ミステリー/つまづきこそ宝
ウナさんは会社員。ジョジョ、北斗の拳、進撃の巨人、キングダムが好き。これまで私が描いてきた漫画は一切読んだことがない。
「それ何描いてんの?」
私の背後からiPadモニターを覗き込むウナさんに、
「え〜、漫画」と私は答える。
これまで漫画の内容について具体的な質問をされたことはなく、完成してもどうせ読まない。かいつまんで説明するのも面倒くさいので、すべて「漫画」のひとことで済ませている。案の定ウナさんは「ふうん」とだけ言ってテレビの前に座り、録画したアニメを見始める。
noteの企画がきっかけでジャンプ+の担当がついたときだけは、「集英社!?」と少し前のめりだった。しかし、ネームの提出が10回めに入ったあたりで担当から連絡が来なくなり2ヶ月。「ソラの漫画には興味なくなったんやな」のひとことであっさり片付けられてしまった。
それでもめげずに毎日漫画を描いている私を、ウナさんはどう思っているのか知らない。私は誰に何と言われても自分のやりたいことをやる性格で、そんなことは百も承知のウナさんだから、黙って放置してくれているのだろうと思っていた。
数日前の夕飯時、ほどよく酔いがまわったウナさんとキングダムの話をしていた。世界観や登場人物の魅力を饒舌に語っていた彼が、突然言った。
「あのアキコの最後を描いた漫画は、ソラの最高傑作や!」
「ふぁっ!?!?!?」
私の口から焼き鯖の身が飛び出した。
「は? え? は??? そんなんいつどこで読んだんよ!?」
ウナさんはヘラヘラ笑って答えない。
「こっわ! いやマジで! こっわ!!!」
ヘラヘラ。
「ていうか、最高傑作ってウナさん、私のほかの漫画読んでないくせに!」
ヘラヘラヘラ。
えっ・・・もしかして・・・
こいつ、読んでるのか…?
怖くてそれ以上は追求できなかった。
いや別に読んでくれててもいいんだけど。
一体どこで読んでるんだ?
・・・ここ?
最後まで読んでくださってありがとうございます。あなたにいいことありますように。