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そんなことぐらいで

家の近くに人気のコーヒーチェーン店ができ数ヶ月たった頃
なんとなく気が向いて『どんなもんか』と行ってみた。
『どんなもんか』と言うのは、わたしは静かなカフェを好みとしていて
店内のBGMが大きな音で流れていたり、人の会話が聞こえて来るような
“賑やか”なのが本当に無理。苦手なのだ。
できれば会話が聞こえてこない静かな店でカフェタイムを過ごしたいと思っている。
なので、人気のコーヒー店に行く時はなるべく人の集まらない“変な時間帯”に出向くようにしていた。

公園の池のほとりに新しくできたそのコーヒー店には外が見えるカウンター席があった。
カウンターには1席づつ仕切りが付いていて隣の席との距離は近いがプライバシーはある程度保てるので、パソコン仕事やタブレットを出して勉強している姿も見える。何より外が見えると言うのは緑が目に入ってきたり開放感があってとても気持ちが良い。

わたしの選んだ“変な時間帯”にはやはり人は少なめで、店員さんに『お好きなお席へどうぞ。』と促された。
『次に来たときはあの席に着こう。』と決めていた外が見えるカウンター席。
その一番奥の席、右隣は壁で左側は今は誰も座っていない。『ここなら本を読んだり、考え事をしたり静かに過ごせそう!』と心穏やかに着席したのだった。

席に付いて程なく注文したコーヒーが運ばれ、わたしは本を読みはじめた。
本の世界にすぅーっと入っていき集中し始めた頃、ガタン!と言う音と共に
左隣の席に20代前半くらいの若いお嬢さん(多分それくらいの年齢のイメージ。椅子を浅く座るわたしの脇目に入ってきた程度の情報)が席についた。

ガタン。くらいだったら、まあ別にさほど気にならないのだが、隣のお嬢さんはその後も何やら『ガタン。ガタン。』と音を立る。

静まったかな?と思ったら今度は、
頬杖をつくようなテーブルにひじを置くような
『ゴトン。』
ちょっと経ってまた『ゴトン。』
なんだか落ち着かない。
わたしは隣のお嬢さんが出すそれらの『ガタン。ゴトン。』が妙に気になる。
彼女が『ゴトン。』と音を出すたびにわたしはため息が出るような残念な気持ちになる。
そう、イラっとするのだ。
映画館で映画を観ている時に後ろの人が自分の座っている背もたれに足をぶつけた時の『ゴトっ。』のように、
イラっとするのだ。

だけどなぜ、それほどまでにわたしはイラッとしてしまうのか、
読んでいた本を置いて気分転換にスマホで『怒りとは、』などと調べてみた。

〜怒りの原因は譲れない価値観・・・ 欲求充足が阻止された時に、その阻害要因に対して生じるとされている・・・・云々〜。

ネット調べによる答えに『なるほど、そうか。』と納得してみるも
やはりどうも気になってしまう。
お嬢さん少し静かにしてもらえませんか?
声に出して言えるはずもないから心の中で言ってみたり。
自分もガタゴトと音を出しらた、気づいてもらえるのかも!
と考えたりして読書に集中できない。
そもそも人気のコーヒーチェーン店に静けさを求める方が間違っているのだが・・・。

今日はもう帰ろうか、とテーブルに手を掛けた時
カウンターのテーブル板が思っていたより薄い作りに感じたのだった。
あぁそうだったのか!!
このタウンターの板が薄いから動作の振動が大きく伝わり易いんだ!!
それでか・・・。
『怒りの原因』について無理やり自分を納得させて
次回はもうこのカウンター席には座らないでおこう。と決めて店を出た。

何よりわたしが嫌だったのは、隣の席の人の『ガタゴトごとき』が気になってしまう神経質な自分。
そんなことくらいでイラっとしてしまう自分にウンザリするのだった。



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