【映画感想】『シャザム!〜神々の怒り〜』

あらすじ

 ギリシャ神話の6人の神の力を与えられスーパーヒーロー・シャザムへと変身する力を得た少年ビリー・バットソン。彼は同じ里親のもとで生活する5人の養兄弟にその力を分け与え、6人でスーパーヒーローとして街を守っていた。しかし、そんな彼らのもとへ、シャザムの持つ力のパワーソースの一人である神アトラスの娘たちが、シャザムの力を取り戻しにやってくる。(2023年公開、監督:デイビット・F・サンドバーグ)


評価

★★★☆☆ 3.0点


予告編


感想

2019年公開の『シャザム!』の続編である今作は、前作において作品の面白さの屋台骨を担っていた、ザッカリー・リーヴァイ演じるシャザムのコミカルなキャラクターと、シャザムの縦横無尽なアクションという2つの要素を大きく膨らませた娯楽作として仕上がっている。

続編の強みというのは、主人公の人となりを説明したり、舞台設定を整えたりするステップをスキップして物語を進められるところにある。本作もこの恩恵に最大限あずかり、上記の2つの要素を序盤の大橋でのアクションシーンから大々的に押し出しす物語展開となっており、掴みからグッと作品のテンションを上げることに成功している。

本シリーズは、ビリー少年が魔法の力で大人の姿のスーパーヒーロー・シャザムに変身するというのが基本設定であり、前作ではこの2つの姿を行ったり来たりすることで起きる様々なトラブルをコミカルに描いていた。ただ、アッシャー・エンジェル演じるナイーブなビリーと、ザッカリー・リーヴァイ演じるコミカルなシャザムが同一人物にはどうにも見えないというのが、前作を観るうえでの若干のノイズになっていた。これに対し本作は、全編を通してほぼザッカリー・リーヴァイ演じるシャザムの姿が出ずっぱりとなっているので、こういった齟齬がノイズにならなくなっている。これにより、本シリーズの味わいが薄まっているような気はするものの、とはいえ、前作よりも格段に見やすくはなっているので、この割り切り方は作品としてはプラスに作用したと言えるだろう。

また、飛行能力、怪力、高速移動とスーパーヒーローの中でも特に盛り盛りなパワーを持ったシャザムのパワーを遺憾なく発揮させるアクションシーンが終盤はノンストップで展開し、さらにそこにドラゴンや巨大樹を登場させることで怪獣映画的なエッセンスが、巨大樹から生み出される様々な怪物を登場させることでモンスター・パニック的なエッセンスが投入されているため、全体として、非常に満足度の高いファミリー映画となっている。


このように娯楽映画として本作は前作からレベルアップしているが、一方でヒューマンドラマとしての側面では前作からは少し後退したかなという印象。前作はシャザムの強大な力を得た少年ビリーの奮闘をコミカルに描きながら、捨て子である彼のアイデンティティの確立をビターに描くことにも成功しており、一人の孤独な少年の成長物語として上質な作品に仕上がっていた。これに対し、前述の通り、本作は娯楽方向に大きく舵をきったために、そもそものビリーの出番がほとんどなく、本作で新たに浮上するビリーの里親からの独立問題もあまり掘り下げられずに終わってしまう。また、本作のメインストーリーを担う養兄弟のフレディとアトラスの娘アンのロマンスも、出会った瞬間に恋が始まる非常に様式的なものであり、大雑把と言えば大雑把である。とはいえ、これらのドラマ性を限りなく排除したからこそ、本作は前述の娯楽要素が強く押し出された痛快なファミリー映画として仕上がっているわけなので、本作についてはこのバランスの作劇で良かったのだろう。

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