お盆になると軒下におもちゃの車を吊るすという風習
ちょっと面白い話を聞いたので書き残しておこう。
山形県の遊佐町におけるお盆の風習についてです。
日本人は、お盆の時期になると、ご先祖様がそれに乗って帰ってこられるようにと、キュウリやナスで牛や馬を象ったものを飾りますよね。
それがなんと、遊佐町では、おもちゃの車を軒下に吊るすんだそう。
確かに、牛や馬よりもずっと早く着きそうではありますね。
吊るす車種は多岐に渡り、バス、電車、タクシー、そして飛行機まであるそうで。
うーん、私は死んでまで電車には乗りたくないです…。特に満員電車は。
いや、満員になるのか?それはおいとくとして。
タクシーは、車を運転できない方が亡くなった際に吊るすそうです。
払うお金がないといけないから、千円札も一緒に吊るすんだとか。
素晴らしい気遣い!…でも、ここである種の疑念が。
千円で足りるの?
この世とあの世って、ワンメーターちょっとしか離れてないの?新宿〜高田馬場間くらいなの?
なんて、思わず無粋なつっこみをしたくなってしまう不思議な風習。
この風習を教えてくれた遊佐町出身の知人は、生まれてからずっと、それが当たり前だと思っていたそうです。
どうやって広まっていったんだろうか。町の人たちが集まって、
「馬や牛よりも車の方が速いんでねえか」
「んだんだ、吊るすべ」
ってなったんだろうか。…いや、ならんよね。
「鈴木さんちの田吾作どんが車を吊るしてたど、負けちゃいられねえ、こっちは飛行機だ」
みたいな感じにインフレしていったんだろうか。少年ジャンプのバトル漫画ばりに。妄想が膨らみます。
しかし、そもそも野菜の牛や馬を飾るのも奇妙といえば奇妙な風習ですし、
文化ってそういうものかもしれませんね。囚われる必要はないですもん。
『ミーム』という言葉を思い出しました。
「ミーム(meme)とは、人々の脳から脳へとコピーされる情報であり、また社会・文化を形成する様々な情報として分析される[1]。言い換えれば、習慣や技能、知識、物語といった人から人へコピーされる様々な情報である−wikipediaより」
なぜ、山形県遊佐町において車のおもちゃを吊るすというミームが突如として現れたのか。
時代に合わせて進化していく風習、とても興味深いです。
こちらは、その風習の写真が載っているサイト。この風習のことを『Ghost's Drive』と称しており、なんだかオシャレです。
うーん、写真を見ていると亡くなった方への愛をひしひしと感じますね。
「生前大切にしていたミニカーに乗って帰ってきてくれたら…」
という思いで吊るす方もいるそうです。
お葬式だって、亡くなった人のことを愛する人たちが、心の整理をつけるために行う儀式です。
死者の弔い方も、迎え方も、愛のままにわがままに、
やりたいようにやればいいのだ。
シュールでポップで、そしてちょっと切なくて、素敵な風習だと思います。
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