野口里佳「不思議な力」を観てきました
東京写真美術館で2023年1月22日まで開催されている野口理佳さんの展示「不思議な力」を観てきました。
印象に残ったのは、父のアルバムを見た時、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。撮る方と撮られる方から感じられる、お互いを想いあうような雰囲気に。この写真を見ていると人を撮るって何だろうと思った。ポートレートの一つの高みにあるようなきごする。しかし、写真自体は、彼女のお父さんが撮ったもので、彼女自身がシャッターを切った訳ではない。お父さんの写真は上手いと思うが、なぜかこれは野口さんの作品になっている。家族を取ったお父さんの優しい視点とそれを振り返る野口の視点。それが重なり合うことで不思議な力を醸し出している。
不思議な力は身近にある物理的な不思議な力をテーマにしていたが、野口さん、そのものの写真こそが不思議な力を蓄えている。
それは、写真であっても映像昨日においても同様である。
孔雀の飛んでいる姿、真っ直ぐになっている姿は、まるで未確認飛行物体。羽ばたく姿ではなく、一瞬現れる想像できない、常識や期待を裏切るような形や瞬間にシャッターを切れている。これこそ不思議な力。
あぶにしろ、映像作品にあったアオムシにしろ、実は見たことがあるし、面白いと思っている。でも、そこから先に視点がいっていなかった。よく言われることであるが、日常の中に不思議な瞬間はいくらでもあると、それを私たちは気づかない。気づいてもそうなんだと何となく流している。そこにフォーカスできるかどうか。野口の感性はそれを見逃さない。そして、それを写真として切りとっている。決して派手さはないが、人の目を惹きつける力が蓄えられている。
写真を通して彼女の人柄も浮かんでくるようで、写真を通して彼女と対話をしているような不思議な感覚にとらわれる。ねぇ、私たちのいる世界は色々と不思議なものがたくさんあって、楽しいよねと
野口さんの写真には、心の身体が反映されている。子どもの様な視点に知性的な視点が重なり、不思議な力、魅力的な展示でした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?