〔ショートショート〕ひと夏の舞台
また夏が来た。私の出番だ。遊園地の一角で、人々を涼しくするのが得意な私。みんな、悲鳴を上げて震え上がり、中には大泣きする人もいる。そう、お化け屋敷が私の舞台だ。
去年は廃病院がテーマだったので、血塗れの看護師役で活躍した。一昨年は古い武家屋敷で、日本人形のような格好で口を「耳元まで」広げて微笑んで見せた。今年は廃墟と化した洋館。ボロボロのドレスを翻し、真っ赤な瞳でお客様を睨みながら高笑い。既に「あそこは、今年の夏も人間離れしたお化けが出る!」と大人気だから、成功だろう。
こういうコンセプトがしっかりしている舞台は楽しい。綿密にタイミングや配役が決まっているので、そこへ勝手に割り込むのは気を遣うが、それが腕の見せ所とも言える。決して生きた人間の邪魔をせず、相乗効果を狙う。それが私のプライドだ。
売れない女優のまま病死したけれど、やっと私にピッタリの場所を見つけた。さあ、今日もお客様を怖がらせるわよ!
(完)
こんばんは。午後7時頃は線状降水帯に怯えていましたが、今は嘘みたいに静かで、それはそれで怖いミズクラゲ……もとい、ネコハルです。こちらに参加させていただきます。
私はお化け屋敷は怖すぎて無理なのですが、人が怖がっているのを見るのは好きです。怖いものは、少し離れて楽しみたいのかも知れません。
たらはさん、お手数かけますがよろしくお願いいたします。
読んでくださった方、ありがとうございました。
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