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赤い鳥の伝説

私が所属しているHEARシナリオ部で書いた作品です。
月に一度テーマを決めて、部員で作品を書き合います。
フリーで朗読・声劇で使用できる物語です。
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※この作品はフィクションです。
 
◎私
20代後半
少し流されやすい感じ

◎母
40代後半~50代前半
しっかりした感じ

私: あー…
はいはい 私は結婚する気、ないから!
じゃーね、おばぁちゃん。(はぁ ←ため息)

母: なぁに、今の電話。おばぁちゃん?

私 : うん

母 : ふぅん、で、あんた今日は、お休みなの?

私:うん……今日はシフトはいってないよ
というか、おばぁちゃん
『離婚してもいいから、一度くらいは、結婚してみなさい』って。
何それ? 結婚原理主義とかっていうやつ?

母: まあ、昔の人だからねぇ
おばあちゃん、私が遭難したときは
「生きていてくれただけで嬉しい」
って言ってくれたんだけど、今では孫にいろいろ要求しちゃってるなんて(ふふふ)

私: ……え?(短めに)
そーなん? え?
遭難?!
お母さん、そんなことがあったの?

母: 小さい頃は私も おてんばだったからねえ。

私: や……えーと、そのふたつは
ちょっと、次元が違うような……

私M: 母は笑いながら
包丁を持った手を動かしていた。
そんな時
森の方で、かすかにだが聞いた事のない変な音が聞こえた。
私には初めて聞く音だった。

母: わぁ。懐かしい。

私: え?……何? 
知ってるの?
……何、今の音。

母: アカショウビンの鳴き声よ。
久しぶりに聞いたわぁー。
まだ、生き残ってるのねぇ

私: アカショウビン?

母: そう。

私: 何、そのアカショウビンって。
いきもの?

母: うん、野生の赤い鳥……

私: 野生で赤い鳥なんているの?
(すこし驚いた感じで)

母: 受け売り情報……♪ 
初夏から梅雨どきにかけて
東南アジアから、渡ってくるらしいんだけどね……
絶滅危惧種なんだって……

私: へぇー、でも、なんで、そんなこと知ってんの?
鳥とか好きだっけ? 

母: ん?

私: なんかぁ、お母さんから、そういうこと聞くの初めてだから。
その鳥に、特別な思い入れでもあったりするの?

母: ……うーん……

私: 何?
話せないこと?

母: そんなわけじゃないけど
……もう随分、昔なんだけどね…

母: うん。(きょとんな感じで)

母: 私が、小学生の頃、引っ越して来た子がいて……

私: 男の子?

母: うん……都会からの引越しで来た子でねー
初めてバス停であった時
ここはこんな田舎だからやっぱり眩しく見えてね……

私: お!運命の相手ぽいー!

母: (ん、ふふ と含み笑い)
その時、森の奥の方から、あの鳴き声が聞こえてきてね。
『アカショウビンだ!』って
その子が言って
私は『何それ?』って
そこからその子と話すようになって、仲良くなって

私: (笑う)生き物オタク
で、付き合うようになったとか?
…っんなわけないかぁ!

母: ないない!
小学生で、しかも転校してきたばっかりの子じゃねぇ。
でも、結構、仲良くて遊ぶようになったの。

私: ぅはぁぁあ♡⤴︎
(小さな恋物語かとテンションあがってればどんなでもよい)

母: (笑う)
まぁ、虫取りや、野鳥観察にばっかり付きあわされたけどね。
でも、この地域に当たり前にいる虫や鳥が
そんなに、珍しいものなんだって、不思議な気がしたわね。
ただ……

私: ただ?

母: そんな日も、長くは続かなくて。

私: え?

母: 一緒に遊んでる時に
その子が、大怪我して入院しちゃったの。
別に危険なことしてたわけじゃなくて
ふつーに転んだ だけだったんだけど
その子、頭を打っちゃってね
そこからは会わせてもらえなくなっちゃった

私:なんか、かなしいね
どっちも悪くないのに。大人って勝手だなぁ。
私ももう大人だけどさ、さっきのおばぁちゃんみたい。

母: そうねぇー
凄く悲しくって……
でもまだ子どもだから、変なことを思いついてね。

私: 変な、こと?

母: うん、もう一度、
アカショウビンの鳴き声を聞くことができたら
その子と会えるような気がしてきて、森へ行ったの。

私: え? ひとりで?

