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日常と心模様

ついこの間、四十歳になったと思ったら、また歳を取る。自分の誕生日が目の前に来ていて、そして過ぎていく。

結婚、出産、子育てとホームドラマに出てくるような、家族構成の私は、「普通だな」と満足げに呟いて洗濯物をたたむ。

普通とは素晴らしい。そもそも普通で居られる方が難しいんじゃないか?と思う。出来るだけ普通で居たい。

「安寧」そんな世界で過ごしたいのが私の願いだ。

しかし、普通の生活を送ってはいるものの、心の中には安寧など訪れないのだ。心の中は常に、不平不満が嵐のように渦巻き、子供や自分の成長に狂喜乱舞したかたと思えば、他人の言動によって地の底に叩き落とされる。もうダメだ!と思ったら、あらかじめ用意されてたかのような、絶妙なタイミングでくる小さな喜びに、心を打たれ、立ち上がる気力が戻り、また人生という名の茨の道を進めるように出来ている。

感じる事柄、内容が年齢により変わるものの、こういった心の模様は子供の頃から変わっておらず、外側は平穏で内側はドラマチック、まるでスパイのような表と裏の生活だと思ってみる。

いや、でもしかし、どうだろう…。

本物のスパイはどうなんだろうか?

例えば、私がスパイだったとして、国家機密を握っている男とわざと出会い、恋に落ちたかのように見せ、結婚し、子供まで出産。男から機密情報を少しずつ奪う。pcや携帯、男の書斎から、ありとあらゆる情報を見つけてデータで送る。バレないように普通の主婦を演じるのだ。

今だって、洗濯物を畳み終われば、クローゼットへと運び、その間に明日着るであろうスーツに小型GPS発信器を仕込み、男しか使わない棚の中を物色する。男が行きそうな店の名刺を見つけたら、それをデータにして仲間に流すのだ!そうすれば、仲間がその店に潜むだろう。そして、機密情報と繋がりのある人間を特定して、男がどんな目的を持っているのかも明らかになる。密かに男の日常に紛れて、静かに確実に実行していくのだ。

そして、そんな時の私の心の中はどうだろう。思うにスパイな私はドキドキハラハラのスリリングを楽しむのだろうか?いや、そうではないだろう。

そんな時のスパイな私の心の中は、凪ではないだろうか。そう、何も感じず日常のルーティンをこなし、普通の主婦を完璧に演じる為に、心を揺らす事なく一定に保つ為、今までトレーニングしてきた事を存分に発揮し、普通の主婦であり続けるのだ。心は平穏、外側がドラマチック。そんなところだろうか。

いや待てよ、この感じで行くと、普通の主婦の外と中身はスパイの外と中は逆になるのな…。

などとしょうもない事を妄想しながら、洗濯物を畳終わる。なんて安寧な日常風景か。

表に見える日常の風景は凪であるが、心の中では色んな想いと妄想の狭間で、嵐のようなドラマチックな心模様。

そんなしょうもない妄想を繰り広げながら過ごす本日。

皆様の1日が素敵なものであります様に。




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