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闘猫から家猫へ

胡桃(くるみ)

2018年10月、近所の草むらでスカウト。

外にいる猫は警戒心のかたまりなので、目が合った瞬間に逃げるものだと思っていたのだが、

なぜか、寄ってきた。そして、ひざの上に乗ったまま動こうとしない。

たぶん「この家に住まわせてもらいなさい」という猫世界からの指示による「待ち」だったのだろう。

すぐさまかかりつけの猫病院に連れて行き、検査、駆虫を済ませて我が家へ。

顔には無数のケンカの傷。かなりの戦歴と見受けられた。

目もグズグズで、まっすぐ走れないほどのヘロヘロっぷりでやせ細っていたが、食欲は旺盛だった。

名前はいつの間にか嫁さんが「胡桃」に決めていた。

腎臓(数値が少し高い)と歯(半分抜けており、残った歯にもひどい汚れ)以外はおおむね健康とのことだったが、見た目に推定年齢が分からない。

シニア用のフードを与えてみたらおしっこに別の物質がおりてきたらしく、7歳以上ではないだろうという獣医師の見解。我が家での推定年齢は6歳とした。

うっすら手術の痕が見えなくもなく、発情期に特有の行動がなかったため、避妊済との判定。さくら耳ではない。

……そうなると、どこかの家庭にいたということになる。迷い猫の情報も調べたが、見つからなかった。

捨てられた猫、という見方が今のところ強いが、もちろん真相は分からない。

でもウチに来たんだから、そんなこと、どうでもいい。

1年と少しが過ぎ、顔はすっかりきれいになった。声は相変わらずのダミ声で、口をほとんど開けずに鳴くので「べらんめぇ」「バキャローイ」「ファーウェーイ」「ブルーレーイ」など、奇声に関しては枚挙にいとまがない。

それでも、たま胡、胡ぶへいと仲良くなるつもりは、どうやら無いみたいである。

外でストリートファイトを繰り返し、孤高を貫いて生き抜いてきた胡桃には、ごはんと水と家の中の暖かさと、我々人間のひざの上があれば、それで十分のようだ。

なお、この猫に本気で噛みつかれたら、半年は傷が消えない。触り方には注意が必要である。

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