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祭りのあと 桑田佳祐

今回は桑田佳祐の「祭りのあと」を採り上げる。
出色の出来となったソロ作「孤独の太陽」から1か月後のリリースとなった名曲である。
そして、妻を持つ身でありながら、好きな女ができてしまった男の歌である。

普通の恋愛を歌っていないことは歌詞から読み取れる。
女への想いを「底なしの海に沈め」なければならないのは何故か。それが道ならぬ恋だからだ。
普通の恋であれば、たとえ別れることになっても、胸の奥に想い出としてしまっておけばよいが、不倫の恋は二度と浮かび上がってこないよう、底なしの海に沈めなければならない。

「恋も涙も純情も生きるためには捨てよう」、つまり普通の生活を送るためには、家庭を守るためには捨てなければいけない恋なのだ。
そして男は「汚れた人ごみに背中丸めて隠れ」ながら生きていく。純情を通せば失うものを天秤にかけ、打算と妥協に満ちた普通の生活を選択するのだ。

「祭りのあと」というタイトルは、キラキラした素晴らしき恋を手放す決断をした後の、何とも空しい気持ち、灰色の普通の生活に戻る心情を表している。

ふと気になるのは、妻であるハラボーのことである。
妻としてこの曲の真意を気付かないはずがない。
夫がこのような曲をシャアシャアとリリースするときの気持ちはいかなるものか。
虚構性の強いサザンでの楽曲に比べ、ソロ作はストレートに心情を吐露するものが多く、ハラボーのダメージも大きいだろう。
「飾らないおまえ?あ、あの時のことネ」と具体的な事柄を思い浮かべている可能性すらある。
ほよーんとした見た目とは裏腹に、心にはとんでもない修羅を住まわせているのではないか。
それが何より恐ろしいのである。

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