糸玉にされて、視界が、どんどん真っ白になっていく。
 
(SE)少しずつ近づいてくる、電車の音。
 
クルマオニんんんー?
 
語り あたしは、自分の右耳のピアスをつかんだ。
 
(SE) ぶちっ!
 
語り あたしは、ピアスをつかんで……引きちぎった。
 
アヤいっ痛っ―!
 
クルマオニ  ぬううぅぅぅぅ……
 
語り 酔いと幻覚が一気に覚めて、視界の蜘蛛と糸玉がかき消すように無くなった。 
 
アヤ ふん! お前の変な術は破れたぞ! ニンゲン舐めんな! 消えろ! 妖怪! えーっと、名前……なんだっけ? 
 
クルマオニ 小娘ええぇぇぇ!
 
語り そいつは、真っ赤な霧のようなものを噴き出しながら、肉片まみれのおぞましい姿に、変わった。そして、……飛び掛かってきた。
 
(SE) 電車の轟音。ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン! ごーーー
 
アヤ あ、もう! 消えろって言ったのに!
 
語り 幻で敵を撹乱するタイプみたいだ。どんなにヘンテコなものでも、中心が無いとまとまった存在になれない。そして、中心は、急所だ。あたしは右手で奴の実体を捕えて……
相手の右肩の辺りに中心を感じた。こいつらの中心は、変則的だ。体の中央に無い場合も多い。
奴の体に左手を突っ込んで、奴の核を握りしめて…………

(SE)ひび割れる音

語り 砕いた。
 
(SE) 砕ける音
 
クルマオニ があぁぁぁ
 
(SE) しゅー!

アヤ  襲う奴をちったあ選べよ! タコ!
 あたし、ばあちゃんみたいにタフじゃないから、こういう稼業やりたくないんだよもう! また、しばらくお洒落できないじゃん……うっ!……えろえろ、えー…

(SE) 遠ざかっていく電車の音

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