見出し画像

1/2 川本真琴

リリース当初、ずいぶん長期間チャートインしているなあ、というだけの印象だったこの曲。
後になってフル尺MVを見てぶっ飛んだ。才気に圧倒された。
終始ジャカジャカいうアコギ、キュートな声質とルックス、なのにどこかパンキッシュ。
男の子が好きなもの全部載せだ。
やはりフル尺を聴かないと、その曲の真価は判断できない。

歌詞を見ていこう。
純情でプラトニックな恋愛ではない。
もっと言うと、ひとつになって溶け合うような経験が済んだ後の高揚感でいっぱいだ。
「かわりばんこでペダル」を漕ぐには、ひとつのサドルに2人で座るわけで、相当心を許した関係だと分かる。
心もひとつになりたいから「カラダが邪魔だ」とまで言う。
「愛してる」の三連打。
「ひっつく」「くっつく」「ひとつになりたい」と繰り返されるフレーズ。
私と彼は二人でひとりだから、私だけだと1/2なのだ。

「2コの心臓がくっついてく」と「唇と唇」の「く」を重ねて歌う斬新さと、文字数の多さが疾走感を生んでいる。
アコギのカッティングと相俟って実にパンキッシュだ。


ギター姿が絵になるアーティストだ

この曲のヒットで、前作のシングル「DNA」もチャートを駆け上る。
アコギを抱えて歌うMVの影響もあり、ギター系女子の先駆けと言われた。
だが、川本真琴はパブリックイメージの重圧に苦しんでいたようで、数年で失速。ソニーとの契約も解除し、インディーズに戻ることとなる。
少し遅れてメジャーデビューしたaikoが、等身大のキャラクターで現在まで活躍しているのとは対照的である。
しかしそれによってこの曲の素晴らしさが失われることはなく、四半世紀を経てなお古さを感じさせない。
エバーグリーンとはこのことである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?