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『青のパンドラ』第8回目につき、

ようやく、話は進んだ。
バリーがいざとなって躊躇することなく、ざくざくと薔薇の根を切って、フォンティーンを救い出したので。
フォンティーンはちょっと絵に難はあるが、美しさは保てているね。
貫禄もあるようだ、千年(*)も眠っていたというのにうろたえもしない。
さっそく炎の剣をふり回して、同族を殺害し、バラを焼き払うというのは、
人(元・人を含む)としてはどうかと思うが……まあ、話を盛り上げるにはお決まりの展開だろう。

とはいえ、第8話に1話分としての十分なふくらみはなかった。
アーサーの家に舞台が移った後、
とても中途半端な、エドガーとアランの会話で続きになった。
しかも、続きが載るのは来月号ではなく、さ来月の11月号だそうだ。
ページ数も妙に少なく、最初っから20ページだけってことになっていたのだろうか……と、勘ぐってしまう。

そして、自分としては、いろいろとせりふの細かいところが気になった。

「ぼくを追い出しても出て行かないからね!」
と、アランが枕に顔を埋めながら、キラキラしたお目々を涙にぬらして言っていたが、
これは、
「ぼくを追い出そうとしても~」
と言うべきところだろう。
追い出したら、もう家の外にいることになるのだから、
出て行かないもなにも、出されてしまっている。

それから、
「人間は重いさ…体重があってちゃんと重力の影響を受けるんだから」
という、エドガーのせりふも理屈っぽくってなんか変。
言うならば、
「人間は重いさ……それほど身が軽くはないんだから」
ぐらいに留めておくべきだろう。

どう見たって、これまでバンパネラに体重がないようには見えなかった。
体重がなかったら、水の底に沈んでみせることも、獲物(人間)に飛びついて押し倒すこともできないはずだし(どちらも『秘密の花園』から)。
まあ、いちいち「重力」なんて言葉を出してくる必要もないだろう。

それから、回想シーンで、フォンティーンが
「アドリア母さん」
と叫んでいたけれど、
この、いちいち一人しかいないお母さんやお姉さんに名前をつけて呼ぶ萩尾望都のまんがを見ると
(バレエまんがの『ローマへの道』の中での「アンナ姉さん」とか、 
 再会『ポーの一族』の『春の夢』の中での「マージ姉さん」とか)、
私はいつも、

――"姉さん"の前に名前をつけて呼ぶというコトは彼には少なくとももう1人は姉がいるという計算になるよな…しまった そこまで考えてないだわ…――

という、新井理恵のギャグまんが『×―ペケ―』の、
真紀子姉さんについての作者のコメントを思い出してしまう(第3巻・ちょっと古いか)。
まあ、これはまんがをわかりやすくするための、萩尾望都のくせのようなものだろうが。

さて、そういった細かいこと以外としては、
これでポーの村は壊滅したってことになるのだろうか。
バラなんてまた育てればいいと思うけどね、なんせ彼らには時間は無限にある。

そして、フォンティーンはこれからどうするのだろうか。
話の流れからすれば、大老(キング)ポーとの対決になるのだろうが、
そこで、どうしてアドリアが親子ともどもバンパネラになったのかなども明かされるのだろうか。

しかし、『青のパンドラ』で新しく登場した、かなり昔から生きているはずのアルゴスだの、
途中で登場した、エゴイスト・カップル、ライナーとカミラなどはふたたび話に戻すことができるのだろうか。

なにより、今一番強大な力を持っているのは、ほんとうは、血の神が取りついているアランのはず。
人間に戻ったせいで、ポーの一族にしてはとりわけ気品のないアイザックとマリアの老カップルにばかにされているが、
その設定を有効に使って話をきちんと納めることができるのか?

などと、よけいな心配をさせられてしまう『青のパンドラ』なのだった。

(*)ここ、最初、数百年と書いていたけど、千年でしたね、すみません、訂正しました。
目を覚ましたフォンティーンが、6ページ目で、「あれから何百年たったのか」とか言っていたから引きずられたらしい。私も大丈夫なのかなって気がしてくる。
でも、ならなんでここ、「あれから千年たったのか」じゃなかったのだろうか。やっぱりおかしい。


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