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〔#毎週ショートショートnote〕Noroi no …

今日、小さな宅配便が届いた。研究所の同僚の美咲からだ。僕が別れ話を持ち出すと、彼女は言った。
「1つだけ条件がある。私が送る荷物、必ず開けて」
もしかして毒ガスとか爆弾とか…と怯む僕を見て、彼女は冷たく笑った。
「大丈夫、毒でも爆弾でもないから。ただ、受け取り拒否なんてしない方が身のためよ。開けずに捨てるのもダメ」
僕に拒否権はない。
茶色い包装紙をビリビリ破くと、中からローマ字が書かれた箱が出てきた。
「呪いの…臭み?」
文字は乱れ、擦れたり滲んだりして読みにくい。僕は念のためマスクをして箱を開ける。中には、膨らんだビニール袋が1つ。箱の内側には「割ってね♪」と彼女の文字。どんな悪臭かと慄きながら、針で穴を開けた。
…何もない。と思った次の瞬間、
「ハックション!」
派手なクシャミが止まらなくなった。袋の中は僕のアレルゲンだったのだ。涙を拭きながら箱をよく見ると、「呪いの臭み」ではなく「呪いの嚔」。彼女の笑い声が聞こえた気がした。


こちらの企画に参加させていただきました。

なかなか難しいお題でしたが、楽しかったです。でも、このストーリーはちょっと邪道かな💦
たらはかにさん、読んで下さった方、有難うございます!

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