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パキスタンがタリバンによるアフガニスタン支配を恐れる理由

タリバンが権力を握った場合、パキスタンによる彼らへの支援は裏目に出る可能性がある。

ルパート・ストーン 2021年3月4日

 昨年、ドーハで締結されたタリバンとの合意に基づき、米国は5月にアフガニスタンから残存兵力を撤退させることになっている。しかし、暴力はエスカレートの一途を辿り、ドーハ合意で義務づけられたアフガン国内での協議はほとんど進展していない。米軍が撤退すれば、タリバンは和平プロセスを放棄し、武力で政権を掌握するかもしれない。

 パキスタンは1990年代に過激派組織を支援して以来、アフガニスタンに戦略的な縦深を持たせ、インドの影響力に対抗してきた。タリバンがアフガニスタンを掌握したのならば、これで『任務完了』ということになる。アフガニスタン・イスラム共和国政府はインド政府と緊密な関係を維持しており、共和国政府の崩壊はインドの国益を損なう可能性が高い。

 しかし、パキスタン政府は『責任ある』米国の撤退を望んでいるらしく、カブールに包括的な政権が樹立されるのを望んでいると、繰り返し主張している。もちろん、これはパキスタンがタリバンを支持してきたという非難をかわすために言っているだけなのかもしれないが、パキスタンが過激派組織による政権奪取と、神権政治への復古に反対するのには、十分な理由が存在している。

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