猫が言いたいこと/舞台に残る
うちには猫が2匹いまして、最初は豆粒みたいにちっちゃかったのが、
10年経ったいまこんなです。
すっかりシニアですが、2匹とも若い頃とあまり変わらず元気。取っ組み合っていたかと思うと、毛繕いし合っています。
10年一緒に暮らしているうちに、2匹の行動パターンがなんとなくわかるようになってきました。例えば左のサビ猫。突然猿のように駆け回るときがある。興奮して毛を逆立てたあとは、ほぼ100%こてんと寝ます。だから猿っぽい=眠いとわかる。
一方で右の茶トラは時々、そばに来てニャアニャアといつまでも鳴き止まない。そんなときは頭を撫でてやると鳴き声がピタッと収まります。大声で鳴く=甘えたい、です。
こういう行動心理ってもしかして、相手を理解したいと思っているうちに自然とわかってくるのかもしれないなあと、ふと思いました。
まだ赤ちゃんの我が子の泣き声とか、病気で発話がむずかしい家族の訴えとか。
相手が何を言いたいのかを察したい。その思いがあれば、例え会話が成り立たなくてもコミュニケーションは取れるのかもしれません。
逆に理解したい気持ちがなければ、「あの人の言いたいことがちっともわからない」となるのかも。
理解したいと思う気持ちはたぶん愛情から生まれるので、愛を抱けない相手のことはいつまで経ってもわからないし、理解できなくて不快、だから余計に好きになれないのかな。
猫と暮らす生活はもうすぐ20年になります。まさか飼い猫の言動の意味を察することができるようになるとは思ってもいませんでした。
私の背中を駆け上る猫がいくら爪を立てようが、私の耳に大音量で鳴き続ける猫がいくら鼓膜を震わせようが、私の愛情は変わりません。これからも喜んで彼らに愛を捧げます。
……ところでね。上の写真の左のサビ猫をもう一度よく見てほしいのですが……
お腹にほんの少しだけ、白い毛が生えてますよね?
猫博士の友人2人とご飯食べてたとき、ふとその話をしたんですよ。
「うちのサビ、お腹だけちょっと白いんだよねー」って。
そしたら博士2人が同時にこう叫びました。
「それサビじゃなくてミケ!」
「えっ…」
黒、茶、白の組み合わせは三毛猫なんだそうです。
うちの猫、サビじゃなかったんです。
先代の猫が急逝したとき、同じサビ柄の猫を飼おうと決め、この子を引き取って10年間。「やっぱりサビ猫はかわいいねえ」と言い続けてきたのにミケだった。
別にどっちでもいいんだけど、うちの猫の言いたいことがわかるようになってきたと喜んでおきながら、ミケであることを10年間も見抜けなかったのはくやしい。
猿のように興奮して私の背中を駆け上り、これまで無数のミミズ腫れを作り続けたこの猫はもしかしたら、
「あんたサビサビ言うけどさ、あたしサビじゃなくてミケなのよーーー!!!」
と訴えていたのかもしれません。眠いとかじゃなく。
いまだにサビという意識が抜けず、お腹の白い毛がチラッと見えるたびに「ああミケだったな…」と、飼い主として妙な敗北感を味わっております。
最後まで読んでくださってありがとうございます。あなたにいいことありますように。