母: そう、今ならわかるんだけど
子供って不思議ね
よくわからないまま、森で遭難しかけて…

私: はぁー……おかぁさん、無事でよかったね。

母: ほんとにねぇー。
捜索隊に、助けてもらったんだけど
その時に、アカショウビンの鳴き声が聞こえたの。
私ったら遭難しかけたってのに
これで、彼に会えるって、嬉しくなっちゃって……
助けてくれた人が それを聞いて
呆れた顔をしてたわぁ…(ふふふ)

(できれば息吸う音 綺麗に)
そんなバカなことやってた ちょうどその時
彼は怪我が悪化して、そのまま…
アカショウビンより高い高ぁーい空の上にいっちゃってたの

私: うわぁ……

母: ね、ほんと うわぁよ。
そういう嫌なことって 重なるのよね。
しばらく学校にも行きたくなくなって。
そんな時
普段は本なんか、あまり読まないのに
家にあった、古い昔話の本を読んじゃって…
アカショウビンが出て来る話でね。
病気で寝込んでいる親が
『水を飲みたい』って言って……
娘は代わりに 水を汲みに行くんだけど
間に合わなくて待っていた親は亡くなっちゃう…

親不孝な娘は、アカショウビンになって
今でも心が渇いて、さまよってるって
そういう伝説が書いてある本だったの。

私: (ため息 はぁ)
そんな時に知りたくない話だね……

母: うん…なんだか落ち込みはひどくなったわね……
だけど、しばらくして少しは元気になって
外に出れるようになったら
遭難したときに 私を見つけてくれたお兄さん
――捜索隊の一人だったんだけど――
その人が歩いてるのに ばったり会って
近所に住んでいるのを教えてくれたの
まあ、歳が離れてたから
子どもの時は、ちょっと話しただけだったけど
高校卒業して就職したら、その会社に

私 : まさか…お父さん?

母:そう、正解!おとーさん。

私: わぁ、なんかすごい。

母: でも、結婚するとき
おじいちゃんも、おばあちゃんも
歳が違い過ぎる、よせ!って随分、反対してて
大変だったのよ?(笑う)。

私: ……そうなんだ?
へぇ、お父さん、随分、老けてるし
どんな出会いだったのかって謎だったけど…

母: あは。

私: あは、じゃないよ。もー……
で、年上すぎるお父さんの(←含みもたせたいい方で)
どこが良かったの?

母: 今となっては、よくわかんないなー。

私: そっか……
ねえ、おかぁさぁん⤵︎
……結婚しないと、ダメなのかなぁ
いろいろ外野がうるさぃよ……(しょんぼり嫌そう)

母: んー……したけりゃ、勝手にすれば?って思うけどなぁ
AIでも何でも利用して「優良物件」っていうのを探せばいいんじゃない?

私: もう おかぁさんってば(笑う)……

母: だって……
誰かに「結婚しろ」っていわれて
できるようなものでもないし
するようなものでもないでしょう?

私: そうだけど
うるさいんだもん

母: その時の気分で言っているだけなら
わがままだけど
よく考えて、一生そういうふうに生きていくんだって
ちゃんと覚悟を決めて選んでるなら、どんな生き方でもいいんじゃない?

私: ……うん

母: …お父さんと結婚するとき
おじいちゃんも、おばあちゃんも大事に思って反対してくれてるんだってわかってた。
だけど、そういう気持ちと、変に偏った考えが
ごちゃ混ぜになってて(ため息 または てての後の手を吐息混じりで)凄くしんどかった。
だから、あなたの気持ち……少しはわかる……

私: ……そっか

母: ほかにもね。
お前は騙されているんだとか言われたし
お父さんに対して、ロリコンだとか、犯罪者だとか言う人もいてね……

私: ……なにそれ、酷い……
お父さんとお母さん 娘からみても恥ずかしいくらい仲良しなのに。

母:あら、ありがと(笑う)
おふざけもあったのかもしれないから
基本的には笑い飛ばしてたけど
それでも、体調悪い時は
「年の差だけで、何、失礼なこと言ってくれてんの?」って、
イライラすることもあったわ。
何をやっていても……多かれ少なかれ
外野は好き勝手言うものよ……

嬉しい意見だけは受け入れたけど(笑う)

まぁ、お母さんとしてはね。
あなたが、結婚するかしないか…とか
誰かの思い通りになるかどうか…とか
そんなことはどうでもよくて
あなた自身が、幸せでいてくれた方が嬉しいかな。

私: ……お母さん……

母: (笑い)……さてと。

私: ん? お刺身?

母: 今回は、これにしようかなって思って。
ちょっと夏は高いんだけど、スズキのお刺身。

私: あ、それ、お父さん
大好きだよね。あ……そうか、今日は……

母: そう。ジューンブライド。結婚記念日♡
(endになる 終わりの読み方をお願いします)
 

★Special Thanks 人外薙魔さま 



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