見出し画像

国民負担率のニュースを見て自分の手取りが半分以下になると思っている人へ

令和4年度の潜在的国民負担率が56.9%となる見通しというニュースが話題になっている。
ネットの大体の反応が、そんなに給料が国に取られるなんてけしからん!とかいうものに見えるのだが、なんだか自分の給与の手取りが半分以下になってしまうと思っている人もいそうだ。
現に以下のニュースではこんな解説をしている。(厳密にいうと誤っていると思う)

国民負担率とは、「国民の給料のうちどれくらいの割合が税金や社会保険料のような支出で差し引かれるか」という指標である。

https://www.itmedia.co.jp/business/spv/2205/27/news053.html

自分の税負担・社会保障費負担を実際に計算したことがあれば、大多数の人はそんな負担をしていないことがわかると思うのだが、大体の人が「五公五民」とか「六公四民」とかのセンセーショナルなキャッチフレーズに引きずられているようだ。
少し内容を見てみよう。

政府が国民からこれだけ召し上げておいて成果が……という批判は今回は触れないことにする。

そもそも国民負担率とは

国民負担率は、税収(国税・地方税)を国民所得を割ったものと社会保障費の国民負担分を国民所得で割ったものを合算したものだ。
国民所得は国民全体が得る所得で、個人や法人の所得の合計だ。
ということは、国民負担率には、法人の負担分(利潤に対する割合に近い)も混ざっているし、個人の負担分も高低が均されていることがわかる。
このように国民負担率をどうやって算出しているかを見れば、個人の手取りにそのまま当てはまるものではないことがすぐにわかる。

では年収500万円の人の負担率は?

令和元年の民間給与実態統計調査によると、給与所得者の約7割が年収500万円未満ということらしい。
年収500万円の会社勤めの人をシミュレーションすれば、大多数の人の負担率が大体それ以下であることがわかるだろう。

40歳未満、年収500万円の独り身で、特別な控除がない条件では、天引きされる税・社会保障費はおよそ以下のとおりとなる。
所得税:14万円
住民税:25万円
年金:45万円
健康保険:24万円
雇用保険:1.5万円
合計:109.5万円
よって、手取りは約390万円となる。

ここで、全ての手取りを消費し、全てに税率10%がかかると仮定すると、消費税額は約36万円。
実際には手取り全てを消費することは少ないだろうし、不課税、非課税、軽減税率対象の支出もあるはずなので、これが最大値となるだろう。
これで税・社会保障費の負担額は合計146万円。
あとは40歳以上であれば介護保険、車を持っていればガソリン税や自動車税、土地家屋があれば固定資産税を加算すればよい。
ここではひとまず省略する。

さて、負担率はどうだろう。約29%だ。
なんと最大で見積もっても「三公七民」となる。先に「六公四民」と見ているので余計低負担に見えてしまう。

ということは、大多数の人が低負担である分を企業だったり年収が多い人が多く負担していることになりそうだ。
ちなみに同様に負担率を計算したとき、年収300万円だと約28%、年収1,000万円だと約34%、年収2,000万円だと約41%となる。

これが高いのか低いのか

実際、これが高いのか低いのかは個人の価値観に委ねるとして、個人的にはそこまでべらぼうな金額とは思っていない。
税に限っていえば15%くらいだし、この暮らしの基盤に対する対価としてはお得すぎるかもしれない。
社会保障費についても、これは相互扶助の面も大きい。
年金も払い損と言われて久しいが、賦課方式ということを鑑みると、身近な人が年金を受け取っていれば、それは私の保険料が支えていることになるし、他の年金受給者も同様に支えている。
社会貢献したいという人は多いが、これも立派な社会貢献だと思うのだがいかがだろうか。

こうしてみると、ネットで「私もこんなふうにめっちゃ負担してる!」と騒いでいるのが不思議に思える。もしかして私の知らない税金をたくさん払っているのか、高額納税者なのだろうか。
ただ給与明細をよく見ていないだけだと思いたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?