アイドルとメンタルの不調を考える(岩橋玄樹くんの退所について)

キンプリの岩橋玄樹くんがジャニーズ事務所を退所すると発表しました。

堂本剛さんを推している身として、心理学を学んでいる身として、少し思うことがあったので書いています。

まずは自分の受け止め方として、彼が退所という判断に納得が行っているなら大歓迎だ。自分のメンタルヘルス、というか健康を優先して仕事を選ぶべきだもの。

ただ、彼の文章を読んで、少し引っかかってしまった。文面からすごく、自己責任論を感じてしまう。パニック障害になってしまった彼が、活動休止期間を経ても治ることのできなかった彼が悪いかのように。例えば、関ジャニ安田くんのように病気になってしまった、そんな時になぜ自分を責めなきゃいけないんだろう。自分がなりたくてなったわけじゃないのに。その論理がなぜ、精神の病気には通用しないのだろうか。

ここで一つ考えてしまうのは、この件に関しての事務所の落ち度。彼は幼少期からパニック障害を抱えていたと、かなり前から(私の記憶ではRide on timeから?)公表している。彼は幼少期からそのような特性があると把握していたのに、なぜ、事務所は彼の症状に柔軟に対応できなかったのだろうか。アイドルであることと、パニック障害は、絶対に両立できないものなのだろうか。事務所が、岩橋くんが健康にアイドル生活を続けるために、何かできることはなかったのだろうか。

発表された文面で、彼はこう書いている。

「僕の症状には波があり、ひどく症状が出てしまう時と、おさまっている時があります。そんな自分の状態をうまく説明できなくて、なかなか周囲の人に理解してもらえない時もありました。」

なぜ、10代や20代前半の子の説明能力に頼ってしまったのか。なぜ、若い子の拙い言葉や行動を、ちゃんと受け止めて、彼の状態を理解しようとしてあげなかったのか。そこに怒りを覚えた。

私の推し、堂本剛も、若い頃からパニック障害を抱えていて、若い頃からそれを公表している。彼は、彼の状態を見てたくさんの冷たい言葉をかけられ、それによりさらに傷ついて心を病み、それでも、自分と同じような経験をして欲しくない、もっと理解が広まって欲しい、とパニック障害を公表し、今でも彼のラジオで毎週のように自分の状態について発信したり、同じような経験をしているリスナーのメッセージに寄り添ったりしている。

彼はすごい、と思う。彼ぐらい有名で、しかも過去に彼の状態についてたくさんのバックラッシュにあっていても、それでも現在もずっと公表を続けている、それには相当の強さが必要だ。

若い子には、その強さがないかもしれない。心の状態に病名がついていなくても、ついていたとしてそれを発信するだけの強さがなくても、堂本剛ほど事務所での歴や名声がなくても、同じように、優しさをもって接してあげられなかったのだろうか。誰かが理解してあげられなかったのだろうか。

彼にとってアイドルは向いていない職業だった、それだけのことかもしれない。でも、事務所や消費者の意識を変えることさえできれば、もしかしたら彼はアイドルを続けられたのかもしれない。今、剛くんがやっているように、ライブ演出やスケジュールを彼の体調に合わせたり、無理せず楽しく働ける環境が作れたかもしれない。このあいだの生配信ライブで、彼はパニック障害の発作が出たそうな。それでもライブを続行して、MCでその説明をするような、そんな理解のあるファンドムとスタッフ陣に囲まれた場所でアーティスト活動を続ける道もあるはずなのに。今でもきっと辛い思いをしている、精神的に不安定なアイドルはいるはずなので、今からでも遅くない。もっとタレントの健康を優先するアイドル業界ができてほしい。

岩橋くんは、自分の弱さ、という言葉を使って、謝っていた。弱さは彼の責任ではない、とどうにか彼に伝えたい。弱いから復帰できなかったんじゃない、理解できない周囲にも責任があるんだ。岩橋くんは、パニック障害を抱えても、ステージに立って、キラキラ笑顔のパフォーマンスをして、Jr大賞を5連覇した。Jr戦国時代でトップに君臨してた。それは彼が弱かったから、じゃなくて、彼が強かったからできたことじゃないか。弱くても弱くなくても、心を病む時はあるんだし、治るかどうかに弱さは関係ない。それをどうにか伝えてあげたい。

どんな職場でも意識して欲しい。誰かが困っている時、とりあえず理解することから初めて欲しい。弱い立場の人、弱っている人に全ての説明責任を押し付けず、理解しようとして欲しい。もし病名があるのなら、それをググることからはじめてほしいし、自分の病気について相談するだけの勇気を出してくれたことをまず讃えてあげてほしい。そして、彼らが無理せずに、納得して働ける環境を作ってあげてほしい。

とりあえず、弱っている人、弱い立場の人に自己責任論を説かないでほしいし、そういう立場の人は、自己責任論を引用しないでほしい。説明できなかった彼が悪いんじゃない、彼の弱さが悪いんじゃない、病気は、決して彼の責任じゃないんだもん。

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